海外サイトが運営するオンラインカジノをめぐり全国ではじめての検挙事例だ。
警視庁は9月27日、客の賭け金の入金決済を代行するシステムを運営した前田由顕容疑者と、システムを開発した時田慎也容疑者を、常習賭博の“幇助”容疑で逮捕した。
この記事の画像(5枚)決済代行業者が客の賭博を手助けした疑いで検挙されるのは全国で初めてとなる。
決済代行システム「スモウペイ」 力士のイラストも・・・
前田容疑者が運営をし、時田容疑者がシステム開発した決済代行システムは「スモウペイ」。アイコンには、力士のイラストが描かれていて、相撲=日本をイメージさせる。その仕組みはこうだ。
海外業者が運営する、スポーツ賭博などの3つのサイトに、日本の利用客が現金をかける場合、外貨や海外送金を行うのは煩雑であることが想像に難くない。
しかし「スモウペイ」を利用すれば、カジノに使えるポイントを「1ポイント100円」で購入できる。日本円で、いわばカジノのチップが手軽に買えることや、日本国内の銀行への振り込み手数料だけで済む。この利便性から、登録者は4万2000人に上る。
スモウペイ側は出入金の手数料などで、2年間で21億円を荒稼ぎした。
「スモウペイ」は“客の賭博を手助け”
警察当局は「スモウペイ」の存在をおととし12月から把握していた。警視庁・愛知・福岡県警の合同捜査本部を組み、「スモウペイ」を利用した男性客18人を、今年7月までに単純賭博の容疑で書類送検した。「スモウペイ」は、この客らが賭博を行うことを手助けした疑いで立件された(常習賭博幇助)。
しかし、海外サイトで賭博を行った客を摘発するのは簡単ではない。
一般的に賭博事件は、ギャンブルの主催者である「胴元」と、賭けを行う「客」がセットで摘発されることが通例だ。しかし、賭博が合法化されている国や地域に、オンラインカジノのサーバーがある場合、客は日本からアクセスして賭博行為を行えば「違法」だが、「胴元」の情報を日本警察が入手するのは困難のため、取り締まりが難しいとされる。
オンラインカジノで消えた4630万円 「誤送金」事件も賭博罪適用されず
オンラインカジノで、コロナ禍の日本を震撼させた事件がある。山口県阿武町で、新型コロナ給付金463世帯分、4630万円が「誤送金」され、ほぼ全額がオンラインカジノに使われた事件は記憶に新しい。
この事件で逮捕された男は、「賭博罪」ではなく、誤送金の金と知りながら出金し利益を得た、「電子計算機使用詐欺罪」で起訴された。この問題発覚後、岸田首相は国会でも「オンラインカジノは厳正な取り締まりを行わなければならない」と明言していた。
今回の「スモウペイ」事件をめぐり、ある捜査幹部は「胴元を逮捕できないと事件にならない、ということではない。客だけでも検挙するのだ」と意気込みを語り、この全国初の形での立件に踏み切ったという。
実際に書類送検された18人の利用客のうち、「海外のサイトなら捕まらないと思った」と供述している男もおり、違法性の認識が薄かったことがうかがえる。
一方で、書類送検された客の中には、1000万円の損失を被った男もいたということで、依存性が高いギャンブルであることは事実だ。決済代行業者を幇助罪で逮捕することで、「客の賭博行為にメス」を入れる捜査当局の意思がうかがえる。
(社会部警視庁クラブ 中川真理子・林理恵)