母親が子どもに「静かにね」と教えるために作った絵本が、Twitterで多くの人に称賛されている。

イラストレーターのまるさん(@shishishishimr)の5歳の息子さんは電車が大好き。駅のホームで見かけると「キター!」などと声を上げてしまったり、電車内で走行音をマネしてしまうことがあるのだそう。

そこで「静かにね」を身につけさせようと、急いで「持ち歩ける絵本」を制作したという。

黒猫が主役のオリジナル絵本「でんしゃは しーっ」

手のひらサイズのキーホルダーとして作った、絵本のタイトルは「でんしゃは しーっ」。

「でんしゃは しーっ」
「でんしゃは しーっ」
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黒猫が主人公で、表紙ではウインクをしながら1本立てた指を口元に添え、「しーっ」っと静かにしてほしいかのようなポーズをとっている。

「でんしゃは しーっ」1、2ページ目
「でんしゃは しーっ」1、2ページ目

留め具を外して開いてみると、可愛らしいイラストで物語がスタート。

黄色の電車が到着したのを見た黒猫は、喜びなのか興奮なのか目を見開きながら「キャー!!」と大きな声を上げている。

「でんしゃは しーっ」3、4ページ目
「でんしゃは しーっ」3、4ページ目

しかし次のページで、灰色の大人の猫に大きな声を出したことを注意されている。「しーっ、しーっ、でんしゃは しーっ」と口元に指を添え、わかりやすく教えている。黒猫も口元を両手で押さえている。

隣のページでは「おおきなこえで みんなびっくりしちゃうよ」と、注意された理由をパンダたちが耳を押さえながら説明している。理由もしっかりと教えていて、なるほどと納得いくことだろう。

「でんしゃは しーっ」5、6ページ目
「でんしゃは しーっ」5、6ページ目

さらに次のページでも、青い電車が到着すると声を上げてしまう黒猫だったが、周囲に「しーっ、しーっ、でんしゃは しーっ」と注意される。

「でんしゃは しーっ」7、8ページ目
「でんしゃは しーっ」7、8ページ目

そして3回目。赤い電車が到着すると、黒猫は小さな声で「でんしゃは しー」と確認しながら見つめている。

「でんしゃは しーっ」9、10ページ目
「でんしゃは しーっ」9、10ページ目

今度は声を上げることなく電車を迎えたのだった。

「でんしゃは しーっ」11ページ目
「でんしゃは しーっ」11ページ目

きちんと声を上げずに「でんしゃは しーっ」を守れた黒猫に、灰色猫は「よくできたね」と頭をなでなでしながら褒めたところで、物語は終わった。

すぐに「しーっ」とマネして楽しむ

まるさんが急ぎ作ったというこの絵本を、完成した翌朝、息子さんに家で見せたという。すると息子さんはうれしそうにニコニコだったとのこと。内容もハマってくれたようで、すぐに「しーっ」とマネをし、何回も繰り返し読んでいたという。

絵本で教えるという、まるさんの素敵なアイデアと作品の出来栄えには、Twitterでも「素敵なアイデアですね!!」「愛が詰まっていて涙出ちゃう」「凄い作品です♪わたしも欲しい」という多くの称賛の声が寄せられている。中には商品化を望む声もあり、投稿は1万8000のいいねがつく大きな反響となっている(6月30日時点)。

小さくて持ち運びができるという点も、いろいろな所で楽しめる素敵なアイデアだ。どのようにして「持ち歩ける絵本」が思い浮かんだのだろうか? 急ぎ作ったとのことだがどれくらいの期間で作り上げたのか?

まるさんに話を聞いてみた。


ーー息子さんについて教えて。

息子は自閉スペクトラム症と軽度知的障害があります。なにより電車が好きで、休みのたびに電車に乗りにお出かけしています。ちなみに絵本は基本的に電車関係の絵本しか読んでくれません。

息子さんお気に入りのページ
息子さんお気に入りのページ

ーー息子さんの絵本のお気に入りポイントは?

絵本の中の猫ちゃんが「キャー!!」と叫ぶシーンが1番お気に入りのようで、私の読み方もあると思いますが大笑いしてくれています。


ーー絵本を気に入った様子を見てどう思った?

思ったより反応がよくて作ってよかったと思いました。このまま「静かにする」に繋がるといいのですが。

現在も繰り返し読んで楽しんでいるという
現在も繰り返し読んで楽しんでいるという

ーー現在、絵本はどうしているの?

今も楽しんでくれていて「デンシャハシー ヨムー」と言って読んでくれています。先日お出かけの際に持って行ったのですが、カバンの中に入れておいて駅で声が大きくなったら表紙を見せて「しーだよね?」と伝えています。見せたからといってすぐに声が収まるわけではないですが…。

2日で制作、最近の困りごとを絵本に

ーー「持ち運ぶ絵本」のアイデアはどこから?

昔このタイプのなぞなぞの本とかいろいろありましたよね。この形で息子用に持ち運べる何か作りたいなとはずっと思っていて、材料は前から用意していたんです。

ホントはもっと視覚支援になるページをたくさん入れた持ち運べる本を作る予定なんですけど、なかなか忙しくて時間がなくて、まだ制作に取り掛かれてなくて…。とりあえず最近の困りごとが駅と車内での大声だったので、息子の反応も見たかったので先にこちらを作ってみました。

2日間で完成させたという
2日間で完成させたという

ーーどれくらいの期間で作ったの?

2日間で作りました。100均でキーホルダーを買ってきて、ページ数を確認して、ストーリーを構成してからイラストを描いて入れただけです。


ーーこだわった部分は?

息子に興味を持ってもらう事が重要なので、言いやすい言葉と電車、それと息子が最近興味のある動物を入れて興味を引くようにしています。

ストーリーには電車を組み込む

ーー「でんしゃはしーっ」の他にも作った絵本はあるの?

息子用に絵本を作るのが好きでして、今までにも3冊ほど同じキャラクターの猫ちゃんと電車シリーズで絵本を作っており、何冊か使っています。

息子に少しでも興味を持ってもらいたく、トイトレ(トイレトレーニング)や挨拶などをテーマにして、基本的にストーリーに電車を組み込んだものです。電車が大好きなので毎回嬉しそうに読んでくれています。

黒猫が主人公の別作品
黒猫が主人公の別作品

ーー投稿が話題となった事に対しては、どう感じている?

思ったよりいろいろな方に見ていただけたようでびっくりしています。


ーー次回作の予定は?

あります。もっと外で使える視覚支援を入れ込んだ小さい本だったり、次に描きたいと思っているのはお風呂での体の洗い方のストーリーだったり…。どうやって電車と組み合わせようか悩んで止まっていますが 笑。

電車作品も作っている
電車作品も作っている

ちなみに、商品化は考えていないとのことだ。一方で「一緒に(商品化を)やってくれる企業さんなどがいれば考えちゃいますが…!」とも教えてくれた。

次回作の案も既にあるとのことで、息子さんも待ち遠しいのではないだろうか。次の作品が楽しみだ。

まるさんは日々の子育ての様子などを、自身のTwitterやInstagram(@maru.manga)にてイラストや漫画で投稿している。気になる人はのぞいてみてほしい。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。