大阪・鶴橋の人気焼肉店「海南亭」

大阪の食の人気スポット、鶴橋。
週末には本格的なキムチを買い求める人など、賑わいが戻ってきていた。

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その鶴橋で営業する焼き肉店・「海南亭」。
緊急事態宣言が解除された5月24日には、この店にも昼から満席になるほど、多くの人が訪れた。

海南亭・金海博店長:
きょうはありがたいことにオープン前に満席以上のお客さまに並んでいただいた。緊急事態宣言が解除された後からがらりと、ご来店の数は明らかに増えています。

この店の経営を担う金海博さん。
この一か月半、かつてない苦しみを味わった。

外出自粛で…収入は「8割減」に

緊急事態宣言中の5月14日、外出自粛要請で客足が遠のき、店の収入は8割も減少。
2月にはいっぱいだった予約帳も、空欄だらけになっていた。

海南亭・金海博店長:
苦しさで言うと、大赤字。このペースでお客様が減り続けたら半年ももたないかもしれないというぐらいの甚大な影響が出ています。寂しいですね。今までだと、ずっと満席でご予約お断りすることもあるので、それに比べると違う店だなと思っています。

しかし、この苦境のなかで、金海さんは、ある決心をしていました。

お座敷スペースに並んだ3Dプリンター

お店の2階にあるお座敷スペース。
テーブルを陣取っているのは、見慣れない機械。

並んでいるのは「3Dプリンター」だ。

この3Dプリンターで大量に作ったフレームを使ってフェイスシールドを作ることにしたのだ。

海南亭・金海博店長:
きっかけは松井市長のニュース。フェイスシールドと雨合羽。雨合羽は寄付でだいぶ集まったみたいなんですけど、フェイスシールドはなかなかないみたいなので、あのニュース見てて、そうかそんなに困ってんのか、分かった!まっとってや!松井市長!やったことないけどやってみます!みたいな。

客が減って余ってしまった時間と空間を使ってフェイスシールドを作り、無償で医療機関に提供する。
金海さんは、やると決めたらとことんやるタイプだ。

海南亭・金海博店長:
今1日で200セット作っています。大きい病院になるとすぐ300個、400個、500個という風になるので。(3Dプリンターは)最初1台だけだったんですけどこれじゃ間に合わないと思って機械も増やしたりして先生のご希望にすぐ答えるのが大事だと思った。

製作用の「設備」も…手作りで

効率よく、品質の良いものを作る。
そのためには道具も自分で作ってしまった。

海南亭・金海博店長:
穴の位置が使い心地にものすごく大きな影響を与えるので、正確に穴をあけれるように、手作りの穴あけ台を使って穴を開けてます。すべて身近なもので作っています。最初はマジックで印付けてパンチとかしていたんですけど、どうしても誤差が出てしまうので、これじゃいけないなと思ったので。すべて身近なもの、ホームセンターと100円ショップで簡単に手に入るものだけで。

さらに…

従業員:
もしもし、医療現場で使われるフェイスシールドの寄付をさせていただきたくてお電話させていただいたんですけど。

営業経験のある従業員が直接、医療機関に電話をかけて提供先を探していた。
注文を受けたら、わずか30分以内に配達が完了。

海南亭・金海博店長:
失礼します海南亭なんですけど…。

医療従事者:
この時期本当に助かります ありがとうございます。

気がつけば、1か月半で「4000枚以上」を提供していた。

支援は、店を救うことにもつながる

焼き肉店がフェイスシールドを作ることを、従業員は、どう思っているのだろうか。

従業員:
(聞いたときは)正直もう、えっ?ていう感じ。いきなり3Dプリンター買うとか言い出したんですよ。最初は戸惑っていた自分もあるんですけど今はやりがいというか、手が空いて暇でぼーっとしとるよりは、ちょっとでも役に立てていると思えるので。

従業員:
医療関係の人らの感謝の気持ちを伝え聞くので、それがあったらこっちも励みになる。

従業員:
喜んでもらえるとね。調理師ってやっぱそうなんじゃないですか、『おいしかったご馳走様』って言われたら、感謝されるってめっちゃ頑張れるやないですか。そういう点でも似てるのかなって。

店の経営が悪化する中、無償でフェイスシールドを提供し続ける。
ここまでするのは、この支援が、最終的には自分たちを救うことに繋がるからだという。

海南亭・金海博店長:
(無償提供を続けることで)自分たちの商売がたちいかなくなるかもしれないという不安はあるんですけど、それよりもコロナが収束しないと復活することもできないので、みんな一丸となってコロナに立ち向かっていくしかないと思ってやっています。できるからやるではなく、やるかやないか。必ずできるやろと思って、自信はなかったけど、やってみたらできるもん案外できるもんだなと。

「足りてます」と言ってもらえるまで

金海さんたちが作ったフェイスシールドは、実際に、多くの人が訪れる総合病院でも使われている。

従来は、感染症に対応する医師や看護師だけフェイスシールドを着用していたが、新型コロナウイルスの感染リスクがどこにあるかわからない今、病院内全ての部署が、継続的に必要としているのだ。

多根総合病院 感染制御部看護師・宮﨑悠さん:
フェイスシールドが枯渇してきた状況で、値段も高騰してきて、なかなか手が出せないようなという形だった時に、金海さんから提供していただけるというお話をいただいてすぐにお願いしますとご協力をお願いした。無償でというのは本当にありがたいなと思っています。

緊急事態宣言が解除され、日常を取り戻しつつある今。
そんな中でも、金海さんはまだまだ、作り続ける。

海南亭・金海博店長:
足りないとおっしゃっているとこに、すぐに持っていけるように。しばらくの間は1000個備蓄で作っておこうと思います。どこに電話しても足りてますとおっしゃるぐらいになるまではもう少し頑張ってみたい。

(関西テレビ)