防災教育を進める2つの団体が、全国的にも珍しい協定を結んだ。

支援をいち早く届けるために 新たな取り組み

大阪の任意団体「ママコミュ!ドットコム」と岐阜のNPO法人「こどもトリニティネット」が取り交わした、災害時などを想定した協定。離れた2つの府県の団体が、このような災害時連携協定を結ぶ背景には、子育て家庭や障害者がいる家庭の災害への対応について考えてきた、関係者の問題意識がある。

大阪市市民局長を訪問 (左)桐部遥奈理事長(右)出水眞由美代表
大阪市市民局長を訪問 (左)桐部遥奈理事長(右)出水眞由美代表
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8月30日、大阪市の西原昇市民局長を2団体の代表が表敬訪問し、協定内容や今後の活動方針を報告した。

「ママコミュ!ドットコム」の出水眞由美代表は「災害時など有事の時に、スムーズに支援を届けるのは難しい。だからこそ平時から力を入れる必要がある」と意気込む。

「災害時にスムーズに支援を届けるのは難しい。だからこそ平時から力を入れる必要がある」
「災害時にスムーズに支援を届けるのは難しい。だからこそ平時から力を入れる必要がある」

協定では、災害時だけではなく平時から子育て家庭、特に妊産婦や障害のある子供たちなどへの支援を強く行うとしている。

目指したいのは「第2の避難先」をつくること。今後30年以内に70%~80%の確率で発生するとされる南海トラフ地震など、大災害が発生した際、近畿全体に大きな被害が出ると予想されている。その場合、近畿圏の外からの支援をいかにスムーズに受けられるかが、復旧復興を左右する。南海トラフ地震に限らず、「少し離れた地域との連携」が大きな災害への対応に有効だ。

そこで今回、大阪と岐阜の団体が連携をすることになった。両府県が同時に被災するケースは多くないと考えられている。両団体が目指すのは、大阪から岐阜への避難、岐阜から大阪への避難をスムーズに支援できるような体制構築だ。

災害が起きていない平時にも、子育て家庭とともに実際に大阪や岐阜を訪ね、避難のシミュレーションを実施する。避難先や物資の調達先などを調べたり、学校や警察・消防など周辺にどんな施設があるのかを確認したりする中で交流を深め、災害時に備えるのが狙いだ。

「ママコミュ!ドットコム」出水眞由美代表:
支援が必要な人たちの受け皿になることができるよう進めていきたい。避難先として空き家を活用するなど、地域活性なども視野に入れて取り組みたい

「こどもトリニティネット」桐部遥奈理事長:
これまでは個別に団体が力を入れていたが、これからは団体同士の連携も重要になる。避難生活の質を上げることができるような体制にしたい

阪神淡路大震災、東日本大震災など過去の災害においては、避難所や被災後の生活で子育て家庭への支援が十分でないという指摘があった。災害時の避難先の選定や、避難所環境の整備は主に行政が担ってきたが、災害時には迅速に進まない場合が多い。

防災教育を進める中で、子供や子育て家庭が災害時に抱える問題を強く意識していた大阪・岐阜の両団体が、災害時にサポートしあう協定を結んだことは意義深い。

(関西テレビ記者 宇都宮雄太郎)

関西テレビ
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