穴が空いているノート?目を疑う「だまし絵」
見る位置や角度によって平面の絵が立体的に浮かび上がって見えたり、動いているように見えたりする、人間の目の錯覚を利用した芸術の「だまし絵」。
この記事の画像(11枚)Twitterなどでもたびたび投稿されているのを見るが、その中で今、若手アーティストの作品「トリックノート」が話題になっている。制作者は、コマ撮りアニメ・ジオラマ・“トリックアート”と3つの分野で活動する21歳のMozu(@rokubunnnoichi)さんだ。
Twitterには「ノートに穴が空いているように見える作品」や「ノートに描かれた電車が立体的に見える作品」など、目を疑いたくなる作品を多数手掛けている。
これらの作品は人気を呼び、2018年にはクラウドファンディングで1111人から約300万円の支援を受けてトリックノート「NOUTO」を制作。そして現在、新バージョンとなる「錯視トリックノート」ベスト版の発売に向け、クラウドファンディングを実施しているのだが、反響は大変良く、既に目標額を超える支援が集まっている状況だ。
どの作品もこれが本当にノートに描かれたものかと疑いたくなるだまし絵ばかり。完全な独学だというが、そもそもなぜこのような作品を作ろうと思ったのだろうか? Mozuさんご本人に直接伺ってみた。
一番のお気に入りは「虹」
ーーだまし絵を制作し始めたのはいつ頃から?
中学2年生の頃、授業中に退屈になって描いた「リアルな三角定規」の絵です。本物と見分けがつかないという事でクラスや先生の間でも話題になりました。
その後、「中学3年生(15歳)の時描いた三角定規と、現在(19歳)の僕が描いた三角定規」というツイートが23万いいねを超えた時ブレイクしました。
中学3年生(15歳)の時描いた三角定規と、現在(19歳)の僕が描いた三角定規。
— Mozu (@rokubunnnoichi) December 28, 2017
ちなみに1枚目、消しかすも描きました。 pic.twitter.com/cY1lTyhJeo
中学3年生(15歳)の時描いた三角定規と、現在(19歳)の僕が描いた三角定規。
ちなみに1枚目、消しかすも描きました。
ーーどういう時にアイデアが浮かぶの?
夜の街を散歩するのが趣味なのですが、その時間に思いつく事が多いですね。それと、学生時代の自分のノートを見て、直接ヒントをもらうことも多いです。
ーーお気に入りの作品は?
一番のお気に入りは「虹」という作品です。このアイデアを思いついた瞬間、描くのが楽しみでワクワクしてしょうがなかったです。「ノートから虹が出る」という夢のある景色や、カラフルで分かりやすくてキャッチーなところがお気に入りです。
ーーSNSなどの大きな反響に関してはどう思っているの?
昔から「自分の作ったもので誰かが笑ったり驚いているのを見るのが好き」という感覚があります。小学生の頃、クラスで漫画を出版してみんなが笑ってくれるのを見るのが大好きでした。
現在は、それが世界規模に広がって、よりたくさんの方の反応を見られるようになったのがとても嬉しいです。作品を作ることも楽しいですが、投稿するのも楽しいです。
「自分の中でベストではない」前作超えたものを届けるためのクラファン
昔から「自分の作ったもので誰かが笑ったり驚いているのを見るのが好き」という理由で、だまし絵などを手掛けていることは分かった。ではなぜ今回、再度クラウドファンディングに挑戦しようと思ったのだろうか?
ーープロジェクト開始のきっかけは?
前回のトリックノートの作品たちは、クラウドファンディングしながら描き進めたものがほとんどで、正直なところ締め切りに追われて難産の末、生み出したものも多くありました。
もちろんその時点ではめちゃいいものが出来た!と思って出したのですが、言わば熱にうなされているような状態だったので、冷静になって見ると、「ここをもう少しこうすれば良かった」とか、「今ならこうするのに」というものがいくつも出てきたのです。
ーー納得のいかなかった部分とは?
かなり時間に制限のある中で描いた30作品なので、やはり「とりあえずページを埋めた」感の強い作品もありました。消しカスが2ページあったり、個人的に上手くいかなかったなぁというものも載せてしまったり。
ーー今回も目標金額は既に達成し、多くの人が支援してくれていることに関してはどう思う?
正直なところ、「完全新作版」ではないので全然人が集まらないのでは…と思っていたのですが、こんなにもたくさんの方に支援していただいて、胸が一杯です。今は、精一杯応える為に新作を描いたり、YouTubeにメイキング動画を投稿したりしています。
3万部のヒットとなった前作の在庫がなくなってきた昨年末頃から、ベスト版の制作を考え始めたという。
トリックノートは、「学習ノート」という制限がかけられた中での作業となる。「何でも描けるわけではないからキツかった」と苦労を語りながらも、「今回は、それらを時間のある中で描いたお気に入りの作品と入れ替えます。」と、より良い作品を作り届けたい!という思いを教えてくれた。
「トリック落書き」と呼んでます
トリックノートベスト版の内容は、最初のトリックノートから半分、それ以降の作品からMozuさんが選ぶベスト作品半分の、全30作品にて構成される予定だ。
このノートは、写真を撮って遊ぶ作品集でありコミュニケーションツールということなので、ノートとしての機能は残念ながら果たすことはできない。しかし、それでも普通の学習ノートではできない楽しみがあるという。
<ノートの利用シーン こんな方にオススメ>
・病院や美容室、サロンの待合室、カーディーラー様のキッズコーナー、飲食店様の本棚などに。お客様をお待たせする場所に置きますと、しばし時間を忘れていただけます。
・ご家庭、学校、職場などでのコミュニケーションツールとして。このノートで成績は上がりませんが、周りに人が集まり人気者になれます。
・研修会などのアイスブレークに。チームに一冊渡して、どのチームが一番上手に撮れるか?など競っていただくと、盛り上がりすぐに打ち解けます。
・誕生日などのプレゼントに。「なーんだ大学ノートか」と思わせておいて、開いたらサプラーイズ!しばらくその場の話題をかっさらいます。
確かに普通のノートではこの役割は果たせない!人気者への一歩を踏み出す“魔法のノート”になるかもしれない。なお、クラウドファンディングは4月28日まで。1200円からの支援で、リターンとしてトリックノートを入手できる。また一般販売も予定しているとのことだ。
1つの作品で、発案に2日、描くのに3~4時間かかるというだまし絵。
Mozuさんのだまし絵に込められた思いとは…
「『アート』という、少し敷居が高いものには絶対にしたくないので、あくまでも誰もが使った事がある学習ノートに落書きとして不思議な絵を描く、ということにはこだわっています。なので、僕は『トリック落書き』と呼んでいます。」
そう語った上で、作品に込められたメッセージには「鉛筆とノートだけでここまで遊べるよ!」と、今後も立体的だったり、何か仕掛けがあったりする新しいトリックアートに挑戦し、限界を超えていこうとしていると教えてくれた。
「トリックノートベスト版」と共に、今後の「トリック落書き」も楽しみだ。
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