2019年台風19号から半年…被害を受けた地区は今
船越湾に面した岩手・山田町 田の浜地区。
この記事の画像(15枚)9年前、東日本大震災の津波でも被災したこの地区は、2019年10月の台風19号で再び水害に見舞われた。
この画像は、2019年10月、地元の消防団員が撮影した映像の一部。
観測史上最大となる1時間あたり77.5mmの豪雨が降って、地区一帯は一時 ダムのような状態になり、住宅など118棟が浸水被害に遭った。
その水をせき止める形となったのは、津波対策として2018年に造られた堤防だった。
震災に続き、再び被災した夫婦 二度目の仮設住宅
高さ約3m、長さ約400mの堤防。
この堤防の近くに住む田畑實さん(89)と由貴さん (83)夫婦。
東日本大震災後に建て直した自宅は、半年前 水害に遭った。
田畑實さん:
こんなの初めてだよ。海から(津波が)来ると思ったら、今度は山から来てしまった。こんなところに変なもの(堤防)を造ったから、あんな水害が起きた
台風19号で、田畑さんの住宅は1階の天井近くまで浸水。
2人は2階に避難して一命をとりとめた。
田畑由貴さん:
死ぬと思った。ずんずん水かさ上がってくるから
その後、震災に続いて2度目となる仮設住宅での生活を余儀なくされた。
田畑由貴さん:
早く直ってもらって、(自宅に)入りたいの
全壊と判定された自宅の修繕が終わり、戻ることができたのは4月1日だった。
生活再建支援制度や町の補助などにより、なんとか修繕費用を工面したが、家財道具の買い替えもあり、今後の生活に不安を抱えている。
田畑由貴さん:
いくらか落ち着いたね、我が家と思って。冷蔵庫とレンジと炊飯器と洗濯機と買って、40数万円かかった。お金だね、一番不安なのは。年金生活で誰も稼いでくれる人がいないんだもの
田畑さん夫婦は、二度と同じ被害に遭わないための対策を町に切望している。
田畑由貴さん:
とにかく、雨が降っても何が降っても、水がたまらないようにしてもらいたい。災害はいつなるかわからない
災害“予測できなかった”…新たに「砂防堰堤」建設へ
田の浜地区の水害を巡っては、大学教授らによる検証委員会が調査を行い、3月 町に報告した。
委員会では、堤防や排水管の設計はさまざまな基準を満たしていた一方、今回の豪雨は過去の災害履歴から予測できなかったと指摘。
集落近くの山で大量の土石流が発生し、排水管が詰まったことで、浸水被害が起きたと結論付けた。
山田町 佐藤信逸町長:
設計のミスとか、工事の齟齬とか、そういうことではないということですので、(堤防には)妥当性があったと
今回の災害を受けて、集落近くの山には2ヵ所に土砂の流出を防ぐための施設「砂防堰堤」が建設されることになった。
また町では、今後堤防に避難路として使える開口部を設けるか、または現在の排水管を拡張するかして、再び水がたまらないよう対策を講じる考えだ。
いずれも津波に備えて可動式のゲートを設置する。
山田町 佐藤信逸町長:
二重三重の対策をとり、一日も早い安全安心な住環境の構築に努めてまいりたい
震災・台風を乗り越えるも…三陸鉄道・観光に新たな苦境
一方、台風19号は、地域の観光にも大きな影響を与えた。
震災の被害を乗り越え、2019年3月に全線で運転を再開した三陸鉄道は台風で再び被災。
5カ月後の3月20日に再び復旧を果たした。
しかし今、3度目の災いに見舞われている。
新型コロナウイルスだ。
三陸鉄道 中村一郎社長:
コロナウイルスの関係で、だいぶ予約もキャンセルになっています
団体客のキャンセルは、4月14日時点で298件、損害額は約1000万円に上っている。
三陸鉄道 中村一郎社長:
ゴールデンウイークを迎えるこの時期に、観光客の皆さんに『おいでください』と呼びかけできない。もどかしい面も非常に感じています
沿線の宿泊施設も頭を抱えている。
3月に再開した鵜住居駅近くの旅館、釜石市の「宝来館」。
キャンセルが相次ぎ、損害額は1,700万円を超えている。
宝来館 女将・岩崎昭子さん:
三鉄の再開にあたっては、365日鵜住居駅で大漁旗を振って、『全国のお客様をお迎えするぞ』って、『今が我慢のし時だ』って、冬を越えたんですよね。これは先が見えないなって。先が見えないことが、私たちにとって一番悩むというか…
海が近い宝来館では、山への避難道を整備しているが、台風19号による豪雨で斜面が削られ、被害を受けた。
インターネット上のクラウドファンディングで修繕費用を募ったところ、700万円が寄せられていて、その思いに応えたいと女将の岩崎さんは語る。
宝来館 女将・岩崎昭子さん:
7月に海開きがあるんですね。そのときにはコロナも終息して、海に皆さまに来てもらいたいと思うものですから。それまでに避難道の修繕が終わっていたいというのが希望なんです
台風の被害に、新型コロナ。
新たな問題がのしかかり、被災地も先の見通せない状態が続いている。
(岩手めんこいテレビ)