生まれてきた子どもの父親が誰なのかを、生まれた時期によって決める、民法の「嫡出推定」が見直されることになった。法制審議会は、14日、嫡出推定見直しなどを柱とする、民法改正の要綱をまとめ、古川法務大臣に答申した。今後、議論の場が国会に移される。

嫡出推定の規定は、明治時代に民法が制定された際にできたものだ。この規定では、母親が離婚後300日以内に生まれた場合、子どもの父親は前の夫。母親が結婚してから200日経過した後に生まれた場合、その子どもの父親は現在の夫と推定されている。

今回の見直しでは、この原則を維持しつつ、離婚後300日以内でも、母親が再婚した後に生まれた子どもであれば、その再婚相手を父親とするとの例外規定が盛り込まれた。

また嫡出推定では、女性が離婚直後に再婚した場合、子どもの父親が、前の夫と現在の夫で重なる時期が生じていた。このため、女性にだけは、100日間、再婚禁止期間が設けられていた。しかし、今回の見直しに伴い、この再婚禁止期間は廃止されることになった。

法制審が、古川法務大臣に対して、民法改正について答申した(14日午後5時半ごろ 法務省)
法制審が、古川法務大臣に対して、民法改正について答申した(14日午後5時半ごろ 法務省)
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離婚後に、別の男性との間に生まれた子どもなのに、「前の夫」を父親されるのを嫌がって、母親が出生届を出さず、子どもが無戸籍になるケースが後を絶たないという。前夫からのDVも背景にあるとされている。嫡出推定の見直しが、無戸籍児問題の解消につながることも期待される。

一方、民法改正の要綱には「懲戒権」の削除も盛り込まれた。民法では、「親権を行う者は、監護及び教育に必要な範囲内で、その子を懲戒することができる」と規定されている。この親の「懲戒権」は、しつけと称する、子どもへの虐待・体罰を正当化していると指摘されてきた。

「しつけ」名目での虐待は後を絶たず、子どもが命を落とすケースも起きている。児童虐待に対する社会的関心の高まりに合わせて、2年前には、児童虐待防止法が改正され、子どもへの体罰禁止が明記された。「懲戒権」削除は、当然の流れで、早急な法改正が望まれる。

社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
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平松秀敏
平松秀敏

『拙速は巧遅に勝る』。テレビ報道は、こう在るべき。
『聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥』。これが記者としての信条。
1970年熊本県出身。県立済々黌高校、明治大学卒。
95年フジテレビ入社。報道カメラマン、司法・警視庁キャップ、社会部デスクを経て、現在、解説委員。
サザンオールスターズと福岡ソフトバンクホークスをこよなく愛する。娘2人の父