わずか1か月で感染者が10万人に

3月1日、ニューヨークで初の感染者確認が発表されたこの日、会見した知事や市長は市中感染のリスクは低いと強調していた。しかし、1週間後には100人を超え、その3日後には200人を超えた。1000人を超えたのは3月17日、その後は加速度的に感染者が拡大。(図参照)

FNN集計(4月3日現在)

3月21日には1万人を超え、わずか2日後には2万人にまで増えた。
3月31日に7万5795人
4月1日には8万3712人
4月2日には9万2381人
そして4月3日に10万2863人と、わずか1か月でついに10万人の大台に達した。(4月4日現在 11万3704人)

取られた対策は十分だったのか

街から人影が消えたニューヨーク

では、ニューヨーク州はこの1カ月感染拡大防止のために何をしていたのか。もちろん手をこまねいていたわけではない。

3月7日、知事が「非常事態」を宣言。

8日、感染者が100人を超えると、在宅勤務やソーシャルディスタンス(社会的距離)の導入を要請した。しかし、感染拡大は収まらず、12日には500人以上のイベントを禁止し、ブロードウェーなどの公演が中止となった。ニューヨークを象徴する「灯」のひとつが消えたのだ。

さらに1000人が目前となった16日から、公立学校の休校、レストランやバーを持ち帰りを除く原則営業禁止とし、人が1か所に集まるのを防ぐ措置をとり、拡大を食い止めようとしたものの、効果は見られず感染者は瞬く間に1500人を超した。

眠らない街、ニューヨークの夜の景色が一変しはじめた。

その後は、医療関係者など不可欠な業種以外の在宅勤務率を連日50%(18日)、75%(19日)に引き上げるよう要請、1万5000人を超えた22日からは100%になった。しかし、様々な手を打ったにもかかわらず、感染者の増加は止められなかった。いわゆる「感染爆発」の段階に突入してしまったのだ。

当然この間、入院患者も急激に増えていった。NY州では病院のベッドや人工呼吸器が足りなくなることを想定し、イベントホールを臨時の病院に改装したり、セントラルパークにテントの病院を設置するなど、医療崩壊を避けるための作業が急ピッチで進められた。だが、患者の伸びはそれを遙かに上回り、あっという間にすべてが足りない状況に陥った。

セントラル・パークに設置された仮設テント病院

しかも、死者数も加速度的に増加、遺体安置場も不足し、冷凍トラックを改良する形で対応している。

コロナ感染者の遺体は冷凍トラックで運ばれる

知事や市長も連日会見で危機感を示し、人工呼吸器などの医療器具ををニューヨークに送るよう要請している。ニューヨーク州では4月4日から12日頃に感染のピークが来るとされ、5日には24時間の死者数が初めて減少に転じた。

NY州での感染者数と行政対応の推移

 

感染者数

ニューヨークでの対応

3/7

76

州)感染拡大受けて「非常事態宣言」

3/8

106

州)在宅勤務の導入や人が密集した空間を可能な限り避けるよう要請

3/9

142

州)消毒剤の不足に対応し毎週10万ガロンの消毒剤を州が製造し公共施設に配る。
学校で確認された場合24時間閉鎖と発表。

3/11

216

州)NY州立・市立大のオンライン授業発表

3/12

325

州)500人以上のイベント禁止    
市)非常事態を宣言。ブロードウェイなど公演中止

3/13

421

最初のドライブスルー検査場を設置

3/14

613

州・市)重症者以外は病院に行かないよう要請。
            自宅で軽症者は自己隔離呼びかけ

3/15

729

市)16日から4月20日まで学校閉鎖を決定。 17日からレストランなど飲食施設で持ち帰りを、
映画館などに閉鎖を命令 州)一部の地域で在宅勤務を要請

3/16

950

州)レストラン及びバーはテイクアウト及びデリバリーに限り営業を認める,
映画館,ジム、カジノは完全に閉鎖、50名以上の集会を禁止

3/17

1,544

市が屋外退避(外出禁止)の可能性に言及するも州が否定

3/18

2,914

州)20日から50%の在宅勤務を命令 
 ショッピングモールや遊園地、ボーリング場も閉鎖発表
 公立学校の2週間休校を発表

3/19

5,298

州)20日から75%の在宅勤務に強化

3/20

8,516

州)22日からの100%在宅勤務を命令 
  21日から理髪店などの営業禁止

3/22

15,168

州)州内4か所に仮設病院設置を発表 
市)小規模事業者に無金利ローン 零細企業に従業員の給与補助

3/23

20,909

州)公園で人の集まりすぎに警告

3/24

25,665

 

3/25

30,811

 

3/26

37,258

 

3/27

44,635

州)仮設病院の追加建設を発表 
  公立学校の415日までの休校を発表

3/28

52,318

 

3/29

59,513

州)外出自粛要請を415日まで延長

FNN調べ

日本にも忍び寄る感染爆発の恐怖

アメリカでは2月にワシントン州、カリフォルニア州など西海岸で感染者や死者が確認され一気に緊張が高まった。しかし、カリフォルニア州では早期に外出禁止などの措置をとったこともあり、ニューヨークのような感染爆発は起きていない。

一方、3月に入って1例目が確認されたニューヨークでは感染者が爆発的に増加、またたくまにニューヨークは、アメリカのホットスポットとなってしまった。

ニューヨークでなぜここまで感染者が増加したのか? 現段階ではっきりとした要因は分からないが、ニューヨークという街の特性、-マンハッタン島という島にすべてが集中し、人々が地下鉄、電車、バスなどで通勤・通学するなど、ほかのアメリカの都市のように車での移動が少なく、人が密集した社会で生活している-ことが感染爆発を招いた要因の一つと考えられる。

つまり、同じような環境の東京が、いつこのような事態に陥ってもおかしくないということだ。

安倍首相は7日に緊急事態を宣言、日本でもようやく危機感が高まってきたと言われる。だが、日本ではいまだに人々が満員電車に乗っていることや、社会的距離が十分にとられていないことを海外から見ていると、ニューヨークで今起きていることが東京にすでに忍び寄っているのではないかと恐ろしさを感じる。

経路が不明の感染者数の増加に歯止めがかからなくなってきているのも不安材料だ。

初期のニューヨークを思い出して欲しい。感染者が百から千、千から万に変わるのに要した時間は本当にあっという間だった。怖いくらい早かったというのが実感だ。カリフォルニア州の例にもあるように、一日でも早く対策を強化すればその分、感染者の拡大を抑える効果が期待できる。そのためにも個人一人一人が最大限、感染を防止するための行動を取って欲しいと切に願う。

東京がニューヨークの二の舞を演じないことを強く望む。

【執筆:FNNニューヨーク支局長 上野浩之】