画面越しに手話通訳をする“遠隔手話通訳”

人と会わずに、スマートフォンなどの画面越しに手話通訳する“遠隔手話通訳”。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、岡山県内の自治体からも注目が集まっている。

医師役の総社市 片岡聡一市長:
きょうは、どこがどう調子が悪いんですか? 熱がありますか?

手話通訳の声:
きのう昼ごろから熱が出て、38.5度出ました

医師役の総社市 片岡聡一市長:
2日目ですか?

市長自らが医師役となり、使い勝手を確かめる。患者役は、市内に住む聴覚障害がある男性。

スマートフォンの画面越しにやり取りをサポートするのは手話通訳者で、仮に聴覚障害者が新型コロナウイルスに感染していても離れた場所から遠隔で手話通訳することで、通訳者への感染を防ぐことができる。

遠隔手話通訳を体験した聴覚障害者:
熱が出たときに遠隔手話通訳があれば、話がスムーズにでき安心

総社市福祉課・上西智子さん(手話通訳者):
登録手話通訳者の体と命を守るためにも、遠隔手話通訳はこれから必要になる

総社市 片岡聡一市長:
言ってみれば簡単なことですが、よくぞという感じですよね。やったらいいよ、できるなら。実用段階に持っていって

新型コロナが感染拡大する中…導入に向けた実証実験

3月30日、総社市役所で行われた遠隔手話通訳導入に向けた実証実験。
片岡市長が対応を急ぐのには理由があった。

岡山県・伊原木隆太知事(3月22日):
本日、県内で初めて新型コロナウイルス感染症患者の発生が確認されました

実は、この実証実験の8日前(3月22日)に岡山県で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された。5日までに感染者数は11人に増え、感染拡大が始まっている。

感染を防ぐために、手話通訳者がマスクをつけることも対策の1つだが、手話でのコミュニケーションは手の動きだけでなく、表情や口の形からも多くの情報が伝わるため、マスクをつけると情報量は制限されてしまう。

通訳派遣を受けた聴覚障害者:
(自分が病気のときに)通訳に来ていただくのは申し訳ない気持ちもある。でも通訳がないとコミュニケーションが取れない

こうした中、世界ろう連盟と世界手話言語通訳者協会は、共同声明で遠隔手話通訳の有効性に言及した。

国内でも全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会の3団体が、医療機関受診時などの遠隔手話通訳の整備を厚生労働省に要望した。

篠田吉央アナウンサー:
遠隔手話通訳は、すでにさまざまなシステムがあり、このようなQRコードを使ったものもあります

発行されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、自分の持っている端末で、遠隔手話通訳にアクセスできるので、使う場所を選ばない。

非常時のコミュニケーション手段としても期待

また、遠隔といえども、遠く離れた県外の通訳者に頼るのではなく、これまでの通訳派遣制度を活用し、地域の事情をよく知る地元の通訳者が、画面を通じて対応にあたるケースも考えられる。

非常時のコミュニケーション手段として期待される遠隔手話通訳。
9年前の東日本大震災では、被災した聴覚障害者の情報伝達に遠隔手話通訳が役立った事例があった。

ーーこちらの画像なんですが、スマートフォンがずらりと並んでいます。これはどういった状況だったんですか?

プラスヴォイス・三浦宏之社長:

これは東日本大震災の10日後の様子なんです。被災してコミュニケーション手段をなくしてしまった聴覚障害者の方々に、このスマートフォンを使って遠隔手話通訳を実施しました

仙台市で聴覚障害者向けのサービスを提供するプラスヴォイスは、東日本大震災直後にソフトバンクから提供されたスマートフォン300台に、地元の聴覚障害者と連携し、遠隔手話通訳のシステムを設定。岩手、宮城、福島の聴覚障害者に配布した。

プラスヴォイス・三浦宏之社長:
東日本大震災の時には、通訳の方が対面でいることによって、心のケアや安心できるケースがたくさんあったと思うが、ただ、必ずしも派遣できるわけではなくて、今回のコロナの場合も、あらゆる通訳の方法を考えることが求められると思う

こうした災害時の運用例から遠隔手話通訳の有効性を探ろうと、岡山市でも意見交換会が開かれた。
市の職員や通訳者、聴覚障害者が、実際に遠隔手話通訳を体験する。

患者役:
きのうから熱が出て頭が痛い。風邪ではないでしょうか?

医師役:
今心配ですよね。コロナのことがあるので。旦那さんは熱はどうですか?

患者役:
聞いていないのでわかりません

実際に体験することで、遠隔手話通訳の画面は、話す相手の正面に置いた方が使いやすいこともわかった。

聴覚障害者:
この状態でしたら、話相手の顔と画面の手話が同時に見えるので良い

参加した手話通訳者:
聞こえない方が、この場面は遠隔手話通訳でいい。この場面は、通訳に来てほしいという聞こえない人が主体的に選択できる社会モデルになっていけばいい

新型コロナウイルスの感染拡大が進む危機的な状況を乗り切るために。
遠隔手話通訳の可能性に注目が集まる。

(岡山放送)