ランドセルをコロコロ運べる便利グッズ
授業で使う教科書やノートを学校に置いて帰る、いわゆる“置き勉”。
自分の通っていた小学校では“置き勉”が禁止されていて、毎日すべての教科書とノートを持って登下校していたという人も多いだろう。
文部科学省は2018年9月、全国の教育委員会などに対して「児童生徒の携行品の重さや量について改めて御検討の上、必要に応じ適切な配慮を講じるよう」に通知。他にも“デジタル教科書”の導入が始まったり、各社から軽量化されたランドセルが発売されたりと、日々子どもたちの負担が減るような努力は続いているのだが…
それでも、毎日の登下校で大きなランドセルを背負う小学生たちを見ると、「肩が痛くなりそう」「重さで猫背になりそう」と思うこともあるだろう。
そんな「重すぎるランドセル問題」を解決してくれそうなアイテムが登場した。
それが、株式会社「悟空のきもちTHE LABO」から予約受付中の「さんぽセル」。
伸び縮みできる2本の棒の先にはキャスターが付いており、ランドセルの両側面に装着して本体を伸ばすと、ランドセルがキャスター付きのスーツケースのような形に早変わり!
取り付けは1分ででき、蓋を被せる部分と肩ベルトにゴムを通し、ランドセルの側面は棒でも固定。また全サイズのランドセルに対応するとのことだ。
持ち手の部分を掴んでコロコロと転がして運べ、同社によると、キャリー時の体感荷重は8〜9割減り、ランドセルが5kgだとすると約500gに軽減できるという。
「さんぽセル」自体の重さは230gで、価格は3960円(税込)。
たしかにこれならいくら荷物が増えても「ランドセルが肩に食い込んで痛い」という事がなくなりそうなアイデア商品だ。しかし社名にもある「悟空のきもち」といえば“日本一予約が難しい店”としても人気のヘッドスパ専門店。
今回、小学生たちのランドセルの重さ問題を解決してくれるアイテム開発に乗り出したのは、なぜなのだろうか。同社に詳しくお話を聞いてみた。
「ゲームが欲しい!」「自分たちで稼いでみたら?」
――「さんぽセル」の開発を手掛けたのはなぜ?
ランドセル問題は、悟空のきもちとして直接関わったということはなく、悟空のきもちの実験ブランドとして、今年1月に誕生した「悟空のきもちTHE LABO」主体で行われました。
オンライン授業で暇になりTHE LABOの拠点に住んでいる中心メンバーでもある沖縄の大学生 太田旭くん(20)が廃校(栃木県日光市)の子どもたちに会いに行ったことに始まります。
――では、今回の「さんぽセル」開発も子どもたちが中心なの?どんな経緯で?
廃校の有効利用で子どもたちに開放している日光市の経営者の方に、廃校に集まる子どもたちのことを聞き、遊びに行ったことが最初です。その際に子どもたちが、雨の日に遊び場がなく「Nintendo Switch を買ってー!」と言ったため「だったら自分たちで稼いでみたら?」と提案しました。
小学生たちは地元のサッカークラブに通うチームメイトやそのきょうだいで、メインの開発者は4人です。
廃校の子どもたちとは、契約というものは特にしておらず、収益でまず1番に「みんなの念願の巨大テレビとSwitchを廃校に買う」という約束をして、みんなで楽しみながらアイデア大会は進んでいきました。これは夏休み中の出来事です。
――開発のアイデアは全て小学生たちから出た?
伝えたのは「困り事を解決することがお金を稼ぐアイデアになる」ということだけで、ランドセルが重いという文句や、それを解決するアイデアとしてタイヤをつかうという発想はアドバイスもまじえながらも、小学生たちが自分たちで出しました。
そこからはTHE LABOの太田旭くんが製造業の会社などの協力も頂きながら試作・改良を重ね 廃校の小学生たちが使用感をテストをするといった感じで進んでいきました。
「ランドセル症候群」と呼ばれる健康被害が社会問題化しているというのは発表直前に知りましたが、現場の小学生も実際に苦しんでいて、ランドセルはタイヤをつけたくなるような重さなんだなあと実感しました。
「悟空のきもち THE LABO」は「悟空のきもち」の店舗以外の事業を託され、2021年から本格稼働したという「子どもだらけの研究育成集団」。
21歳以下の子どもたちだけで構成されたラボは「子どもたちの力で社会に挑戦する」ことをコンセプトにしており、今回の「さんぽセル」を開発したのは、栃木県日光市に住む3~6年生の現役小学生たち。今年の夏休みを利用して開発・特許の申請を行い、11月10日からの予約開始にこぎつけたという。
悟空のきもちLABOでは過去にも、切り花を長持ちさせるための園芸用液がそのまま化粧水として使えると判明した「ひとか」や、メロンパンをまるごと使った「マスクパン」など、ユニークなアイデア商品を数多く手がけ、そのすべてを黒字化させており、この流れの中で「さんぽセル」も商品化が決まったのだという。
そんな「さんぽセル」だが、開発のきっかけは「Nintendo Switchを買ってほしい!」というなんとも小学生らしい希望から。
遊び場として開放されている日光市の廃校の小学校に集まっていたメンバーの希望のため、悟空のきもちTHE LABOの大学生たちがアドバイスしつつ、試行錯誤の末に完成したのだという。
販売開始から5日ほどで約1000件ほどの反響・予約
――では、小学生たちも気になる予約状況は?
販売開始から5日ほどでおよそ1000件ほどの反響・予約があり、お母さんやお父さんはもちろん、おじいちゃんおばあちゃんからのプレゼントとして購入されている方が多い印象です。もうすでに小学生たちの念願のものは買えるだけの予約状況で、たのしみに収益確定になる1月の商品発送を待っている状態です。
――こだわった点はどこ?
軽量化とキャリーとして、ランドセルとしてもすぐ使えることの両立に、一番こだわっています。階段などではすぐにランドセルとして使え、道ではキャリーとして使えます。
この構造で、製品化した大学生に小学生たちを発明者に加え特許を出願。教科書約1冊分・大きいサイズのiPhoneよりも軽いくらいの重量感で、ずっと取り付けたままで小学生にも負担が少なくしました。キャリーの状態のときは、小学生の負荷を8~9割を減らせる仕様にしました。
――実際に子どもたちが使ってみての感想などは?
試作品の段階から重ね、何度も試してもらってるので、これなら大満足!という感じです。使っていると友達たちもうらやましがり、学校に行くのが楽しくなりそうと言ってくれているので、明るい気持ちで毎日すごしてくれるといいなと思っています。
「みんなで遊べるゲーム機が欲しい!」という実に小学生らしいきっかけを元にスタートした「さんぽセル」。しかし、社会問題のひとつと言ってもいい「ランドセルの重さ問題」を解決してくれそうな実用性の高さに、改めて子どもたちの創造力を見せつけられた。
子どもたちにとって、毎日の勉強は大切だが、まずは健康第一。同い年の小学生たちが作ったこんなアイテムがあれば、さらに学校生活が快適になること間違いなしだろう。