新型コロナウイルスの感染拡大で深刻なマスク不足が続く中、安倍首相は3月28日の会見で、新たに全国の小中学校にもマスクを配布すると表明した。菅官房長官も「引き続き政府一丸となってマスクの供給拡大に向けて最大限の努力をしていきたい」と述べているが、政府はどのような手を打っていて、マスクが店棚に豊富に並ぶのは実際いつになるのだろうか。

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「需要が青天井」政府の苦悩

供給量を増やしても、なぜマスクが手に入らないのか。政府関係者は「需要が青天井になってしまっている」と苦悩を語った。

例年、マスク需要のピークは花粉症シーズンの3月で、その量は5.5億枚だという。政府は、1月時点で国内メーカーに対しマスク増産を要請したほか、マスク製造設備を新たに導入する場合の補助金制度を設けたことで国内の製造量が増え、中国からの輸入再開も相まって3月の供給量は約6億枚となった。さらに菅官房長官は27日の会見で、4月は7億枚の供給が見込まれると発表した。例年ならばピーク時の需要を十分満たせる供給量が確保されているということだ。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、例年ならマスクを着用しない人を含め、大多数の国民が1日1枚のマスクを着用するようになったため、需要が高止まりしているのだ。仮に1億2000万人の日本国民のうち1億人が1日1枚マスクを使えば、月30億枚は必要になる。政府関係者が「供給量が20億枚でも30億枚でも足りない」と漏らす通り、マスクの品薄状態解消は簡単な話でなく、菅長官も「品薄状態の解消には一定程度の時間を要する」と明かしている。

買い占め禁止の「抜かずの宝刀」

こうした品薄状態の中、これまでにインターネットでマスクが高額で取引されている事例の報告が相次ぎ、転売を目的としたいわゆる「転売ヤー」による購入が、店頭でのマスクの品薄状態に拍車をかけているとの指摘も出た。

そこで政府は、国民生活安定緊急措置法をマスクにも適用する政令改正を行い、マスクの転売行為を罰則付きで禁じたのだ。この法律は、第一次オイルショックによる急激な物価高騰やトイレットペーパーなどの過度な買い占めを受けて制定されたものだが、これまでオイルショックの時を含めて実際に施行されたことはない。今回初めて法律が用いられることになり、政府高官は「抜かずの宝刀を抜いた」と語った。とにかく少しでもマスク不足を解消したいという、政府の危機感がうかがえた。

必要なところへ支給

一方で、市中に出回るマスクが少ない中、優先度の高い医療機関でもマスク不足が深刻化している。そこで政府は2月以降、感染症指定などの医療機関に対し医療用(サージカル)マスク1500万枚、また再利用可能な布製マスク2000万枚を介護施設などに配布している。

「配布」と一言で言っても、配布先の把握、増産や調達の指示、配送手段の確保といった「大きなミッション」(首相周辺)となる。そこで政府は9日、省庁の垣根を越えた特命部隊「マスクチーム」を立ち上げている。

「全国の小中学校にマスク配布」安倍首相が会見で表明

布製マスクの入荷量が増えてきたことを受け、安倍首相は28日の会見で学校再開を前提に、全国の小中学校の児童・生徒と教職員に布製マスクを配布すると表明した。

「ざっと計算しますと小中校生が900万人でありますからそれを上回る、教職員等も含めて1100万枚の布製のマスクを今後、確保して、4月中を目途に配布をします。」

さらに安倍首相は、「この布製のマスクは洗剤で洗えばもう一度使っていくことができます。ですから、使い捨てではなくて、この1回のマスクを何回も使えることができるということでありますので、急激に拡大している需要に対応する鍵となると考えています」と述べ、再利用可能な布製マスクがマスク不足解消の鍵だと強調した。

政府では、業界団体と連携して「布製マスクの洗い方」についての動画を作成するなど、布製マスクの配布にあわせたサポートを行っている。

経産省Youtube より

「5月か6月くらいまでには…」マスクメーカーの意見は

それでは、一般的なマスクはいつ頃、お店に十分な品数が並び、購入できるようになるのか。

首相官邸でのヒアリングに参加した、マスクのメーカー・興和株式会社(Kowa)の三輪社長は、記者団に対し「今のペースでいくと、5月か6月ぐらいまでには何とか(需要に)追いついてくる」「2ヶ月か3ヶ月で、なんとか(需要に)追いつくように頑張ってやっている」との見通しを示した。

興和の三輪社長

一方で布製マスクについては、政府関係者によると、国内で製造ラインを立ち上げたメーカーが相次いでいるほか、ミャンマーなどで日本企業が洋服向けの縫製工場を転用して製造し、製造量が増えてきているという。前述の関係者は、「布製マスクは給食用マスクのようでダサいかもしれないが、飛沫を飛ばさない観点で極めて有効」だと強調するほか、「再利用可能な布製マスクを導入した分だけ、紙マスクの余力が生まれる」と意義を訴える。

今後の見通しは

このように、需要が高止まりしている中でマスクの品薄状態が近々に解消されると考えるのは、非現実的だろう。政府は医療機関、介護施設、学校へのマスク配布を行っているが、布製マスクを活用しつつ、一人一枚とは言わないまでも、最低限必要なところにマスクが行き渡るような施策が一層求められる。

あわせて、前述のマスクメーカーは政府に対し「国内外の生産態勢を確保するため、補助金が非常に助かる」と要望したことを明かしている。野党からも、政府によるマスク生産への補助額が低いとの指摘があり、供給量を増やすべく、政府による一層の生産支援に期待したい。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)