北朝鮮の出稼ぎ労働者の送還を義務付けた国連による制裁決議。そして、新型コロナウイルスの感染拡大によるタイ政府の非常事態宣言。これらの厳しい状況でもなお、首都バンコクで営業を続けている北朝鮮レストラン「平壌玉流レストラン」を訪れた。そこには、満面の笑みで迎える女性店員の姿があった。

持ち帰りのみ営業する北朝鮮レストラン
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北朝鮮レストランは外貨獲得手段の1つ

北朝鮮レストランは、中国をはじめアジア各地に出店していて、北朝鮮の貴重な外貨獲得手段となっている一方、北朝鮮のスパイ活動の拠点として利用されている疑惑も浮上している。しかし、北朝鮮の出稼ぎ労働者を送還させるよう義務付けた国連安保理の制裁決議の期限を2019年12月に迎え、すでに閉鎖された北朝鮮レストランも出てきている。タイの首都バンコクには2つの北朝鮮レストランがあったが、その1つ「平壌日の出レストラン」は2019年11月、入国管理局の摘発を受け、閉店している。

バンコクに残るもう1つの北朝鮮レストラン「平壌玉流レストラン」。ここは国連の制裁決議の期限を過ぎた後も、タイ人の店員によって営業が続けられてきた。店員によると、北朝鮮の女性たちは2019年の夏頃、「休むために」北朝鮮に戻ったという。それ以降、歌や踊りで名物となっていたステージショーはおこなわれていない。

平壌玉流レストランの店内

非常事態宣言でレストランでの飲食禁止

新型コロナウイルスの感染が広がる中、タイ政府は3月26日、非常事態を宣言。4月末まで、レストランは店内での飲食が禁止となった。許されるのは持ち帰りと配達のみで、バンコクの多くのレストランが弁当など特別なメニューを準備したり、通常のメニューを割り引きして販売したりして、この難局を切り抜けようとしている。

日本食レストランの店頭で販売される弁当

北朝鮮レストランも持ち帰りのみ

それは北朝鮮レストラン「平壌玉流レストラン」も同じだった。大通りに面した店の窓には、紙で書かれた「テイク・アウェイ・オンリー」の文字があった。店の窓はカーテンが閉められていて、営業しているかどうかわからなかったが、店に近づくと女性店員が入り口から顔を出し、満面の笑みを浮かべてメニューを見せた。この日は、名物の平壌冷麺は販売していなかったものの、ビビンバやキムチ鍋、海苔巻き、餃子などほぼすべてのメニューを持ち帰ることができると話した。値段も通常7%の付加価値税VATが加わるが、持ち帰りの場合はその分が割り引きされるという。また、店頭では果物をミキサーにかけたドリンクが50バーツ、日本円で170円ほどで販売されていた。感染防止の目的とみられるが、客が店内に入ることはできなかった。

名物の平壌冷麺など麺類は販売していなかった
果物の飲み物も販売

世界中が新型コロナウイルスで混乱する中、北朝鮮は3月に入り、4回にわたって短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射している。食糧難で苦しむ北朝鮮にさらに新型コロナウイルスが追い打ちをかけていることも推測できる。制裁決議や非常事態宣言があっても営業を続ける北朝鮮レストランは、厳しい状況で打開策を模索する北朝鮮の姿と重なって見えた。

【執筆:FNNバンコク支局 武田絢哉】