大阪で町中にSOSボタンを設置する実証実験

突然、心肺が停止して倒れた人の命を救う、「自動体外式除細動器(AED)」。

全国各地に約60万台が設置され、AEDの手当てを受けた人で1カ月後に社会復帰できた人は45.7%に上ったというデータ(総務省消防庁の2018年版「救急・救助の現況」)もあり、今や救命には欠かせない医療機器だ。

その一方で、一般市民によって実際に使われたケースは少ないというのが現状だ。

同「救急・救助の現況」によると、2017年、心臓を原因とする心肺停止の患者のうち、一般市民の目の前で倒れて搬送された患者は2万5538人。このうち、一般市民によってAEDが使われた例は5%未満にとどまっているのだ。

こうした中、国立循環器病研究センターなどが、突然、心肺が停止して倒れた人をなるべく早くAEDによって助ける仕組みを作るため、3月上旬から実証実験を始めることが分かった。

実証実験を行う場所は、大阪府吹田市と摂津市にまたがる「北大阪健康医療都市」内にある、JR岸辺駅周辺。

駅周辺の東西約500メートルの範囲に、AED5台と小型のSOSボタン16個を設置。
また、「ファーストレスポンダー」と呼ばれる、事前に心肺蘇生トレーニングを受講し、岸辺駅の近隣施設に勤務している人材を確保した。

(画像:国立循環器病研究センター)
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心停止の現場を目撃した人がSOSボタンを押すと、「ファーストレスポンダー」のスマートフォンのアプリに、ボタンが押された場所とAEDの位置が示される。

それを受け、現場の近くにいる「ファーストレスポンダー」がAEDを持って、現場へ救助に向かい、救命活動にあたる、という仕組みとなっている。

(画像:国立循環器病研究センター)


119番通報ではなく、SOSボタンを設置するというのはこれまでにない試みだが、なぜこのような仕組みにしたのだろうか? そしてどのようなことが懸念されるのか?

国立循環器病研究センター・心臓血管内科の医長、田原良雄さんに話を聞いた。

狙いはAEDによる蘇生率の向上

――このような実証実験を行う狙いは?

蘇生率の向上です。

突然死の蘇生に関しては、迅速な応急救護が必須と言われています。医療従事者ではない一般の方々でも迅速、かつ適切な対応で蘇生率は高まると考えています。

――実証実験では、どのようなことを確認しようと考えている?

大きく2つありまして、1つは「SOSボタンがどのような使われ方をするのか」。

いたずらばかりの可能性があります。

もう1つは「SOSボタンが押されたら、すぐに現場に向かえるのか」。

主に勤務中の方に「ファーストレスポンダー」をお願いしているのですが、実際にSOSボタンが押されたら、その場に急行できるものか、確認します。


――AEDとSOSボタンを置く場所はどのような基準で選んだ?

「均等にカバーできる距離」、「設置可能な場所」、「目視しやすい場所」を考慮して、配置しました。

ファーストレスポンダーは10~20人

――「ファーストレスポンダー」は今、何人いる?

初期の登録者は10~20人で、徐々に増やしていく予定です。


――「ファーストレスポンダー」を今後増やしていくためにはどのような取り組みが必要?

いくつかありまして、まず、AEDに関する持続可能な教育体制を構築し、簡易に受講できるようにすること。

次に、定期的に、消防組織や日本赤十字社での講習会を受講していくことです。

そして、医療従事者だから適切な救護ができるのではなく、医療従事者でなくても、一般の方々でもできるということを認知していくことだと思います。

そうやって、一般の方々でも救護ができるという自信がつけば、“助けあう”という地域文化が育まれることになり、より良い救護体制が構築できると信じています。


(画像はイメージ)


日本救急医療財団などが公表する「AEDの適性配置に関するガイドライン」では、「目撃された心停止の大半に対し、心停止発生から長くても5分以内にAEDの装着ができる体制が望まれる」としている。

また、2017年における救急車の現場到着所要時間は全国平均で8.6分(消防庁「2018年版 救急・救助の現況」)だ。

AEDの蘇生率向上につながるかもしれない、今回の実証実験。実験結果から課題などを見つけ、一人でも多くの人が助かる仕組みへと進めていってほしい。

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