家で手軽に心肺蘇生訓練! “ペットボトル”を使う救命訓練キットが誕生

カテゴリ:国内

  • 心肺蘇生の際に胸を押すのに必要な力が、空のペットボトルを押す力とほぼ同じ
  • 「家の中に適したものがないかと考え、ペットボトルに」
  • 現在は救命講習の中だけでの使用だが、将来的には販売も

目の前で突然、人が倒れた。
最近はAEDが普及してきているが、届くのを待っている間も救命措置が大事だ。

このような状況で、とっさに救命活動をできる人がどれだけいるだろうか? なんとなく知識としてはあったとしても、講習を受けたことがない人も多いかもしれない。

そんな中、一般社団法人ファストエイドが、心肺蘇生(CPR)訓練を空のペットボトルで簡単にできるキット「CPR TRAINING BOTTLE」を開発した。

キットは「ペットボトル」「訓練用簡易シート」「ペットボトルラベル」「レクチャー動画」の4点で構成されている。

心肺蘇生(CPR)の際に胸を押すのに必要な力が、空のペットボトルを押す力とほぼ同じであることに注目し、精密測定により使用可能なペットボトルを特定したキットだ。なお同法人では、現在「サントリー天然水」の550ml、2Lペットボトルを推奨している。

動画では、訓練は2人組で行い、1人がペットボトルが動かないように押さえて、もう1人が動画のリズムに合わせてボトルを2分間押し続けて、心肺蘇生のやり方を学ぶという内容になっている。


(画像:一般社団法人ファストエイド)

なぜ、ペットボトルを活用したCPR訓練キットを作ったのか? 代表理事の玄正慎さんに話を聞いた。

「家の中に適したものがないかと考え、ペットボトルに」

ーーこのようなCPR訓練キットを開発した理由は?

私たちは、突然死を減らすことを目指しており、代表を務めるCoaido株式会社で、119番通報をしながら周囲の救命有資格者にSOSを発信できる緊急情報共有アプリ「Coaido119(コエイドイチイチキュー)」を開発してきました。

その取り組みの中で、日本では1日に約200人もの方が突然の心停止で亡くなり、その約7割が自宅で起きている現状に注目し、家庭内でCPRの知識を共有することが必要だと考えました。自宅で心停止が起こった時にその場には家族しかいません。そのときCPRが行われなければ救命のチャンスが失われてしまいます。そこで、家族全員がCPRの知識を身に付けるべきであり、そのための訓練は自宅でできた方が良いと考え、手軽なキットを考案しました。


ーーその結果がペットボトルを活用したキットになった?

はい、自宅で訓練をするにしても心肺蘇生の訓練用の人形はとても高価です。家の中にあるもので訓練に適したものがないかと考えたところ、ペットボトルに行き着きました。ペットボトルの硬さ(弾力)は製品によって千差万別ですが、規格化されているので、「この商品ならこの硬さ」と決まっています。ですので、「訓練に最適な硬さのペットボトルが絶対あるはずだ」と思ったのがキット開発のきっかけでした。

(画像:一般社団法人ファストエイド)

ーー「サントリーの天然水」のペットボトルを推奨している理由は?

訓練に適したペットボトルはサントリーさんにご協力いただき、約30種類の中から選びました。もう一人の代表理事である小澤貴裕は救急救命士で元救急隊員です。その小澤に現場で心臓マッサージを施していた時の感覚と似たペットボトルを選んでもらった結果、「サントリー天然水」となりました。

なお、このペットボトルと既存の心肺蘇生訓練機器でCPR訓練を実施した場合の、圧迫と減圧の際の荷重と変形量を測定し比較検証しており、遜色なくCPR訓練に活用できることを確認しています。

また、他社のペットボトルが推奨できないというわけではなく、まだ検証していないだけですので、今後は他のペットボトルでも転用できる可能性を探っていきたいと考えています。

狙いは、“関心が薄い層”へアプローチ

ーーペットボトルを活用している他にこだわりの部分は?

赤いハートの模様を重ねて人体の形をポップに表現しているデザインです。これまでの救命講習のイメージはすごく真面目で、少しとっつきにくい部分もあったかと思います。これを「楽しそう」「面白そう」「やってみたい」という風に変えたいと考えています。

私たちが一番やりたいと思っているのは、CPRの訓練に無関心だった層にアプローチし興味を持ってもらうことです。消防署などが行う救命講習に参加したことがない人にも最低限の知識を持ってもらいたいのです。

なお、キットでは人工呼吸を省きました。マウストゥーマウスに抵抗があることで、心肺蘇生を行ってもらえないのは残念ですし、人工呼吸と心臓マッサージを組み合わせた場合と心臓マッサージのみを施した場合の救命率が、遜色ないという研究結果も複数出ているからです。

(画像:一般社団法人ファストエイド)

ーーキットは購入できるか?

現在は私たちが開催する救命講習の中だけで使っているキットです。ホームページの「お問い合わせ」から購入の希望についてお伺いしていまして、購入希望のご意見を多くいただいていますので、今後は販売もしていきたいと考えています。

救急車がくるまでのCPRが、救命率を上げることにつながる。
もしもの時のために、少しでも多くの人がCPRを身につけておいた方がいいことは確かだ。