深刻な人手不足を背景として、居酒屋の「養老乃瀧」が、“客の注文を受け、ドリンクを作って提供する”ロボットの実証実験を自店舗で行うなど、人間とロボットの協働の試みが各方面でみられるようになってきた。
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そんな状況の中、鹿島建設が土木工事現場へのロボット導入を発表し、注目を集めている。
そのロボットはこちら!

この四足歩行型ロボット「Spot」は、最先端のロボット技術を保有し、現在はソフトバンクの傘下にあるBoston Dynamicsによって開発されたもの。Boston Dynamicsといえば、これまでにも広い敷地をさながら4本足の動物のように勢いよく駆け巡るロボットを開発し、多くのネットユーザーを驚かせている。

そして「Spot」は、最近ではソフトバンクロボティクスのAI清掃ロボット「Whiz」のCMで、女優の広瀬すずさんと共演し、軽快な動きを見せている黄色いロボットといえばピンと来る人もいるだろうか。


鹿島建設は、「Spot」を用いた実証実験を2018年11月、神奈川県の横浜環状南線 釜利谷ジャンクションCランプトンネルの工事現場で実施。その結果を基にして、同機をトンネル内の路盤などでも不自由なく歩行できるよう改良した上で、2019年12月に導入へと至った。

鹿島建設側は、今回の導入の目的を「生産年齢人口の減少や技能労働者の高齢化に伴う将来的な就業者不足」と「地下空間などでの作業に対する安全策」に対応するものとしており、今後の展開に関しては「急傾斜地すべり地帯での調査・測量などの危険作業を含め、適用先の拡大を検討していきます」としている。

そして気になるのは、「Spot」が工事現場でどんな作業に従事するのかという点だろう。 また、鹿島建設では工事現場へのロボット導入を今後さらに進めていくのだろうか?
同社の担当者に話を聞いた。

現状は監視や点検業務がメイン

ーー「Spot」を今回導入しようと思ったきっかけについて教えて?

弊社では「鹿島のオープンイノベーション戦略」として、「現在の延長線上にない斬新な発想やアイデアによる最先端技術・アライアンスパートナーを業界内外、国内外から探索し、その技術やアイデアを応用・補完することで、革新的生産技術・イノベーションの創出に繋げる」活動を行っており、これはその一環にあたります。

ーーこの導入だが、いつ頃から進めていた?

2017年10月より、土木管理本部土木技術部という部署に「開発企画Gr.」というチームを立ち上げ、活動を行っておりました。

ーーでは、Boston Dynamics社のものを導入した決め手は何?

「世界最先端のロボット技術を有するBoston Dynamics社」の情報を得て、そこに注目し、「まずはこの『Spot』の建設現場での適用について始めよう」とのことで、BD社らと協業を開始。現在に至っております。

ーー2018年11月の実証実験では、具体的にどのような作業をしてもらった?

トンネル坑内を歩行させ、切羽(トンネル掘削面)の写真を撮影する、ということを行いました。
切羽観察は現場社員が毎日実施し、現況を写真に収めるものですが、安全性を向上させるため、ロボットの適用が一つの解決策と考え実行しました。

「Spot」がトンネル坑内で当時撮影した切羽画像

ーー「Spot」は、悪路でもバランスを保てていた?

当時はバランスを保てない場面もありました。その点をその後のカスタマイズで改良した次第となっております。

ーー実験を経て、建設現場でのどういった作業に向いていると感じる?

「Spot」は「作業する手の部分」がまだ備わっていないため、作業自体はできない状況です。
現状は監視や点検がメインですが、自律で歩行できるため、これまで現場監督が行っていた巡回などにとってかわることが可能と考えております。また、360度カメラを搭載しての活用も今後行っていく計画です。

ーー人間がやる場合と、「Spot」がやる場合にかかる時間の具体的な比較の数字はある?

先ほど申し上げたように、本格的な作業自体はまだできておりませんため、そのようなデータは取得しておりません。今後、比較をしてまいりたいと考えております。

「ロボットの活用は自然の流れと考えております」

ーー現時点での「Spot」導入のメリット、デメリットとは?

メリットの一つは、「建設現場が最先端のロボット技術で変わる!」というワクワク感を出すことで、建設のイメージを一新することができるかもしれない、ということです。
また二点目として、これまで人が行っていた巡回や点検、写真撮影などを行ってくれることです。それによって創出された時間を社員が他の業務に使えるため、大変なメリットと考えております。

デメリットは、「Spot」と現場で出くわした場合、こちらが驚いてしまうことがある、ということくらいでしょうか。

ーーこの導入で、人手不足などをどのくらいカバーできると見込んでいる?

まずは1台導入した「Spot」を可能な限り多くの場面で活用し、ユースケースをあぶり出していく予定です。
それに応じて、追加の導入を検討していくことにもなると考えております。

ーー今後予定している実証実験があれば、その内容を教えて。

土木現場はトンネル以外にもさまざまなタイプの工事があります。それらで試していくことも検討しております。

ーーこうしたロボット導入の動きは、建設業界では主流になりそう?

そのように考えております。今後、熟練作業員がどんどん引退していくことを考えると、「人間でなければできない作業」と「人間でなくてもできる作業」とを分けて考え、後者にはロボットを活用していくのは自然の流れだと考えております。
弊社は他業界とも協業することで、建設現場を魅力あるものに変えていきたいと考えております。

坑内の切羽画像を撮影中の「Spot」

「Spot」が土木工事現場で果たす役割は現状、まだそれほど大きいものではないとみられる。
ただ、メリットの1つとして「建設のイメージを一新することができるかもしれない」としていたのは印象的だった。
ロボットとの協働で、人手不足を解消するだけでなく建設現場を魅力あるものにしていくことができるのか今後も注目だ。

(画像提供:鹿島建設)