東京池袋で「ロボットが接客を担当する酒場」がオープン

居酒屋の養老乃瀧とロボットに関する各種サービスを行うQBIT Roboticsは、JR池袋駅南口にある「一軒め酒場 池袋南口店」の一画(約1.5坪)を用い、ロボットが注文を受けドリンクを作り提供するスペース「ゼロ軒めロボ酒場」を1月23日にオープンした。

「ゼロ軒めロボ酒場」が実施される「一軒め酒場 池袋南口店」の様子。 画像提供:養老乃瀧
「ゼロ軒めロボ酒場」が実施される「一軒め酒場 池袋南口店」の様子。 画像提供:養老乃瀧
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協働型アームロボット1体がQRコードリーダーとドリンクサーバーを設けた特別なカウンターにて、注文を受けてメニューを提供するまでの接客を一貫して担当するという。

ドリンクメニューは「ロボ生ビール」「スコッチハイロボール」「ロボレモンサワー」「白加賀でつくったロボ梅酒ソーダ 」「ロボと泪とカシスとソーダ」「桃色ロボ想い」の6種類で価格はいずれも1杯500円(税込)だ。

「ゼロ軒めロボ酒場」の設けられた一画。画像中央のロボットがドリンクを調製し、提供してくれる。
「ゼロ軒めロボ酒場」の設けられた一画。画像中央のロボットがドリンクを調製し、提供してくれる。

「酒場」のロボットに接客してもらった

ただ、こう言われても、ロボット1体で全てを行うとはどういうことか、なかなか想像しにくいのも確か…。というわけで、編集部が「ゼロ軒めロボ酒場」に足を運び、実際に体験することにしてみた。

「一軒め酒場 池袋南口店」前に到着すると、外にはこんな看板が。
「一軒め酒場 池袋南口店」前に到着すると、外にはこんな看板が。

1. ドリンクの注文チケット発行 ※今回はテスト店舗のため、券売機ではなく、店舗レジにて従業員が販売

チケットを店舗のレジで店員から購入。気分的に「白加賀でつくったロボ梅酒ソーダ」にしてみる。
チケットを店舗のレジで店員から購入。気分的に「白加賀でつくったロボ梅酒ソーダ」にしてみる。

2. チケットに印刷されたQRを、「ロボ酒場」のカウンターにあるQRコードリーダーにかざす

「ロボ酒場」のカウンターに設けられたQRコードリーダーにチケットをかざせば注文完了。
「ロボ酒場」のカウンターに設けられたQRコードリーダーにチケットをかざせば注文完了。

3. ロボットが注文を認識しドリンクを調製

アームが早速コップをつかみ、ドリンクサーバーから注文のドリンクを用意。てきぱきとした動きで調製作業を開始する。
アームが早速コップをつかみ、ドリンクサーバーから注文のドリンクを用意。てきぱきとした動きで調製作業を開始する。

4. 客に取り出し口からドリンクを提供

調製完了後、手前の取り出し口からドリンクを提供。美味しい梅酒を一杯いただきました!
調製完了後、手前の取り出し口からドリンクを提供。美味しい梅酒を一杯いただきました!

QRコードリーダーにチケットをかざしてから、ドリンクが取り出し口に用意されるまで約100秒ほど。ドリンクの味については、人間の作ったものと変わらない。

そして、近くに飲むスペースがあり、コップを傾けているうちにも、ロボットがこちらを向いて「『ロボ酒場』、張り切って営業中です」「あと一杯だけどうですか?」と話しかけてきて、「どれどれ、ではもう一杯…」という気分にも思わずなる。

さらに、このロボットは、客の性別、年齢、表情などを識別するカメラと連携し、AIを用いて適切な話しかけや動きを行うよう設計しているそうで、現場で得た成果を学習しつつ、接客スキルを日々向上させていくのだという。

今回の店舗では、ドリンクを受け取った後は「一軒め酒場」と仕切りはなく、店舗内のどこで飲んでもよく、食べ物のオーダーは「一軒め酒場」の店員が行うため、あくまで6種類のドリンクの注文から提供までをロボットが担当する。

「ロボ酒場」での実験について、両社は「 外食業界で深刻化する人手不足の解消のため、人とロボットが協働できる現場オペレーション開発のために行う、居酒屋におけるロボット運用の実証実験」だとしている。

大変興味深い試みだが、「ロボ酒場」で人間の役割は何かあるのか? また、酒場だけに酔っ払い客への対策はどうしているのか?
養老乃瀧の広報担当者に聞いてみた。

16時間稼働のうち、人間が関わる仕事は計1時間程度

ーー今回の実験はいつ頃から計画されていた?

2018年10月、QBIT Roboticsさまより「『&robot café system』(QBIT RoboticsがUCCとタッグを組んで2019年6月に販売開始している、専用のカウンター筐体、アームロボット、カウンターなどを組み合わせたカフェ用システム)を居酒屋に転用できないか?」といったご提案をいただき、今回の企画がスタートしました。

ーー「ロボ酒場」で人間が行う作業は何がある?

店舗レジでのチケット販売のほか、開店閉店における電源のオンオフや清掃、ビールなどの食材補充については、人の手が必要になります。これは0.1人/日、合計1時間程度にあたります。

ーー営業中、フロアにはロボットしかいない?

既存店舗の一画を使用した運用になりますので、従業員は店舗におります。しかし、実際にオーダーを受け、ドリンク作りを行うのはロボットです。

ーー営業時間が8時~24時の長丁場だが、ロボットの機体やバッテリーの交換はどうする?

店舗備え付けのロボットであるため、バッテリー交換などはありません。

ーー酒場だと酔ったお客さんもいると思うが、どのような対策を考えている?

安全面を配慮し、ゼロ軒めロボ酒場をアクリルボード(透明)で囲っているため、お客さまがロボットに直接触れられない仕様となっています。

ーーロボットの導入によって、どの程度の人手不足解消になると考えている?

こちらは、「人手不足解消にどこまで有効か」を測るための実証実験であるため、現時点では何名かは分かりかねます。

客の「笑顔」と店舗の「売上」貢献がロボットの学習ポイント

ーー接客について、ロボットはどんな話しかけを行ってくれる?

一例としては、「『ゼロ軒めロボ酒場』へようこそ! 私がドリンクをお作りします」「いらしゃいませ、お兄さんのご来店をお待ちしておりました」などになります。

ただ気を付けたいのは、カメラと連動し、お客さまの性別や年齢、表情を認識し、お客さまに合わせて言葉を発しますが、これはあくまで話しかけであり会話ではないことです(ロボットにヒアリング機能はなく、その場の状況を見て接客するよう設計されております旨、ご理解ください。お客さまが手を振ったことをカメラで認識し、ロボットが手を振り返すといった反応は行うことができます)。

ーー接客を学習するそうだが、ロボットの接客における評価軸を教えて。

先ほどの話でも触れましたが、ロボットはカメラと連携し、接客中や接客後におけるお客さまのリアクションをデータ化しています(個人情報は当然対象外です)。

お客さまの「笑顔」と店舗の「売上」貢献を評価ポイント(接客の良し悪し)とし、日々学習することで、ロボットが良い接客を学び続けるよう設計しています。

完全な「ロボ酒場」は「今回の実証実験次第」

ーーメニューはドリンク6点だが、料理などは現在予定していない?

あくまでも現状はドリンクのみです。

ーー実験の進捗とロボットの学習成果次第では、提供できるメニューが増える?

メニューについては、実証実験結果を踏まえて今後検討する運びとなります。

ーー実験の結果を活かして、完全な「ロボ酒場」を作る予定はある?

現時点においては、今回の実証実験次第です。


今回の「ロボ酒場」は、3月19日までオープン予定(営業時間:8:00~24:00 ※ラストオーダー 23:30)。
人手不足解消に向けたロボットとの協働がうまくいくのか、興味のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。


画像撮影(「一軒め酒場 池袋南口店」を除く):編集部


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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。