去る2020年2月26日、東京・天王洲のTMMTで開催されたテックカンファレンス「TOAワールドツアー東京」
毎年、夏にベルリンで開催されるTOA(Tech Open Air)の日本版で、当日はヨーロッパと日本から参加したスタートアップ企業が次々とプレゼンを行った。
イベントを貫くコンセプトの一つが「サーキュラーエコノミー(循環型社会)」。環境に配慮した持続可能な仕組みを構築し、かつ、ビジネスとしても急成長中の事例が紹介された。
その中でも、一般的に環境汚染への影響が大きいとされるファッションの分野で2009年に創業した、スペインのブランド「ECOALF(エコアルフ )」の取り組みをレポートしたい。
この日、スペイン・マドリードに本社を置くファッションブランド「エコアルフ」のプレゼンテーションを行ったのは、株式会社三陽商会、新規事業ビジネス部の井手マリャムさん。
エコアルフと三陽商会はパートナーシップを組み、3月にアジア初出店となる「ECOALF 渋谷」を渋谷・キャットストリートにオープンした。
商品をプレゼンしない
エコアルフのプレゼンテーションはユニークで、まず、環境問題の啓蒙から始まる。
「海洋ごみの90%はたった10の河川から流入している」「海に流れるごみは1分間に収集車1台分。このプレゼン(10分間)の間にも、新たに10台分のごみが海に流れている」「2050年には海のプラスチックが魚の量を超える」といった具合に。
そしてファッションは環境汚染度の高い業界であるとし、これまでは天然資源を原材料に用い、製造、利用、廃棄まで一直線だった構造をあらため、循環型モデルを構築する取り組みを紹介した。
海洋ごみを「アップサイクル」
その一つが「UPCYCLING THE OCEANS」。「アップサイクル」とは、もともと使っていたものを回収し、手を加えて、価値を高めて再資源化すること。たとえば、海底には65万トンに及ぶ漁網が廃棄されており、それらは非常に強度の強いナイロンで出来ている。漁師が一度は海に捨てたその漁網を、漁師と一緒に再び回収し、新たな繊維素材を開発している。
エコアルフの店舗を訪れると、入り口すぐにずらっとスニーカーが並ぶ。これらの一部は実際に「UPCYCLING THE OCEANS」を通じて開発された素材で作られている。
商品タグには、リサイクル素材の詳細を記載。購入者は自らのアクションが循環型社会に貢献している事を実感できる。
「UPCYCLING THE OCEANS」は、国ごとに活動しており、スペイン、タイに続き、日本での展開が正式にアナウンスされた。現在パートナーとなる企業・団体・個人を募集している。
第2の地球はないのだから
エコアルフのブランドメッセージは「Because there is no planet B(第2の地球はないのだから)」。
そのコンセプトに共感した人が商品を購入し、また商品を購入する事で地球環境を守るという自らの意思表明にもなると言う。
店舗では今後「ACT NOW」と称し、地球環境について考えるトークイベントを随時開催予定である。
しかし日本は諸外国と比べて、まだまだ環境問題への意識が低く、企業もまずは利益を第一としているかもしれない。
渋谷店オープンにあたり店舗を訪れていたエコアルフ創業者のハビエル氏(ハビエル・ゴジェネーチェ Javier Goyeneche)に問いかけると、意識が低いのはあなたたちメディアの責任だよ(笑)と鋭いジャブを入れながら答えてくれた。
「今は15年前と比べて情報が増え、我々は地球でいま何が起きているのか、多くの事を知っている。
その上で我々の選択肢は二つ。
あたかも何も起こっていないかのように、手遅れになるまでスルーし続けるか、今すぐ行動するか。我々は行動する事を選んだ。
若い人たちはより多くの事を知っている。なので(地球環境を守るために)行動する事を選んだ企業を、若者たちも選択している。
そして大切な事は教育。どんな地球を子供たちに残すのか、そして「どんな子供たち」が地球を残していくのか。
地球環境が悪化したら、ビジネスだってうまく行かない。
アメリカで有数の投資会社ブラックロックのCEOは、これからは環境を意識している会社にしか投資しないと言っている。彼は正直者で、決して環境活動家だから言うのではなく、ビジネス的にも成果が出ないからであると。
ビジネスパーソンが環境に無関心だとしても、地球が正常に動いていなければ、ビジネスが出来ないのだから。」
(関連情報)
エコアルフ(ECOALLF)公式サイト
TOAワールドツアー東京公式サイト