「アメリカの住宅にイノベーションを起こす」

学生時代に起業。SONY、楽天を経て、2016年に再びスタートアップの道へと進んだHOMMA.incの本間毅(ほんまたけし)CEO。

室内の照明や空調、家電などの機器を一元管理する「スマートホーム」技術を提供するだけでなく、住宅そのものを建設して販売する、垂直統合型のビジネスで市場に参入する。

大手企業は年間売上1兆円を超えるアメリカの住宅業界。「100年イノベーションが起きていない」と本間氏は言う。日本発のスタートアップがこの巨大市場で成功できる勝算とは、一体どのようなものだろうか?

普段はシリコンバレーを拠点とする本間氏に、東京・千駄ヶ谷でインタビューの機会を得た。

――今月、カリフォルニア州ベニシア市にて、スマートホームを実現したプロトタイプ住宅「HOMMA ONE」を発表されました。HOMMAの事業としてこの「ONE」は、どのような段階なのですか?

スマートホーム機器が組み込まれたプロトタイプ住宅「HOMMA ONE」

位置付けとしてはプロトタイプ住宅です。もともと私は「人の生活を未来にしたい」というゴールを決めて会社をスタートさせていて、0から100を作るロードマップを引いたんです。

前回の「HOMMA ZERO」はリノベーションだったのですが、今回は初めて住宅を設計してテクノロジーもそれに向けて作りました。テクノロジーはまだまだこれから進化していくのですが、まずは最初の第一歩です。

――「HOMMA ONE」では、どのような仮説検証を行うのでしょう?

まず第一に、これまでスマートスピーカーのようなIoT機器はそれぞれメーカーも異なり個別にログインしていた訳ですが、今回は機器を最初からビルトインして、全部まとめて動作する「スマートオーケストレーション」という機能を実装しました。それが本当に良いものかどうか。

そしてもう一つは、キッチンや空調など様々な箇所で日本の住宅関連プロダクトを導入しているのですが、それらがアメリカの方々にどのように受け止められるかを検証します。

照明や空調を自動で最適化

スマートオーケストレーションについて補足しますと、例えば一つ一つの操作をスマートスピーカーに話しかけるのは、便利な時もありますが、煩わしくなる事もありますよね。

今回は、照明、温度、空調、ドアのロック、それらを一つのソフトウェアで繋げて、人間のいる場所や動きを理解して、自動的にコントロールする。家の中の環境を自動で最適化する事を目指しました。

――アメリカの巨大な住宅産業に日本のスタートアップが挑戦するという事で、正直に申し上げますと、そんなにスケールの大きな事が実現可能なのだろうか?と感じます。どのような勝算があるのですか?

我々のアプローチは極めてユニークで他に類を見ないやり方なんです。

と言いますのは、二つの異なったビジネスを、一つの会社の中でやっています。

一つは、建売事業として、土地を買い、家を設計し、建設して、販売する。これは極めてトラディショナルです。そしてもう一つは、先ほどのスマートオーケストレーションなどを実現していく、サービスやプラットフォーム開発の事業。

たとえば積水ハウス・大和ハウスとマイクロソフト・IBMが別の会社であるように、従来、住宅とテクノロジーは別の会社だった訳です。「垂直統合のイノベーション」と呼んでいるのですが、この両方を一社で行う事で、大きな流れを作り出していきます。

AppleはiPhoneを作る時にハードウエアとOSやアプリストアを垂直統合する事で、完成度の高いプロダクトを作りました。テスラも同様ですね。

そもそも「勝つ」とは何?という話なのですが、アメリカで一番大きな建売業者は年間1兆円くらい売上があります。それを作れるんですかというと、もちろん不可能とは言いませんが、物理的な時間や資金が必要です。

なので我々はそこで勝つというより、まずはこの垂直統合のアプローチで家という存在をイノベーティブにして、唯一無二の存在になる。これが実現できれば我々の価値になり、あとはその先の成長戦略をどうするかなんです。

自社のブランドを強化して、UX(ユーザー体験)も一定の完成度まで達したら、他社のビルダーさん、デベロッパーさんにライセンス提供しながらアメリカ市場を拡げていきます。最終的にはアメリカと日本、新築と既存住宅の四つのターゲットに展開するつもりです。

――このようなビジネスを、なぜアメリカの方がやらないのでしょう?

私はアメリカに住んで12年になりますが、生まれ育ったのは日本で、日本の住宅に対する理解があります。一方で当たり前ではありますが、アメリカで生まれ育った方は、それ以外の事はほとんど知らない訳です。

私かこちらに来て思ったのは、なぜiPhoneやテスラを生みだすシリコンバレーの住宅がこんなレベルなんだろう?と。まったくイノベーションが起きていないし、何かおかしいんじゃないか?

普通だったらそう思って終わるところかもしれませんが、私自身グローバルビジネスの経歴もあり、何より自分が住んでいるから変えたい。日本人だからこそ知っている住宅設備、商品、建材などを持ってきて、自分にしか出来ないやり方をすれば、成功のチャンス、アメリカの生活を未来にしていくチャンスがあるのではないか、と考えました。

――シリコンバレーに移り、SONY、楽天というキャリアの中で、UberやAirBnBなどの創業メンバーともお会いされていますが、仕事に対する価値観の変化はありましたか?

そうですね、ちょうどUberやLyftとかAirBnBのような会社がどんどん出てきて、生活に密着するようなサービスを作り、業界が大きく変わりました。たかだか10年も経たないうちに、旅行やホテル業界を震撼させたり、各種業界を潰したり。

それで、どんな人たちがやってるかと言うと、みんな若い兄ちゃんです。私もコンタクトしてパーティーやビジネスミーティングで会うのですが、もちろんすごい人でユニークなんだけれど、そこまで違う人間でもない。

逆に言うとスタートアップのアプローチや実際に形にしていくやり方が、人の生活をこんなにも変えていくんだなと。それで私自身もスタートアップが持つポテンシャルを発揮すれば、世の中を変えていけるんだと思っちゃいました。

私は学生時代に一度起業しているので、どれだけ大変か分かってるんです。何かモノの本で読んだからシリコンバレーに憧れているとか、むしろ全然なくて。だから大変でもチャレンジする価値があるかすごく考えましたし、やっぱり彼らをリアルで目の当たりにしたのは、インパクトというか、自分にも影響はありました。

――最後に、今後について教えてください。「ONE」の次「X(テン)」ではどんな展開を?

18ユニットのタウンハウスが、おそらく来年の後半には出来上がります。その時は本格的な勝負かなと。18家族のお客様でコミュニティが生まれる事で、新たな価値を創出できます。共有部分へ様々なサービスをサブスクリプションで提供することにもチャレンジしていきたい。

今回のコロナショックで、仕事や生活の本来のあるべき姿を考える時間ができましたよね。満員電車に1時間乗って通勤する事が幸せなのだろうか、オフィスで仕事をする事が大事なのだろうかと。

例えば東京に月1回行けば良いのであれば、生活を都市に集中する必要もなく、地方がバリューを出せる時代になってくる。

ただしどこでも良い訳ではなく、家の周りである程度の事が完結できる環境があった上で、ご飯が美味しくて物価が安くて東京より4倍の広さですよとなったら、そっちへ行くというような。

なので「家」だけをスマートにするのではなく、スマートタウン的な考え方を地方で展開してみたいなと思うのです。

この3か月で実際に移住する人もちらほら見かけました。

海で魚を釣ってきて、美しい星空を眺めながらバーベキューをして、ゆっくり眠りについてっていうのが日常でも、それはそれでいいんじゃないかと思うんです。
 

本間 毅(HOMMA, Inc. Founder & CEO)