新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人が集まるようなサービスを扱う業界が打撃を受けている。特に影響が心配されるのが、「スポーツジム」をはじめとするフィットネス業界だ。

トレーニングマシンなど共用で使う器具が多く、利用者同士が長時間同じ空間にいる可能性も高い。実際に、千葉県などでは感染者がスポーツジムを利用していて、他の利用者が濃厚接触者となってしまったケースも起きている。
 

“新型コロナ”対策のガイドラインが公開

こうした状況を受けて、一般社団法人・日本フィットネス産業協会は3月3日、フィットネス関連施設の利用者、指導員、関係者に向けた「フィットネス関連施設における新型コロナウイルス対策のガイドライン」を協会のウェブサイトで公開した。
 

日本フィットネス産業協会のウェブサイトより

ガイドラインではまず、次の症状の該当者に施設利用の自粛を呼びかけている。

・風邪の症状(くしゃみやせきが出る)や 37.5 度以上の熱がある人
・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさがある人
・せき、たん、胸部不快感のある人
・糖尿病、心不全、呼吸器疾患の基礎疾患がある人や透析を受けている人
・免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている人
・同居家族や身近な知人に感染が疑われる人
・そのほか、新型コロナウイルス感染可能性の症状がある人
・過去14日以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要と発表されている国や地域への渡航、並びに当該在住者との濃厚接触がある人
・過去14日以内に、感染者が発生した観光クルーズ船から下船した人
・地域で学級(学校)閉鎖などが行われた場合、幼児・学童・学生(18歳未満)全員
 

(ガイドラインより)

これと合わせて、施設側には地域で学級閉鎖などが行われた場合、18歳未満を対象とした教室やイベントは休講するように指示。18歳以上が対象でも、多くの人が集まるようなイベントは中止、延期するとしている。
 

利用者同士の間隔を最低でも2メートル確保

施設側には加えて、施設内における清掃・除菌の徹底などを呼び掛けている。

その詳しい内容を見ると、更衣室や手洗い場においては、水道やトイレ、出入口のドアノブなど、不特定多数が触れる箇所の巡回清掃を徹底。最低でも、2時間に1回の清掃を求めている。
 

更衣室などは特に清掃・除菌を徹底するという(画像はイメージ)

トレーニングジムでは、利用者同士の間隔を最低でも2メートル確保するように呼びかけていて、トレーニングマシンの設置間隔を広げたり、一部機器を使用禁止とするなどしても、対応するように求めている。

また、集団感染を防ぐために、マシンの汗拭き用タオルを使い捨て可能なペーパーなどに代替することや、利用者にマシン利用後は必ず備え付けのペーパーと消毒薬でのふき取りを実施すること、指導者にマスク着用を徹底することも推奨。
集団が集まるスタジオレッスンはしばらくの間は中止とするほか、実施する場合も18歳以上限定とすること、利用者同士の間隔や換気を徹底することなども定めた。
 

(ガイドラインより)

ガイドラインにはこのほか、施設スタッフ全員には、出社時と退社時の体温チェックとその結果を記録することを指示、体温が37.5度以上の場合は即座に出勤停止とするという。
また、もしも感染者とみられる人に接触した場合、感染者と同時間帯に利用していた人への連絡や情報収集が必要になることなど、有事の対応なども記されている。
 

(ガイドラインより)

実際のガイドラインを見ると、利用者からスタッフまで、幅広い関係者に呼びかける内容となっている。それではなぜ、このタイミングで策定したのだろうか。

日本フィットネス産業協会の担当者にポイントなどを伺った。

「スポーツジムだけが、感染源のようにされている」

――なぜガイドラインを策定して、公表したのか?

新型コロナウイルスをめぐる対応に関連した、複数の理由があります。
一つは、全国の公立学校に臨時休校の措置がされたことです。フィットネス施設はスイミングや体操の教室など、子供たちが利用する機会が多いので、業界として対策する必要があると考えていました。

もう一つは、政府が避けるべき場所として「スポーツジム」という言葉を使われたためです。政府からは「密閉されて換気が悪く、不特定多数の人が集まる場所」として名指しされましたが、フィットネスクラブはそのような場所ではありません。

換気はきちんとしていますし、個々の会員情報は適切に管理され、誰がいつどの施設を利用したかまで追跡もできます。スポーツジムでの感染が報告されたのも、利用者の情報がきちんと管理されているためです。

スポーツジムだけが、感染源のようにされている状態があるので、感染防止や衛生面の管理を改めて徹底することにしました。そしてエクササイズの場所に悩む人を出さないようにしたいと、ガイドラインとして公表させていただきました。


――フィットネス業界において、新型コロナの流行はどう影響している?

数字上ではお伝えできませんが、休会や退会が増えていて、想像しがたい影響が出ています。利用者が減ったり、集団レッスンの機会が減るとインストラクターの出番の少なくなるので、そちらの休業補償もしています。

既に一時休業した店舗もあり、この状態が続くと閉店が続出する恐れがあります。閉めろ、行くなと言われる人もいますが、それはできない状況なのです。
 

(画像はイメージ)

スタッフからの感染はあってはならない

――ガイドラインで特にポイントと考えるところは?

新型コロナウイルスにおいては、スタッフから利用者への感染などが決してあってはならないので、衛生管理と注意喚起を徹底しております。

大きなポイントは、感染している可能性のある人間は、利用者・スタッフを問わずに施設には来ていただかないことです。そのため、スタッフも体温管理などを徹底して感染の疑いがあれば、即座に出勤停止とさせていただきました。

このほか、衛生管理や消毒の徹底して、安全にエクササイズできる場所を提供できればと考えております。この方針は当協会に加盟する、約3500施設で徹底しますが、加盟外の施設にもご共有いただければと考えております。


――フィットネス施設の関係者に呼びかけたいこと

当協会にとって、運動場所を提供することは社会的使命だと考えております。万全の体制で衛生管理に努めますので、利用者のみなさまも感染が少しでも疑われる場合は利用を控えていただくようにお願いします。エクササイズを望まれる人が安心して利用できる場所にしていただけるよう、お願いいたします。


フィットネス関連施設では、既に感染対策をしているところもあるが、対応は施設ごとで違っていたりもした。
(関連記事:感染者が同じ「スポーツジム」を利用…各社の新型コロナ対策を調べてみた

今回のガイドラインはその部分を統率して、施設を安全に運動できる場所にしたいという狙いがあるようだ。
利用者にとっても、どこにも行けず体を動かしたくてウズウズしている人にとっては少し安心材料にはなるだろう。新型コロナは様々な業界に影響を及ぼしているが、フィットネス関連施設はこのまま自粛ムードが長引くと経営的なダメージが避けられない業界の1つとなってしまっている。
 

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