東南アジアのマレーシアで新型コロナウイルス感染者数の急増が止まらない。

3月20日には新たに130人増えて、ついに1000人を突破した。感染者の半数以上は首都クアラルンプールのモスク(イスラム教礼拝所)で行われたイスラム教のイベントが原因だった。多くの外国人や不法移民が参加していたため、当局による追跡も難航している。

集団感染の現場となったスリ・ペタリンモスク(クアラルンプール市内)

マレーシア“封鎖”直後の3月19日、FNNのカメラマンが集団感染の現場となったモスクを訪れると、宗教団体の広大な敷地は完全に封鎖されていた。クアラルンプールにあるスリ・ペタリンモスクで2月27日~3月1日、イスラム教の団体「ジャマアト・タブリーグ」による集会が開かれた。国内外の1万6000人が参加した大規模イベントだったが、後に集団感染が発覚した。

マレーシア当局が20日までに把握した国内感染者1020人のうち、624人が集会参加者だと判明。6割以上が当該イベント関連で、事態は深刻だ。

なぜこんなに拡大したのか?

イスラム教の集会でなぜ大規模な集団感染が発生したのか。

当時のモスク内の写真からは、数百人のイスラム教徒がひしめき合い、肩を寄せ合いながらお祈りをする様子が見て取れる。イスラム教徒は集団礼拝の際、悪魔が入り込まないように信者が密着しながら礼拝を行う。また信者たちは4日間にわたり寝食も共にし、食べ物のプレートを複数人で分け合って手づかみで食べていた。

相当数の信者が、密閉された空間内で濃厚接触状態に置かれていたため、新型コロナウイルスは爆発的に感染拡大した。

狭い施設内で密集する信者たち Facebookより

東南アジア各国に拡散中

このイベントにはマレーシア以外の東南アジア各国からも信者が集まっていた。参加者は母国に帰国後、相次いで新型コロナウイルスに感染していたことが発覚している。

3月20日までに、少なくともブルネイで60人以上、カンボジアで20人以上、インドネシアで13人、タイで8人、シンガポール5人の感染が確認された。各国はイベント参加者を必死で追跡している。

マレーシア当局が抱える難題

マレーシア当局も国内の参加者を追跡中だが、大きな課題が立ちはだかっている。それは参加者のうち約2000人が、国内に滞在する不法移民だったとみられるからだ。

マレーシアには、ミャンマーのラカイン州から逃れてきたイスラム教少数ロヒンギャが10万人以上住んでいるとみられる。そのロヒンギャがイベントには約2000人参加していた。彼らのほとんどは不法滞在者であるため、たとえ新型コロナウイルスに感染し発症したとしても申告する可能性は低い。なぜなら不法移民として当局に摘発されるリスクがあるためだ。また、正確な住所などを把握するのも難しいため、追跡は難航している。

他の場所でも大規模集会が…

マレーシアで集団感染を引き起こしたイスラム教団体「ジャマアト・タブリーグ」は、集団感染発覚後も、別の国で大規模集会を開こうとしていた。

インドネシア・スラウェシ島には18日、「ジャマアト・タブリーグ」が企画した宗教イベントに参加しようと約9000人もの信者が集結した。スラウェシ島の地元当局はイベント中止の判断を下したものの、現地には既に大勢の信者が集まり、濃厚接触状態となってしまっていたため、判断は遅きに失した。感染者が仮にいた場合は、集団感染に発展するリスクが高い。

集団感染が発生した韓国「新天地イエス教会」

韓国では新興宗教団体で集団感染が起き、感染者が急増した。東南アジアでも既に宗教イベントが原因で集団感染が発生しているが、一方で現在も金曜礼拝など人が多く集まる行事を続ける国もあるため、集団感染が再び起きるリスクが存在している。

【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】