“来年春に再び感染広がり1~2年続く可能性も”上海の専門家が警告

「感染は1~2年続く可能性もある」复旦大学付属華山医院感染症科の張文宏医師(ウェイボより)

上海の复旦大学付属華山医院感染科の主任で、上海の感染対策の責任者の一人である張文宏医師が、新型コロナウイルス感染の収束の見通しについて、3月17日の会議で語った内容を中国メディアが報じた。東京五輪の延期が現実味を増す中、ある程度感染を抑え込んだ中国の専門家の、長期的な予測を紹介する。

張医師は世界的な感染について「4月から6月にかけピークが出現し、夏にはある程度抑えられるだろう」とした。そして、夏が過ぎれば感染者は減ってゆくとしたが、「冬になり、来年春になると再び小さなピークが来るかもしれない。」と予測した。その後は、「徐々に収まってゆくが、北半球が夏でも南半球は冬で感染が行き来することになり、感染が1~2年続くのは正常なことだ」と指摘した。

ネットには「2年も続くのか」「2年なら北京冬期五輪は中止か」と不安の声もあがる。ただ張医師は、あらためて世界各国が協力すべきだと強調する。「どの国家も自分たちだけがうまくいくのではない。世界で感染が収まるには、対策がうまく出来る国ではなく、うまく出来ない国が抑えられるかどうかで決まる」として、世界中が対策強化する必要性を訴えた。

一方、中国の状況については、感染の押さえ込みに勝利したとしながらも、海外からの感染の流入を防ぐ必要があると強調。安全になった目安として「2週間続けて新たな感染が発生しなければ相対的に安全になったと言える」と指摘した。

海外からの感染の逆流入を警戒する中国政府(ウェイボより)

また張医師は別の会合でワクチンについて触れ、「いずれ出来るが時間がかかる。今年は、ワクチンが出来ることを期待して必要なことをしないことが最も危険だ」と、まず目の前の対策に力を入れるよう訴えた。

張医師は、堅苦しい説明をする専門家とは違いはっきりとものを言い、説明も上手いと中国人に人気がある専門家だ。ネット上には「他の専門家は信じないが、彼の言うことは信じる」というコメントも多い。

中国の援助隊がイタリア人に“説教”も

張医師の「対策がうまく出来ていない国がどうするかで感染の収束の行方が決まる」という指摘は、多くの中国人も感じていると思われる。ヨーロッパやアメリカで爆発的に感染が拡大する中でも、多くの人がマスクをせず外出する様子を「信じられない」と驚き、心配する。

イタリアでは、応援に入っている中国の専門家チームが記者会見の際、市民に対し“説教”する異例の場面まであった。ミラノに入った調査チームは、会見で「ミラノは状況が深刻な街なのに、感染対策はとても緩い。バスは走っているし、人は歩いているし、人々はホテルで集ってパーティーしているし、多くの人がマスクをしていない。皆さんがいったい何をしたいのか私には分からない!」と注意した。

外出している人に注意を促す警察官(ローマ)

イタリアではおよそ6万4000人が感染して6000人以上が死亡し、医療崩壊も起きている。都市封鎖する事態になっても、外出する人もいることには、厳しい対策をとってきた(強いられてきた)中国人からすると、「なぜ???」となる。専門家チームは、「政府と医療関係者の努力だけでなく、全ての市民が自覚し、命を守るために必要な措置をとらないといけないのです」と強調した。

「あなたたちは何がしたいのか」中国の専門家チームはイタリアのゆるい感染対策を批判(ウェイボより)

ネット上には「彼らが自分の命が惜しくなければどうしようもない」「文化の違いだし言っても仕方がない」「中国人は自分に何が出来るか考えるが、外国人は遊べるかどうかを考える」などの声があがる。

また、中国では、イタリアの地方都市の市長が「外出しないで!何百人も死んでいるんだぞ!」と激しい口調で市民に呼びかける映像や、別の市長が自ら公園に出向き、集っている市民に「緊急事態だ、休みじゃないよ、家に帰って」と説得してまわる映像などもネットで話題になっている。ただ、 「市民に注意している市長がマスクしていない」「ドローンで呼びかければ」などツッコミ殺到だ。

上海の企業に務める中国人も、「上司がオーストラリア人だがマスクをしない。職場でも多くの人がマスクをしないので自分が着けづらい」「欧米人の子供たちももうマスクをしていない子がいる」「彼らは自信があるようだ」などと、世界は本気で感染対策をしようと思っているのか?と感じている人は少なくない。「日本や韓国は比較的対策しているが、アメリカやヨーロッパはダメだ。これではなかなか収まらない」とあきらめの声も聞く。

本当に1年から2年、収まらないこともあるかもしれない、、、と感じるところはある。

延期可能性が高まる東京五輪 本当に感染が1~2年続いたら・・・

「オリンピック延期についての判断は日本政府とIOCが行うことだ」と発言するWHOのライアン氏

ところで東京五輪は、延期の可能性が浮上し、今年夏の開催が難しい状況になってきたが、延期が数ヶ月でも1年でも、上海の張医師が指摘するように来年春にまた感染のピークが現れたら、1年後も今と同じように「夏に開催出来るのか?」と悩む状況になる。そうなれば、いつに延期しようが、感染が本当に収まらなければ最悪中止という結論も出てくるかもしれない。

現状は世界の多くのリーダーが「戦争」とまで表現する異例の事態だ。オリンピックのためかどうかは人それぞれだが、経済的な影響を抑えるためにも、収束を目指してあらためて感染対策に真剣に取り組む必要はあるだろう。ようやく感染を抑え込んだ中国は、今もあらゆる場所でマスク着用を求めている。それは、感染者にカウントされない“無症状の感染者”が他人にうつすリスク”を認識しているからで、再拡大を防ぎたいからでもあるだろう。日本や各国は、“対策がうまく出来なかった国”とならないように、出来ることをやるしかない。

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執筆:FNN上海支局 城戸隆宏