今の相撲界は誰が主役になってもおかしくない。

2月9日放送の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、埼玉栄高校の先輩後輩である貴景勝と大栄翔、同じ九州出身の松鳳山と正代、小学校から付き合いのある炎鵬と輝、正代と同じ部屋の豊ノ島といった人気力士が登場した。

 
 
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正代の地元は大フィーバー

令和2年の初場所は、白鵬と鶴竜の2人の横綱が不在の中、優勝争いはまれにみる混戦状態を経て、千秋楽に優勝の可能性が残っていたのが徳勝龍と正代。

運命の千秋楽の1日を番組では正代の故郷・熊本で密着した。

地元の体育館には正代の父親をはじめ、約200人が集まり、手作りの正代グッズで声援を送る。地元のメディアの取材も殺到し、まさにお祭り騒ぎ。近所のおじさんは、正代が勝利したら打ち上げようとしている“祝砲花火”まで準備していた。

一方、正代が所属する東京の時津風部屋では、優勝したら正代が掲げることになる鯛を準備。一匹7キロもある鯛が全部で5匹も用意されていた。

2敗の正代が逆転優勝するためには千秋楽の御嶽海に勝ち、1敗の徳勝龍が貴景勝に破れるのが絶対条件。その上で、徳勝龍との優勝決定戦に勝利しなければならない。絶対に負けられない御嶽海戦では、力強い相撲で豪快に押しだし、逆転勝利に望みをつないだ。

そして千秋楽・結びの一番で優勝争いトップの徳勝龍の相手は大関・貴景勝。正代が優勝するためにはここで貴景勝の勝利が絶対条件になるが、徳勝龍が勝ったことで優勝が決まり、残念ながら正代の初勝利にはならなかった。

 
 

スタジオでは相撲好きのはなわさんが「あの鯛、どうなったんですか?」と疑問をぶつけると、正代は「僕が部屋に帰る頃には刺し盛り、次の日は鯛飯になっていました」と話す。

地元の盛り上がりについて正代は「驚いたのが、パブリックビューイングが設置されていたこと。前の日に親から連絡が来て『見に行くよ』と言われていたんですけど、親父がパブリックビューイングで映っていたのでなんで来てないの?と思いましたね。母は来ていたんですけど…」と苦笑した。

一方、優勝した徳勝龍も身の回りに小さなフィーバーが起こったといい、「場所が終わって月曜日に昼ご飯をまぁまぁ行くところに食べに行ったんですけど、初めてサイン書いてくださいと言われました。まぁまぁ行っているんですよ!」と笑った。

白鵬の“引退宣言”にプレッシャー

 
 

今、相撲界を盛り上げるイケメン力士・炎鵬。彼の飛躍の裏には、横綱・白鵬からの驚きの一言があったという。

炎鵬が初の幕内力士として迎えた昨年の5月場所。9日目までに7勝をあげるも、その後は5連敗し、勝ち越しを決められないまま7勝7敗で千秋楽を迎えた。その相手が同じく7勝7敗の松鳳山で、こちらも絶対に負けられなかった。

互いに一歩も譲らず、48秒にわたる大相撲の末、敗れたのは炎鵬。精根尽き果てたのか、その場からなかなか立ち上がれずに、顔を土俵に付け倒れていた。

相撲ファンの間で伝説となったこの一番について、炎鵬は「泣いてないですよ、泣いてないですけど、15日間100%の力を出し切って、体力が1%も残っていない状況でした」と振り返る。

しかし、「泣いてないと言いましたが、帰りのタクシーでボロ泣きして。部屋に入ったら白鵬関に呼ばれて、怒られるのかなと思っていたら『幕内は甘くないだろう…』と言われて、『今のお前の力はこんなもんだ、俺が次の場所必ず勝ち越させてやるから、死ぬ気で稽古するぞ。もし、お前が負け越したら俺は引退する』と言ってくれて」と炎鵬は白鵬から驚きの言葉を掛けられたという。

そんなプレッシャーの中、迎えた7月場所で炎鵬は10日目で7勝をあげ勝ち越しにリーチをかけるが、その後3連敗して勝ち越しが危うくなる。この時、プレッシャーで押しつぶされそうだったという炎鵬だが、それから見事勝ち越し、白鵬の引退を防いだ。

力士たちのリフレッシュ法

 
 

厳しい稽古の合間、力士たちはどうやってリフレッシュをしているのか。

まずは、次世代を担う注目の力士、大栄翔。彼が稽古を終えて向かったのは、埼玉県朝霞市にある実家。2ヵ月ぶりの帰省の目的は、愛犬・タイニープードル「チロル」に会うこと。

土俵の上では闘志むき出しの大栄翔もチロルの前では満面の笑み。チロルとの出会いは今から3年前。休みのたびにペットショップ巡りをしていた大栄翔が越谷レイクタウンのペットショップで一目惚れしたことがきっかけ。

一人暮らしの部屋で飼い始めたものの、巡業で世話をする時間がなくなり、今は実家で飼っているという。

そんな大栄翔が最もリフレッシュできる時間はチロルとのお散歩。「癒やされますし、自分もいい運動になります。(チロルは)速いので頑張ってついて行っています」と楽しそうに話した。

 
 

現役関取最年長36歳にして通算700勝達成した豊ノ島のリフレッシュ法は、以前の放送でも紹介した家族とのカラオケ。

貴景勝は、鶴竜と豪栄道が恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」で盛り上がっていたことがきっかけで見るようになり、「ずっとハマってて。シーズン1から3まで全部見ました。いろいろな人間がいるんだな、と女の子も必死なんだなって。社会勉強になりました」と明かした。

貴景勝、ケガとの戦い…

 
 

昨年は大関に昇進後、さまざまなアクシデントに見舞われ、激動の1年を過ごした貴景勝。

初土俵から28場所での大関昇進は、日本出身の力士としては史上最速の快挙だった。

しかし、ここから貴景勝は茨の道を歩むことになる。

新大関となって迎えた5月場所4日目に右膝を負傷。診断の結果、下されたのは右膝内側側副じん帯損傷で全治3週間だった。

このケガにより5月場所を途中休場したことで、大関に留まるには7月場所に出場し、勝ち越すことが絶対条件となった。

当時の心境を貴景勝は「大関の役目も果たさないまま関脇に落ちるほど、無念なことはなかったし、それだったら7月場所に出て勝負したい」と思っていたというが、師匠の千賀ノ浦親方はまだ万全ではないため休場すべきだと考えていた。

7月場所が始まる2日前の取組編成会議までに協会に報告しなければならないため、2人は話し合いを行う。そこで出した答えは休場。それは同時に大関から関脇に陥落することが決まった瞬間でもあった。

貴景勝は次の9月場所で特例での大関復帰を目指すことに。特例とは、大関から関脇に陥落しても、直後の場所に限り、10勝以上で大関に復帰できるというもの。しかし、これまでに19人が挑戦し、復帰できたのはわずか5人。

右膝の状態を考えると無謀とも思える挑戦だったが、貴景勝は母校・埼玉栄にいる“力士のヒザ専門のトレーナー”に見てもらい治療することを考えていた。貴景勝が頼ったトレーナーの岡武聡さんは、日本で唯一力士のヒザを専門に治療している。

師匠と相談し、貴景勝は母校でトレーナーとリハビリをすることに。貴景勝は「毎日リハビリをして、治療して稽古をしてという相撲漬けの毎日でしたが、そういう経験も大事だし、本当の大関になるためには良い勉強になったと思います」と話す。

トレーニングを終えた貴景勝が相撲部の寮へと帰ると、高校生と肩を並べて食事。こうした生活を送る中で、貴景勝の気持ちにも少しずつ変化が訪れ、「自分も4~5年前はこんなことしていたな、とかそういうのを見て、俺はプロで成功できるのか、成功したいから一生懸命頑張ろうと思っていた当時の純粋な気持ちに戻れました」と明かす。

「心が折れた」再びの大ケガ

 
 

再起をかけた2ヵ月にも及ぶ厳しいトレーニングの結果、貴景勝の右膝は220kgのバーベルを持ち上げられるまでに回復。その後、部屋に戻った貴景勝は稽古を再開するが、4ヵ月の間、土俵から遠ざかっていたことで不安を抱えたまま本場所を迎えることとなった。

そして迎えた9月場所。絶対に落とせない初戦の相手は、埼玉栄の先輩であり、同じ突き押し相撲のライバルである大栄翔。鼻から出血しながらも、初日を白星で飾った。

力と力がぶつかり合う真っ向勝負の一番を制し、自信を取り戻した貴景勝は、その後も順調に白星を重ね、12日目に目標の10勝を達成し、1場所で大関に返り咲いた。

しかしこの9月場所の千秋楽で再び、貴景勝を悲劇が襲った。12勝3敗で並んだ御嶽海との優勝決定戦で、左胸に大ケガをしてしまう。

「血のような熱いものが胸から漏れているような感じは相撲を取っている中でもありました。当たった瞬間です。当たって手を伸ばした時、胸の筋肉がはち切れたというか、バーンと破裂したような激痛でした。プロに入って初めて心が折れました、本当にダメだなって」

場所後、初めてマスコミの前に姿を見せた貴景勝の左胸は、紫色に内出血していたため、世間を驚かせた。

貴景勝は「膝をケガした時よりもしんどかった。最初は切り替えられなくて、ケガして病院行かなければいけないときに優勝決定戦だったので。帰る時に御嶽海の優勝インタビューで盛り上がっていて…」と膝のケガから復帰して再びのケガと優勝を逃したことに、かなり落ち込んだという。

そんな辛い時に貴景勝は、大栄翔から教えてもらったという長渕剛さんの「HOLD YOUR LAST CHANCE」を聞きながら、乗り越えてきたと明かしてくれた。


 

『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送