「とにかく宿題終わらせます」で大好評に

子どもの頃、「気がつけば幸せな夏休みもあとわずか。なのに、目の前には宿題の山が…!」という経験をした人も多いのでは。
実は、大人にとっても子どもの夏休みの宿題は悩みのタネだ。
主婦(専業・有職)1000人を対象としたある調査では、「子どもの夏休み中に大変だと感じること」の1位は「子どもの宿題サポート」という結果だった。中でも、自由研究と読書感想文については「とても大変だと感じる」「やや大変だと感じる」と答えた母親が80%以上を占めている。(2019年7月スカパーJSAT調べ)

そんなお母さん・お父さんたちに、じわじわとあるサービスが広がっている。
8月16日。東京・板橋区の地域センターに集まった、小1から中1までの8人子どもたち。
みんな真剣に原稿用紙に向き合っている。
これは、普段は脚本家・舞台演出家として活動する篠原明夫さん主催の「読書感想文講座」。
「読み進める中で、どういうときに『あきらめないことが大切』と思ったの?」「君の将来の夢は?」等々と、子どもたち一人一人に丁寧にヒアリングしながら指導を進めていく。

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子どもたちの母親は、スキルシェアサービス「ストアカ」でこの講座を見つけ、子どもと参加したという。
スキルシェアサービスとは、個人の特技や知識(=スキル)をもった講師と、学びたい人をネットやアプリでつなげるサービスだ。
「ストアカ」では、学びたい(子どもに学ばせたい)講座を選び、予約し、参加ができる。
学びたいテーマをキーワードで入力すると、講師、日時、場所、料金などが明示された各種の講座が検索できる。
この読書感想文講座は、受講料4000円。
講師の篠原さんは、2015年から副業でこの講座をスタート。
当初は33人だった受講生が、毎夏増えていき、ことしの受講生はおよそ463人にのぼる(8月18日現在)。
「とにかく宿題を終わらせます」というのがウリで、半日あれば「読書感想文」を書き終えられる。
連日SOLD OUT(=売り切れ)が続いているそうだ。

講師の篠原明夫さん;
まず、子供が読みそうな書籍は一切読まないと決めています。読んでしまうと、どうしても自分の思うように書かせたくなるんです。僕が本の内容が分からないので、子供は自分の力で書くという一択のみになるので、自分で頑張るしかないんですね。

約1時間半で1200文字の感想文を書き終えた小学4年生の喜多山陸くん(9)。
習っている空手の話を絡めて読書感想文をまとめたと、嬉しそうに話す。

喜多山陸くん(9);
かんたんだった。
これで宿題全部終わり!あとは友達と泊まりに行ったり、プールに行ったりして過ごしたい。

喜多山陸くん(9)
喜多山陸くん(9)

陸くんの母・絵美さん;
毎年、子どもたちの宿題が大変で大変で…。特に読書感想文は、息子が本を読むのが好きじゃなかったのでいい機会になった。
(Q:受講料については?)
安いくらいです!結果に満足しています。

陸くんと家族
陸くんと家族

子どもが講座を受けている間、しばしの自由時間ができるのも魅力のひとつのようだ。

「ストアカ」では、こうした夏休みの読書感想文の講座が去年は8講座・受講者数187人だったが、今年は20講座・受講者数949人に急増している(8月20日現在)。

難題の「自由研究」の解決を500円から提供!

一方、スキルシェアサービス「ココナラ」では、実際に会うのではなく、アプリのチャット上でのやりとりだけで宿題をサポートするサービスを提供している。
人気のサービスは、多くの親子が苦労する「自由研究」。
理系の大学院出身者が、500円で自由研究のテーマを提供してくれる。
さらに4500円のオプションを選ぶと、実験結果の解釈や考察までサポートしてもらえるというもの。

この夏、このサービスを利用した本田正美さん(仮名)は、自身も月曜日から金曜日は仕事をしている。小学5年生の息子は中学受験を控え、夏休み中も塾に通っている。家族はみな忙しい。
そこで、「ココナラ」に息子の自由研究のテーマを相談。
チャットで、まず子どもの性格や興味を聞かれ、数往復のやりとりをしたのち、「二酸化炭素の温室効果確認」を提案してもらった。

(「ココナラ」実際のやりとり<青フキダシが本田さん>))
(「ココナラ」実際のやりとり<青フキダシが本田さん>))

サービスを利用した本田正美さん(仮名);
500円でいい研究テーマが決まるなら、と飛びつきました。毎年、本当に大変なんです。学校では書き方まで教えてくれないし。夏休みは9月2日までですが、自由研究が8割終わっているので、(宿題の完了まで)もうすぐです。

広がるシェアリングエコノミー…リスク等にも注意を

スキルシェア市場は、シェアリングエコノミー市場のひとつで、拡大の一途をたどっている。
たとえば「うまい言い訳教えます」、「似顔絵おにぎり作成」など、これまで想像もつかなかったサービスがどんどんシェアされているのだ。

※シェアリングエコノミーとは…場所、モノ、人、金などの遊休資産をインターネット上のプラットフォームを介して個人間で賃借、売買、交換することでシェアしていく経済の動き

しかし、注意すべき点やリスクもある。
昨年、「メルカリ」「ヤフオク」などのモノのシェアリングサービスで、他人が書いた読書感想文がそのまま販売され、問題になった。
文部科学省は、主要なオークションサイトで「宿題代行」の出品を禁止している。
「ココナラ」では、「宿題代行」サービスの出品は禁止し、出品された講座の内容をくまなく人の目でチェックしているという。
あくまでも主体は子どもであり、子どもの自由な発想を引き出す手段としての利用を求めている。

消費者庁では、スキルシェアサービスを含んだオンラインでのサービスのやりとりについて、「相手が必ずしもプロではないことを十分理解した上で、サービスを利用する必要があります。(中略)シェアリングエコノミーならではのメリット・デメリットやリスクをよく理解することで不安の低減につながり、注意深く賢く選択すれば、利便性を享受することができます」と注意喚起をしている 。

【執筆;フジテレビ報道局 経済部記者 井出光】

井出 光
井出 光

2023年4月までフジテレビ報道局経済部に所属。野村証券から記者を目指し転身。社会部(警視庁)、経済部で財務省、経済産業省、民間企業担当などを担当。