午後10時過ぎ、多摩川が氾濫
台風19号に伴う大雨で堤防が決壊した河川は、国交省によると17日時点で7県であわせて71河川128カ所となっている。
東京都と神奈川県の境を流れる多摩川でも12日午後10時過ぎ氾濫が発生して、世田谷区玉川の無堤防地域を中心に浸水被害が出ている。
その頃、隣の大田区で避難情報の発信に関して大きな混乱が起きていたことが新たにわかった。
えっ?氾濫していないのに「レベル5」!?
これは12日午後8時過ぎに大田区民に配信された災害の発生を伝える緊急速報だ。
「災害発生情報」
多摩川流域の対象地域に洪水に関する警戒レベル5災害発生情報を発令しました。
多摩川の堤防を越水する可能性があります。速やかに、建物の高い場所に避難するなど、直ちに命を守る行動をとってください。(大田区)
このメールが配信された時、違和感を覚えた。
警戒レベル5は災害発生を伝える最も危険度の高い状況を示すものにもかかわらず、警戒を呼びかける内容は、「堤防を越水する可能性があるので命を守る行動を」と情報レベルと内容が矛盾している。
そもそも午後8時の時点で多摩川の氾濫発生情報は発表されていない。
関東地方整備局と気象庁予報部が共同で多摩川の氾濫発生情報を発表したのは午後10時20分だった。もちろんその前から浸水は始まっていたことは想像できる。
大田区では午後9時から10時頃に田園調布4丁目と5丁目の一部で浸水被害が出ていることは取材で確認できている。
しかし、午後8時の時点で多摩川の増水した水はまだ堤防を越えてはいなかったことは、大田区の緊急メールを見ても明らかだ。
行政がフライング
政府のガイドラインでは自治体から警戒レベル5の災害発生情報の発令基準を「決壊や越水が発生した場合」と定めている。
つまり東京都大田区は多摩川で越水が発生していない段階でフライングで大雨警戒レベル5の「災害発生情報」を出したことになる。
取材に対して区の防災担当者は、「危険水位を超えたため、氾濫の危険が差し迫っていると判断して発令し、命を守る行動を呼びかけた」と説明している。
これは区民の安全を第一に考えて、早めの避難を呼びかけようという姿勢が起こした勇み足と言えそうだが、一方で今年から始まった大雨危険度レベルの運用がまだ周知浸透していないことが露呈した事案ともいえる。