画面上で街を360度見渡せる

新型コロナウイルスの感染拡大で移動が制限される中、散歩を疑似体験できる「バーチャル街歩き」のサービスが始まった。

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多くの人が行き交う大阪・道頓堀、大きなカニの看板やフグのちょうちんなど、大阪名物を眺めながら街を歩く映像。これは、12月23日から提供が始まったバーチャル街歩きサービス(2021年3月末までの予定)。

画面に映された紫の丸と矢印をタップすると、その場所が動画で表示される。歩くスピードを調整できるほか、別れ道で表示されるボタンをクリックすれば、方向転換することもできる。

映像内をドラッグすれば、歩きながら360度周りを見渡すこともでき、細かい路地にも対応している。

800mの撮影に1時間以上…撮影に密着

東京大学などが開発したこのサービス。いったいどのように撮影しているのか、撮影現場に同行させてもらった。

午後1時、東京・下北沢駅にいたのは、長い棒のようなものを背負った2人の男性。よく見ると、棒の先端に取り付けられていたのは、市販の360度カメラだ。

この日は、800mほどの道のりを撮影するのだが…

360度カメラで街を撮影・後藤優太郎さん:
ここから逆方向にもう1回歩きます。行き帰りも撮って、どちらにも進めるような映像にします。

さらに、両側の店が見えるように道の真ん中を一定のスピードで歩かなければいけないため、車が来たり人につまって中断するなど、何度も撮り直しに。

360度カメラで街を撮影・後藤優太郎さん:
ちょっとこの道は後回しにします。路肩に止めている車があると、店が見えなくなる場合があるので。

わずか800mの撮影に1時間以上かかった。

360度カメラで撮影された映像は、手ブレの補正や通行人のモザイク処理などを行い、約2~3カ月をかけて地図が完成する。

バーチャル看板で情報発信 2年以内に全国展開へ

東大と共同開発 ブイテック研究所・政岡昭仁さん:
まずは見る人に楽しんでもらって、そこから街の方に還元できるようつなげていけたら。あとは(街に)行けない人にもバーチャルで楽しんでもらう。街に触れるきっかけ、お店を知ってもらうとか、そういうことにつなげていければと考えています。

今後は動画内にバーチャル看板を表示し、クリックするとその店の情報が見られるようにする予定。

23日にサービスが始まったのは、南海電鉄なんば駅周辺だけだが、2年以内に全国に広げていきたいとしている。

仮想空間上で買い物やイベント参加も

三田友梨佳キャスター:
IoTNEWS代表の小泉耕二さんに聞きます。今回の取り組みをどうご覧になりますか?

IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
この技術を活用すると、その場所の雰囲気だとか、何が体験できるのかを伝えられると思います。私はグーグルマップのストリートビューをよく使いますが、使い道としては目的地付近の様子を確認することが多いのですが、今回の技術の場合は、この道で春になるとお花見ができるとか、夏にはお祭りで賑わうとか、場所の情報だけでなく、そこでの体験を同時に感じることができると思います。

三田友梨佳キャスター:
場所プラスアルファとなると、ビジネスへの活用も期待できそうですね。

IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
そうですね。主に観光地だとかエンターテインメント施設など、体験が重要な施設に向いていると思います。

現在、フェイスブックなどがVRの技術を使った仮想空間を作ろうとしていますが、今回の技術を組み合わせることで、実際のエンターテインメント施設で行われているパレードなどを仮想空間上で展開して、友達と一緒に体験することもできるんじゃないかと思います。

他にもバーチャル街歩きで気になるお店があったとして、そこに入ると商品の説明がバーチャルで受けられたり、商品を仮想空間上で買うこともできるかもしれません。また、仮想空間に自分が入っていって、宝探しやかくれんぼといった楽しいイベントもできると思います。

三田友梨佳キャスター:
様々な活用例が出ることで、楽しみが増えそうですね。

IoTNEWS代表・小泉耕二氏:
現在、感染拡大によって移動や接触といったリアルでの活動が制限されているので、仮想空間での体験価値の広がりが改めて期待されてくると思います。

三田友梨佳キャスター:
利用者が場所を確認するためだけのツールではなくて、その先には新たなビジネスチャンスが待っているのかもしれません。

(「Live News α」12月23日放送分)