スポーツ界の「ニューノーマル」

午前中の練習が終わると、スーツに着替えて身だしなみを整えるプロバスケットボールクラブの選手。

競技だけでなくチームの営業もアスリートが担う、新たなプロスポーツ選手の生き方に迫った。

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激しい練習を行う、プロバスケットボールB.LEAGUEの3部に所属する「さいたまブロンコス」の選手たち。

的確な指示でチームを引っ張っているのは、泉秀岳選手だ。

この日、午前中の練習が終わった午後、スーツ姿に着替えて向かった先は埼玉県川口市内のスポーツ教室だった。

さいたまブロンコス・泉秀岳選手:
僕らも営業やっていて、第1号でスポンサーをしていただけるということで。

泉選手は午前中は選手として、午後はチームの営業として地元企業を回ったりと、二足のわらじを履いた生活をしている。

さいたまブロンコス・泉秀岳選手:
営業だったりチームのことをやって、選手としての価値も高め、社会人としての価値も高めて、今後バスケットをやめた後にもチームとか地域のために仕事ができる人間になりたいと思っています。

この「二足のわらじ戦略」を打ち出したのは、プロ野球・横浜DeNAベイスターズの初代球団社長を務め、2020年からさいたまブロンコスのオーナーとなった池田純氏。

さいたまブロンコス・池田純オーナー:
我々はまだB3のクラブなんですけど、選手たちにプロバスケットボール選手として、それだけ専念してくださいと言っても夢のない給料にどうしてもなってしまう。ブロンコスの経営周りで彼らも稼いでいければ、彼ら自身も潤っていく。

選手全員が“もう1つの肩書”を持つ

営業職を兼務する選手には、自分が稼いだ売り上げの30%の成功報酬が渡されるといい、今ではこのクラブに所属する選手は全員、「チーム商品デザイナー」や「実業家」といったもう1つの肩書を持っている。

新型コロナウイルスの影響でどのスポーツ界もチーム経営が厳しくなる中、新たなスポーツビジネスのロールモデルとして期待されるこの取り組み。

池田オーナーはさらに、選手自らが営業を行うことには、もう1つ大きな意味を持つという。

さいたまブロンコス・池田純オーナー:
選手はスポーツチームにとって最大の商品。地域の中で可能な限り接点を自分がつくっていく。これは地域との大きな縁づくりのためには、すごく不可欠で大きな要素だと思う。地域経済の歯車の一員になり、地域に支えられスポーツクラブが回っていくビジネスモデルをつくりたい。

選手のビジネスパーソンとしてのキャリア形成を支える

三田友梨佳キャスター:
地域とスポーツと経済のあり方は、経済活性化のためにはとても大切なことだと思いますが、石倉さんの周囲にはスポーツ関連の仕事をされている方が多いとのことですが、どうご覧になりましたか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
今回の新型コロナの感染拡大でスポンサー契約が終了してしまい苦労しているという人は周りにとても多いです。今まではチームに属したりとか、スポンサーありきで競技を続けることがほとんどでしたが、これだと景気の影響を受けて、選手の実力や実績と関係ないことで競技生活が終わってしまうというリスクもあったわけです。

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
収入を得る手段が複数になることで、選手にとってはリスクヘッジに繋がります。ただ、それを個人でいきなりやれと言われても何をしたらいいかわからないと思うので、チームに所属しながら自分で稼げる手段をクラブチームが提供してくれるのは、中長期的に見て、選手にとってメリットがあると思います。

三田友梨佳キャスター:
スポーツ選手がスポーツ以外に取り組む際には、何を大切にするべきなのでしょうか?

(株)キャスター取締役COO・石倉秀明氏:
収入源の多様化はもちろんですが、それをもって安心して競技に打ち込めるようになるのは大きいと思います。クラブチームや企業としては、アスリートとしての一面ではなくて、ビジネスパーソンとしてのスキルが身につくキャリア形成までサポートできるかが重要になってくると思います。

三田友梨佳キャスター:
現役の時からビジネススキルを身につけることで、セカンドキャリアにもプラスに働くはずですし、新しいスポーツ選手のあり方の可能性を見出すためにも、この取り組みの意義は大きいと思います。

(「Live News α」12月9日放送分)