人と人をつなぐ本棚についてです。長野市の中心市街地で、大学生が運営する小さな図書館が開館2周年を迎えました。利用者同士が本を貸し借りし、さまざまな人の輪が生まれています。
■「本棚一つ一つに思いがある」
棚に並ぶ本。
それぞれに持ち主のこだわりが詰まっています。
本棚オーナー:
「本棚一つ一つに思いがある」
「居場所として楽しい」
長野駅から徒歩5分。街の一角に佇む「まちかど図書館ぼたん」です。
店番の大学生が迎えてくれました。
県立大学4年・重田彩名さん:
「地域の人に“本棚オーナー”になってもらって、好きな本、おすすめしたい本を持ち寄る」
壁一面に並ぶ本棚。1区画は高さ30センチ、幅40センチほどで、それぞれに持ち主・オーナーがいます。
入会金3000円と月額2000円を支払い、棚に自分の好きな本を置ける「一箱本棚オーナー制度」です。
一方、利用者は300円を払って登録し、月に5冊程度借りられます。
県立大学4年・重田彩名さん:
「(今)一番読まれるのはこちらの(本棚)。ヨシタケシンスケさんの本が人気で、かなりたくさんの方に読まれています。こちらの棚のオーナーさんは英語が好きで、外国語の本がたくさん置いてあります」
■「本に会いに行く楽しさ」伝えたい
長野市の成田みどりさん。2026年6月から本棚オーナーになりました。
本棚オーナー・成田みどりさん:
「私の本棚はこちらの『とー4』です。趣味でしている図書館巡り、書店巡り、本棚のある場所巡り、本に会いに行く楽しさを伝えられたらと思って、こんな棚に」
この日は、新しい本を3冊棚に入れました。
本棚オーナー・成田みどりさん:
「一番、最近読んだ本が『南極の食卓』。南極観測隊に1年、同行した女性料理人の話。最初に持ち込んだ食料をどうやりくりして1年過ごすか、ごみを出さない工夫を書いている。日々の生活の中でハッとさせられるようなことが多い気がしておすすめ」
成田さんの趣味は「本のある空間巡り」。並べるのは、各地の書店や、ブックカフェなどで出会った本です。
最近は旅先で図書館を訪ねる楽しさにハマっていますが、この図書館に、他にはない魅力を感じています。
本棚オーナー・成田みどりさん:
「普段、自分が書店、図書館に行く時にはできない、人との交流(が楽しみ)。発信すること、交流すること。本棚を巡る楽しさを誰かと共有できたら」
■元ボタン専門店を学生がリノベ
「図書館ぼたん」のコンセプトは「人とまちをつなぐ」。
運営するのは長野県立大学で地域社会学を学ぶ学生15人です。
ここは、もともと閉店したボタンの専門店でした。
学生たちは半年かけて店舗をリノベーションしました。
空き店舗や空き家が増える中心市街地に、さまざまな人が立ち寄れる新たな居場所をつくろうと考えたのです。
■10代~70代まで30人の本棚オーナー
手作りの本棚は全部で110区画。そこには、かつて売られていたボタンも並んでいます。
2024年9月の開館から2年がたち、本棚オーナーは約30人になりました。
年齢は10代から70代。学生に画家、議員にアナウンサー。教育・医療・介護の専門職など、さまざまなオーナーのおすすめの本が並びます。
開館当初からの本棚オーナーは―。
開館当初からの本棚オーナー:
「自費出版した本を置いて、どなたかに見てもらおうかと。共有したい気持ちもあるし、反応もあれば面白い」
店番は学生たちが当番制で行っています。
月に1回はイベントや座談会も開催。学生がテーマを決めて運営し、本棚オーナーも得意分野で協力します。
県立大学4年・重田彩名さん:
「いろんな年代の方と関われるのがとても楽しい。本をきっかけに会話が生まれたり、新しいつながりが生まれるのを見ると、こういう場所が地域にあることに意味があると感じます」
県立大学3年・宮崎俊太朗さん:
「自分が思いつかないアイデアだったり、利用者さんと話し合うことで図書館自体をよりよくできる」
■本棚を介して生まれる人のつながり
9月5日、長野県立大学 後町キャンパス―。
(絵本の朗読)
「『ぎゅうにゅう くださーい』と言いました。うんと大きな声を出そうと思ったのに、小さな声しか出ませんでした。だれも出てきません」
お気に入りの絵本を朗読したのは、3歳の娘を育てる本棚オーナーの女性です。
2025年、通りすがりに図書館に立ち寄りました。
本棚オーナーの女性:
「その頃、子供は2歳で朝起きてから夜寝るまイヤイヤ。並んだ本の言葉、子供への接し方見て、気持ちが軽くなったり」
その棚のオーナーは小学校の教師でした。
本棚オーナーの女性:
「(オーナーさんも)児童や保護者との関わりで思い悩むことがあって、そのたびに本を買って読んだそうです。その方と(電話をつなげて)話せたことも大きな支えになった気がします」
本を介して生まれる人のつながり。現在、周辺の住民を中心に100人ほどが利用登録するなど図書館は町にも根付き始めています。
イベントに参加した本棚オーナー:
「たまに行って(本を)見ると(オーナーは)どんな方なのか想像していた。楽しかったですね。改めて本棚オーナーと出会えたのは」
■まちに生まれた新たな居場所
実は、こうした図書館が今、各地に広がっています。
全国みんとしょネットワークによりますと、「一箱本棚オーナー制度」を導入した私設図書館は2020年に静岡県で始まり、今は全国に130カ所以上あります。
県立大グローバルマネジメント学部・築山秀夫教授:
「本棚オーナーになっている方は多様な人たち。オーナーが持つネットワークがつながってきて(街の)にぎわいがさらに拡大、つながっていく。通りを歩いている人たちが『なんだろう?』と中に入ってくる。かつてボタン店だったことで来てみた人もいる。(来館ノートに)『I’m from Netherlands』オランダから来た(観光客)とか、フランスから来たカップルが『ウェルカムで迎えてくれてよかった』と書いてくれたり」
目標は、オーナーの数を今の倍の60人に増やすこと。
今は長野市の「中心市街地遊休不動産活用事業」として補助金を受けますが、将来は自立した形でまちに定着させたいとしています。
県立大学3年・宮崎俊太朗さん:
「SNSも活用したり、さらに幅広い方に来ていただける図書館にしていきたい」
本棚オーナー 成田みどりさん:
「なるべくいろんな方に会えるよう足を運びたいと思ってます」
人がつながる小さな図書館。まちに生まれた新たな居場所です。
