10月25日、航空各社で冬ダイヤによる運航が始まった。なかでも鹿児島と韓国を結ぶ国際線は変化が顕著である。新たな路線の就航と増便により、過去最多となる週28便が運航される。ゴルフ客の増加に期待が高まる一方、夏場の便数の少なさという課題も見えてきた。
釜山との初の定期便が就航
25日、鹿児島空港の国際線の着陸スポットには、韓国からの便がずらりと並んだ。ソウル線を年間通して運航する大韓航空に加え、冬ダイヤで運航を再開したチェジュ航空とイースター航空、そして釜山との定期便を初めて就航したエアプサンの機体である。
今シーズンの冬ダイヤでは、鹿児島と韓国の間を過去最多となる週28便の旅客機が行き来する。
釜山から訪れた人たちは、期待を口にした。「釜山と鹿児島の直行便が初めてで、『これは行かなきゃ!』と思って来た」「黒豚のしゃぶしゃぶ、日本のラーメンが好きなので食べてみたい」。行きたい場所として「桜島」を挙げる人もいた。観光名所やグルメが目当ての客もいるが、最も多い理由は別にある。
手荷物にずらりとゴルフバッグ
到着した乗客の手荷物には、ゴルフバッグが次々と流れてきた。冬場のゴルフ需要である。
鹿児島出身で、エアプサンに勤務する矢野美優さんは次のように話す。「今、都市(東京、大阪、福岡)に行かれる方より、小都市といわれる鹿児島、長崎、松山に、わざわざゴルフをしに来られる方がすごく多い。韓国にもゴルフ場はあるが規模が違ったり、鹿児島、長崎の方が設備が良い」
韓国企業が運営するさつまゴルフリゾート
さつま町のさつまゴルフリゾートでは、インバウンドのほとんどが韓国からのゴルフ客である。3年前から経営も韓国企業に変わった。館内にはハングルの案内表記があり、韓国人のシェフがビビンバやチゲといった本場の味を提供している。温泉や宿泊施設も備えており、この施設だけを目当てに鹿児島を訪れる利用客もいる。
ゴルフを楽しんでいた夫婦に話を聞いた。夫は「妻が以前ここに来ていて、すごく勧められて来た。景色もすごくいい。コースもしっかり管理されている」と話す。鹿児島に来たのは5回目という妻は「(プレー代が)韓国の半額以下の値段で満足している」と語った。夫婦は11月も鹿児島でゴルフをする予定だという。
課題は夏場の集客
ゴルフ需要が好調な一方、課題は夏場の集客である。このリゾートの2025年度の海外利用客数を見ると、冬ダイヤ期間にあたる2025年12月、1月、3月は3000人を超える。対照的に、夏ダイヤ期間の7月と8月は1000人を下回っている。
支配人の田渕亘さんは、韓国線の年間を通した便数の確保を望む。「夏場ももう少し便を増やしてほしい。当リゾートは涼しい高原環境にありますので、夏場のゴルフや、プールもある。夏場も来てもらえるとありがたい」
今シーズンの韓国線は、夏ダイヤが週3便であるのに対し、冬ダイヤは最大で週28便となる。この差の影響は観光にとどまらない。
便数の差は空港の現場にも影響
地上支援業務、いわゆるグランドハンドリングは、航空機の誘導や荷物の積み卸しなど幅広い業務を担う。担当者には専門的な知識や技術が求められる。扱う便数が夏と冬で大幅に変わることには課題があると、業務を請け負う南国交通の松下徹取締役は話す。
「航空機のそばで仕事をするということは、高額なもののそばで、支援機材が飛行機のそばに数センチ単位で近づく。そこを飛行機にぶつけないよう仕事をすることが求められる。安全上の技術維持というのは年間通して稼働しておかないと業務維持は難しい」
鹿児島空港では、夏ダイヤでの減便を少なくすることが、こうした課題をクリアするうえで重要になりそうだ。
双方向の利用と九州の空港連携がカギ
そのポイントについて、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは次のように指摘する。「地方空港の国際線の路線は、双方向、鹿児島のお客さんと韓国のお客さんの両方がしっかり乗る、偏らないことが大事。日本全国で韓国でのブームがありますので、若い人を中心に、鹿児島空港を利用する鹿児島県民に何かプラスアルファのものを提供することも必要」
鹿児島空港の国際線の利用は、インバウンドが85%を占める。アウトバウンド、つまり日本人の海外旅行客は15%というデータもある。県は利用を促そうと、鹿児島空港を利用する県民にパスポート費用を半額補助する制度を実施している。韓国便の増便もあり、制度の利用者はこの1年で約3倍に増えた。
鳥海さんはさらに、九州の各空港との連携が必要だと話す。「基本的には福岡空港、熊本、宮崎空港も含めた4空港の連携が大事。インバウンドの方においては片方だけでも使ってもらえたら、相乗効果でいろんなところを巡る、県内だけでなく九州全体で見るべき」
コロナ禍前の水準には届かず
コロナ禍前と2025年度の九州各県の空港の国際線利用者数を比べると、大都市の福岡と、世界的な半導体企業TSMCが進出した熊本の伸びが目立つ。一方、鹿児島はコロナ前の水準に戻っていない。
活況に沸く冬ダイヤの期間に、次につながる戦略を描けるか。民間と行政、それぞれの取り組みが求められそうだ。
