長野県松本市にある農園直営のアップルパイ工房についてです。旬のリンゴを丸ごと詰めたようなおいしさが人気で、秋の農園は連日、多くの人が訪れにぎやかです。
■真っ赤な大きな実がパイに
真っ赤に実ったリンゴ。この大きな実がアップルパイに。
松本市の郊外、岡田地区に広がる「信州よこや農園」。
リンゴ畑の一画には無人の直売所があります。
地元の客:
「うまいですよ。物がいい、味がいい、料金も結構、安いんじゃないか」
次々に客が―。
■寒暖差と土で「甘く締まった実」
畑では、オーナーの川邊謙介さん(40)がシナノスイートの収穫に追われていました。
信州よこや農園・川邊謙介さん:
「完熟してくると果皮にワックス、ペタペタしたのが出てくる。ワックスがのってから収穫すると日持ちが悪くなる。食感もだんだん軽くなってきちゃう。長野県の人『ボケちゃう』とか言いますけど」
シナノスイートはそろそろ終盤。これから黄色いシナノゴールドの収穫に切り替わります。
標高650メートルの岡田地区。大きな寒暖差と硬い粘土質の土で、甘く締まった実ができるといわれています。
■途切れなく売るため”20種類”を栽培
川邊謙介さん:
「黄色く、ちょっと赤っぽくなってきているのが『ぐんま名月』」
川邊さんが栽培するのは約20種類のリンゴです。
収穫は9月下旬から始まり、秋映、シナノスイート、シナノゴールドなどと続き、11月中旬以降はふじ。収穫の時期はもちろん、手入れの仕方も異なります。
川邊謙介さん:
「取りながら出荷もして葉摘みも。直売メインで販売しているので、なるべく長く途切れなく売りたかった。リンゴが少ない時期のリンゴを探して植えていったら、訳のわからないことに(笑)」
■傷ついた実が「絶品パイ」に変身
信州よこや農園・川邊明日香さん:
「ちょっと鳥がつついてたり、割れていたり」
傷ついたり食感が落ちそうなリンゴはアップルパイに加工します。
工房を切り盛りするのは妻の明日香さん(40)です。
川邊明日香さん:
「(リンゴが)新鮮な方が、煮た時、歯応えが残っておいしい」
■県外からも客が訪れる評判の店
畑の隣にアップルパイ工房をオープンさせたのは2025年の8月。オープンから1年余り。
県外からもわざわざ客が訪れる評判の店になっています。
看板商品は、煮たリンゴを包んだ「たっぷりりんごのアップルパイ」です。
常連客:
「甘すぎず、リンゴの種類も時期で違うみたい。ちょっとゴロっとした、ペースト状になっていない。菓子店で売っている物とはたぶん違うと思います」
■“リンゴを感じられる”パイ
生地で包むのは8等分に切ったリンゴ2個から3個。平日は1日平均100個、休日は多い時で200個を焼きます。
農家直営の工房ならではのこだわりがありました。
川邊明日香さん:
「なるべく大きく切っています。歯応えのあるように大きめに切って、ゴロッとした感じで食べてもらいたい。パイを食べてるんだけど“リンゴを感じられる”イメージで」
厨房では3〜4人のスタッフが忙しく手を動かします。作るのは注文状況を見ながら少しずつ。オーブンに入れて焼くこと30分―。
フワッと軽いサクサクの皮。
食感もしっかり残し、おいしさを丸ごと詰め込みました。
お客さんの注文で店頭でクリームを絞ってのせるサービスも。すっきり甘すぎない自家製カスタードクリームが、リンゴの優しい甘さととけあいます。
スライスした生のリンゴをのせて焼いた商品も。甘みや酸味、食感をより楽しめます。
■SEから転身 祖父の農園を継ぐ
二人三脚で奮闘する夫婦。4歳~10歳の3人の子育てにも追われます。
農園を始めたのは10年前。システムエンジニアだった謙介さんが仕事を辞め移住。明日香さんのおじいさんの農園を引き継ぎました。
川邊謙介さん:
「ここのリンゴおいしいから、おじいちゃんやめちゃうのもったいないって。地元の人も『ここのリンゴはおいしい』と言う」
しかしその矢先、おじいさんが突然亡くなり、地域の農家に支えてもらい畑を守ってきました。
この10年、地域で廃業する畑も引き継ぎ、農園は1.6ヘクタールに広がっています。
川邊謙介さん:
「失敗して反省して、何かしようってなるとすぐ来年になっちゃう。すごい先のことを考えてどうしようってなるんで、それがまた楽しい。以前、システムエンジニアだった時は、理路整然とトライ&エラーの繰り返し。“遊び”がなくて気持ちがすり減ったけど、ここはもうお天気がいいじゃないですか」
■秋の農園で味わう旬のおいしさ
8年前には、自宅の蔵をゲストハウスに改装。リンゴの収穫体験もできると、インバウンド客に人気です。
タイから来た家族:
「タイで食べたリンゴはこれほど甘くありませんでした。ここのリンゴはとてもおいしくて甘い」
実は、アップルパイ工房を開いたきっかけが―。
信州よこや農園 ・川邊明日香さん:
「『自分の一番好きなお菓子はアップルパイ』と言う宿泊客がいて、(農園が)ワクワクする場所に、住人も遠方の人も思ってもらえればいい」
信州よこや農園 ・川邊謙介さん:
「(私たちも)楽しいから、その方が」
さまざまな人が集まる秋の農園。足を運んでこそ味わえる旬のおいしさです。
【信州よこや農園 アップルパイ工房】
営業:水、木、金、土 午前10時~午後4時
(リンゴがあれば無人直売所は毎日営業)
