高齢者や障がい者、地域の人が集まる施設があります。
全国的にも注目されるこの取り組み、成功の秘訣はみんな“ごちゃまぜ”でいい。
艶やかでもっちりした麺。特製の出汁によく絡みます。
店で製麺した讃岐うどんです。
うどんと天丼の定食を味わった後は。
琥珀色のモール泉は、なめらかな肌触りです。
食事と温泉がセットで、料金は1130円。
「安いです。私たち、週1で札幌の澄川から通っています」(訪れた人)
パン工房には毎日60種類以上が並びます。
人気のあるパンは午前中で完売。
「大好きなの、ここのパン」(訪れた人)
ここは札幌市の中心部から東に、車で約40分。
北海道江別市にあるココルクえべつです。
レストラン「開拓うどん」に隣接するのは、天然温泉「ココルクの湯」です。
すぐ近くに「パン工房あさのわ」も。
ココルクえべつは2021年のオープン以来、今では年間10万人以上が訪れます。
「(Q.ボタンが苦しくない?)大丈夫です」(パン工房あさのわ 斉藤琉維さん)
2026年4月からパン工房で働く斉藤琉維さん、20歳。
働き始めて半年ですが、もうパンを焼く担当を任されています。
「先輩方にいろいろ教えてもらいながら、後輩も増えて自分も頑張らなければと思うときがあります」(琉維さん)
琉維さんは実家のある空知地方の浦臼町を出て1人暮らし。
「ちょっと泣きそうになりました。生まれた時からいろいろ障害があるんじゃないかということだったので。ちゃんと働けるんだと思ったら、なんかちょっと涙が出そうでした」(琉維さんの母親)
琉維さんには軽度の知的障害があります。
「夜来る人は常連が多いので、いつも顔を合わせるので自然と話をして友達になる」(ココルクのサ高住に住む菅原敏彦さん)
温泉の受付や清掃を担う菅原敏彦さん、80歳です。
建設会社を退職してから、約20年ぶりに働き始めました。
菅原さんは2024年、妻の美代子さんを亡くし、「ココルクえべつ」への転居を決めたといいます。
サッカーコートの約4倍にあたる3.1ヘクタールもの広い敷地があるココルクえべつ。
琉維さんの働くパン工房。
菅原さんが暮らすサービス付き高齢者向け住宅。
いずれも同じ敷地にあります。
この日、愛知県東浦町の町長らが視察に訪れました。
「(Q.視察の理由は?)こちらの施設が、高齢者だけではなくて、障がい者の施設もあわせて一体となっている」(愛知県東浦町の担当者)
案内するのは、ココルクえべつの計画段階から携わる明石勝則さんです。
「視察は年間40件ほど。(開業)3年目からは江別以外の北海道内外が多くなり、一番多いのは、この施設でどうやって地域の人と連携しているのか、そういう面で聞かれることが多い」(ココルクえべつ 明石勝則さん)
北海道内外から注目されるココルクえべつ。
食事や温泉で多くの人が訪れる場所です。
障がいのある人や高齢者が働きながら住む場所。
介護の段階に応じて手厚い支援が受けられる場所、そして保育園も。
みんなごちゃまぜ。
逆から読むと「来る、ここ」。
そして、ココルクの頭文字はC・C・R・C。
その意味は、Continuing Care Retirement Community。
アメリカで1960年代から普及した、老後の安心を買う仕組みです。
「アメリカでは大学であったり、さまざまなところがキャンパスを住まいに提供したり。それを1つの参考に」(元厚生労働省 山崎史郎氏)
日本への仕掛け人は、「ミスター介護保険」とも呼ばれる元厚生労働官僚の山崎史郎氏です。
アメリカのCCRCは、健康なうちから看取りまで、移住した1つの街で完結できるシステムです。
その市場規模は、日本円で十数兆円ともいわれています。
日本への導入のきっかけは。
「元々は地方消滅。人口減少と人口の流出で、地方がなくなっていくんじゃないかということでした」(山崎氏)
「生涯活躍のまち」との看板を掲げ、2015年から始まった日本版CCRC。
当時の安倍晋三政権が地方創生の目玉政策として、初代地方創生担当大臣だった石破茂氏らが中心になって進めました。
東京圏の高齢者を健康なうちに地方に移住させ、将来の医療・介護の懸念を解消する構想。
毎年1000億円規模が計上されていた「地方創生推進交付金」などの枠組みから、多額の国費がつぎ込まれました。
しかし。
「当初予定したものと(高齢者が)集まらないケースや、当初見込んだほど行かなかったケースもかなりある」(山崎氏)
岩手県のJR盛岡駅から北東に直線で約30キロ、八幡平のスキーリゾートの近く。
ここに民間が手掛けた高齢者施設が開業しました。
生きがいの創出をコンセプトに、高齢者の移住を狙いましたが、入居者不足で廃業しました。
理念通りに、なかなか進まない日本版CCRC。
当時、有識者などからは「都市部の介護問題の地方へのつけかえ」という強い批判が。
課題となったのは、健康な高齢者の地方への移住が進まなかったことでした。
その後、政策の方向性が見直されることになります。
「高齢者や障がいのある人が主体になって、共生のまちをつくろうと」(明石さん)
誕生のきっかけは2017年、江別市が策定した江別版「生涯活躍のまち」構想にあります。
東京圏から移住してもらうのではなく、江別市民が生涯にわたって安心して生活でき、若者や障がい者など多様な人との交流を目指すものです。
当初は、地域の人をどう巻き込んでいくのか苦労したといいます。
「最初は知名度がなく、福祉関係の人でないと利用できないのかと。施設見学用に無料でバスの送迎をやったり、キッチンカーのフェスティバルで気軽にたくさんの人に来てもらおうと」(明石さん)
多くの自治体から成功モデルと称されるココルクえべつ。
その要因は。
「交流、地域共生、共に生きるということだと思います。高齢者だけの空間になっていくとかですね、障がい者は障がい者だけとのかっこうで、普通の人というのはいろんな人と交流しているのですが、交流がなくなってくる」(山崎氏)
つまり
「地域共生、ごちゃまぜでもいいでしょう」(山崎氏)
2026年8月、収穫祭が開かれました。
「あっちい」「めっちゃうま」「おいしいポーズ」(訪れた人)
ピザを焼き、障がいのある人をサポートするのは学生です。
サ高住に住む菅原さんの姿も。
「おいしいですよね。カレーが好きだから、ほとんど朝はカレー」(菅原さん)
子どもや若者、高齢者に障がい者も。
みんな地域で一緒に「ごちゃまぜ」でいい。
