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歩くことで生まれる“負荷価値”を楽しむ 福井県17市町を巡る「微遍路」の男性 嶺北と嶺南を結ぶ難所・木ノ芽峠越えに密着

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9月末から福井県内17市町を歩いて巡る旅を続けている男性がいます。「お遍路」ならぬ「微遍路」と名付けて3回目の挑戦をする田中佑典さん。旅はいまも続いていますが、今回は嶺北と嶺南を結ぶ歴史ロマンあふれる古道を歩く旅に同行しました。

午前9時の今庄駅。
 
「行ってきます!」
 
この日は南越前町から木ノ芽峠を越えて敦賀市を目指す約30キロの長旅。田中さんと一緒に歩こうと、あわら市から参加する人の姿もありました。
 
「何も考えずついていくだけ」(あわら市からの参加者)
  
田中さんとは10月に入り、微遍路で出会ったご縁だそう。
  
「いつも行きたくて行けない新羅神社。新羅(しらぎ)っていうのは大陸の新羅。敦賀には白木(しらき)地区がある。今立町粟田部には朽飯(くだし)という地区があって、百済(くだら)の名前の由来とか…大陸の名残がある」(田中さん)
  
畑仕事をしている地元の人に、田中さんが「このあたりは、吊るし柿が有名ですよね」と話しかけると「10月の終わりになるとみんなする。 本当は11月10日頃からが脂が乗っていいんや」と返してくれます。
   
歩いていると、先ほど畑で出会った人が、追いかけてきてくれました。
    
「うれしい!差し入れ。(干し柿を)赤ワインに漬けてある」(田中さん)
「赤ワインに漬けると、柔らかくて溶けそうになるんや」(地元の人)
「こんな漬け方があるんですね」(田中さん)

ここは板取宿。木ノ芽峠を越える街道の宿場町として栄え、江戸時代には越前の南の玄関口として関所が置かれました。
  
幕末には住宅が53軒並んでいたとされますが、現在暮らしているのはわずか2軒のみ。そのうちの一軒の方が家に招いてくれました。
    
「すいません、お邪魔します」
 
「僕のお義父さんはここに40年ほど住んでいる。水道は365スキー場からもらっている。それが2~3年前にやっともらえることになって…それまでは水源が森の中にあって。そこからホースを伸ばしてうちにつないでいた」(住民)
  
「歩くのもそうで、人からするとなぜそんなに歩くの、車で行けばいいと言われるけど、負荷をかけることで『負荷価値』になる。田舎に住むというのは、そこに人間から価値を合わせていかないと、あれもこれも不便だから便利にしていこうとすると、その地域らしさがなくなる。 田舎に暮らすこともある種の負荷価値。それを楽しまなければ。歩くことに通じますね」(田中さん) 
   
「不便がいい。めっちゃ幸せです。都会に住んでいる人よりも幸せ感じています」(住民)
 
ご縁に感謝して田中さんが取り出したのは、先ほど道中でもらったワイン漬けの干し柿。
 
「めちゃくちゃ美味しい!ブドウの味が加わってよりおいしい」
 
「便利さと不便さ、両方の幅を持っていて、自分で主導権を持って“自分はこのくらい”と選べるのは豊かさだと思う」と田中さん。

「出た!わぁ~!」
 
田中さんがたどり着いた峠の上に建つ住宅は、6年前の微遍路で訪ねた思い出深い場所です。
 
「ここから入った?ここからでしたか?前川さんだ」
 
6年前に「これから木ノ芽峠を通り敦賀に行くのですが…」と尋ねた田中さんに「お茶でも飲んでいくか?」と声を掛けてくれた前川永運さん。
 
前川家は1600年ごろまで代々、茶屋番として警備の任務を果たしていたといいます。そのため、あの武将も訪れていました。
  
見せてくれたのは豊臣秀吉から譲り受けたという釜。さらに16代福井藩主・松平春嶽の直筆メッセージも見せてもらい、貴重な時間を過ごしたのです。
  
その前川さんは4年前に他界していました。記憶を胸に古道に思いを馳せます。
  
「蓮如さんもここ通っている。 道元さんもみなここを通っている。織田信長も通っている」
 
嶺北と嶺南を結ぶ木ノ芽峠は交通の要衝で、約1200年にわたり北陸道の関門として多くの歴史上の人物や旅人が越えた古道です。

あわら市の参加者とはここでお別れし、前川家住宅を越えると敦賀市へ入ります。
 
出会った住人に「いま、木ノ芽峠を越えてきまして」と伝えると「車ではみな通るけど歩く人は見ない。たいしたもんや」と感心した様子。
  
歩き続けて9時間。夜の敦賀で田中さんを迎えたのは屋台ラーメンです。
 
「峠越えの味!」(田中さん)
 
腹ごしらえを済ませた田中さんは、汗を流しに銭湯の暖簾をくぐったのでした。
 
~つづく~

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