長野県の伝統的工芸品についてです。9月16日、新たに2つが指定されました。長野県伊那市の「高遠焼」と松本市の「松本お神酒の口」です。数少ない作り手たちは、その魅力を広げようと取り組んでいます。
■「報われた」作り手の喜びと決意
独特の色合いが特徴の「高遠焼」。
高遠焼 白山登窯・浦野真吾さん:
「すごくうれしいと思います。より一段と身の引き締まるではないですけど、しっかりと恥ずかしくないものを作っていかなきゃいけないな」
なめらかな曲線美が美しい「松本お神酒の口」。
矢沢商店 4代目・千野恵利子さん:
「今まで頑張ってきたことが報われたなという気持ちもありますし、認定をいただいたことで、ますます頑張らなければいけないなという使命感もある」
この2つが、9月、県の伝統的工芸品に指定されました。
これにより県の指定は「26品目」となりました。
■祖父に憧れ「高遠焼」の世界へ
まずは「高遠焼」から。作られているのは、桜で有名な伊那市高遠町です。
職人の浦野真吾さん(47)は、高遠焼を作り続けて約30年のベテランです。
先代の祖父にあこがれ、陶芸の世界へ進むことを決意。専門学校で焼き物の基礎を2年学んだ後、愛知県の陶芸家に弟子入り。3年ほど修業を積んで高遠に戻り、祖父の後を継ぎました。
浦野真吾さん:
「僕が物心つくころには、祖父がやっている普段のもの、存在というか特別感はなかった。祖父と一緒にやるようになってから『高遠焼』、地元でも知らない人は知らないものであった。いろんな人に知ってもらうことは大事」
■生産途絶え…復活遂げた「二重掛け」
高遠焼は200年前の江戸時代、高遠城に水を引くための土管を作るため、岐阜から陶工を招き窯を築いたのが始まりとされています。
一時、生産が途絶えたこともありましたが、浦野さんの祖父、唐木米之助さんが復活させました。
浦野真吾さん:
「内側と外側で、同じ位置で(手が)動いていかないと粘土が薄くのばせない。その辺の感覚みたいなところは、一番集中するポイントではあるかな」
高遠焼の特徴は、陶器の色や光沢などを出す「釉薬(うわぐすり)」を2重にかける「二重掛け」です。緑色が代表的ですが、ピンクなどもあり、温かみのある色合いに仕上がります。
浦野真吾さん:
「焼き上がりの薬の溶け具合、流れ具合、色の出方というのが焼くときに変わってくる。窯から出すときが一番ドキドキする」
■作り手は2軒「保存と伝承に力」
高遠焼の作り手は今、浦野さんを含め町内に2軒だけ。浦野さんは「高遠焼振興会」の代表を務め、保存と伝承に力を入れています。
その魅力をより多くの人に広げるために―。
浦野さんは定期的に店で体験教室を開いたり、伊那市内の小学校で陶芸教室を行ったりするなど、普及に取り組んでいます。
高遠焼 白山登窯・浦野真吾さん:
「高遠焼というものを知っていただく機会をいただけたと思うので、それが一番良かった。そこから興味をもって来ていただく方が1人でも増えれば、高遠焼を広めていくことにもなると思いますし、伝承していくことにもつながる」
■力と集中力で「左右対称の美しさ」
神棚に置かれた徳利に入っているのが「松本お神酒の口」です。正月や年中行事の際に飾る竹細工の縁起物で、松本では江戸時代に始まったとされています。
これを代々作り続けているのが、松本市の矢沢商店で、千野恵利子さん(68)は4代目です。
竹は、しなりの良い良質なマダケを使っています。
千野恵利子さん:
「曲げていくと、三つ葉みたいになる」
曲げやすいようにマダケを水で湿らせて柔らかくします。きれいな曲線を作るには、「力と集中力」が必要です。
千野恵利子さん:
「左右対称、シンメトリーの美しさを一番こだわっています。きれいにできていると本当にうれしい。お客さんに見せて『きれいだね』と笑顔で言ってもらえると、ますますうれしい」
■20人いた作り手が1人に
千野さんの祖母の話だと、昔は多い時で、20人近く作り手がいたということですが、いま残っているのは千野さんだけ。
唯一の職人です。
千野恵利子さん:
「課題になっていることは、後を継いでくださる、継承していく人材を見つけること、育てること。毎年飾ってくださる方の願いでもあるし、なくしてはいけないものだと思っている」
■満足いくものを作り「伝統を守る」
千野さんは2026年4月に保存会を立ち上げました。月に1回、公民館で興味のある住民などに作り方を教えているほか、お神酒の口を額に入れて飾るなど、インテリアとしての活用も提案しています。
矢沢商店 4代目・千野恵利子さん:
「人はきれいなものにひかれますよね。いい作品を作れば皆さんも振り向いてくださると思う。そこに伝統工芸品として認められたということが加われば、もっと関心を持って見ていただけると思う。伝統は守っていきたいので、松本地方に伝わる風習というものは大切にしていきたい。飾ってくださる方たちの満足のいくものを作っていきたい」
新たに指定された2つの伝統的工芸品。
その伝統を絶やさないために―。
作り手たちはその魅力をより多くの人に知ってもらおうと、懸命に取り組んでいます。
