道路を走り、空も飛ぶ。まるでSF映画のような“夢の車”を先週、イーロン・マスク氏が発表した。
「newsランナー」は、その実現を支える技術を専門家とともに独自分析。
さらに日本で、最もよくテスラを知る人物に直撃し、テスラが描く未来に迫った。
■テスラの新型車の発表会で“空飛ぶ車”
テスラ イーロン・マスクCEO:今夜あなたはとんでもないものを目撃します。
先週、テスラの新型車の発表会でこう切り出した、イーロン・マスクCEO。
現れた車は壁のようにそびえ立った道をゆっくりと登っていくと、車体がほとんど逆さまになった状態で停止。
そして、驚くべきはその後だった。なんと!空中を飛び、地面に着地した。
さらには、渋滞を超えるかのように5台の車の上を一回転しながら飛び越えていく様子も披露。
テスラが発表した新型ロードスターは、停止した状態から時速およそ100キロまで、なんと1秒未満で到達し、最高速度は時速370キロを超えるというのだ。
そして注目すべきは何といっても“空飛ぶ”機能。現状ではオプションとして搭載される予定で、公道での使用はできないというが、テスラは2028年の製造開始を予定しているということだ。
テスラ イーロン・マスクCEO:“空飛ぶ車”は実在します!

■まさに“空飛ぶ車”見た吉村知事は…「ぜひ乗ってみたい」
まさに“空飛ぶ車”に街の人からは、「めっちゃ飛んでる。映画の世界みたい」、「手塚治虫さんが描いたのを実現してるような感じします」という声が聞かれた。
そして「空飛ぶ車」と聞いて記憶に新しいのが、去年、大阪・関西万博でデモフライトが披露された「eVTOL」と呼ばれる乗り物。ただ、見た目は「空飛ぶクルマ」というよりはドローンやヘリコプターのようだった。
しかし、今回の商品はまさに“空飛ぶ車”。万博の“レガシー”として『eVTOL』のいち早い社会実装を目指している大阪府の吉村知事は、テスラの発表について。
大阪府 吉村洋文知事:面白いですよね。ぐいーっと反対を向いて。ワクワクする。未来はこんな車も空飛ぶのかなと。ぜひ乗ってみたいなと思います。
多くの人に“未来”を感じさせた今回の発表。一体、テスラのどういった技術が“空飛ぶ車”を可能としたのだろうか。

■専門家が分析「ファンが車の下についていて地面に張り付いている」
「newsランナー」は、日本の自動車メーカーでエンジニアとして勤務した経験をもち、現在は「日本カーオブザイヤー」の選考委員を務める山本シンヤさんと映像を独自に分析した。
山本さんも「最初CGだと思いましたよ」と驚きを隠さない。
そしてまず、壁を登る原理について「風を吸い取っているような音がしていると思う」と説明する。
映像を確認してみると「スウー」という掃除機のような吸い込む音が聞こえる。
山本シンヤさん:ファンが車の下に付いていて、それで空気をものすごい力で吸い上げている。
山本さんによると、車体の下に空気を吸い上げる装置がついているとみられ、その吸引力によって地面に張り付きながら走行することができているという。
山本シンヤさん:これは電気自動車なので2トン近くあると思うけど、2トンを吸い付かせる力は結構強い。全体的に吸わないと、あれだけピタッと4輪全部が接地することはできないので、均等な場所に何かしらのもの(吸う装置)がある。

■加速力は「ロケットを横に飛ばしているようなもの」
そして山本さんが注目するのは、“時速およそ100キロに1秒未満で到達できる”加速力について。
山本シンヤさん:めちゃ速いですよ。今までガソリンの高出力の車で(時速100キロ到達に)4秒切れば速いという時代があった。それが3秒、2秒となってきたが、1秒切るというのは、ロケットを横に飛ばしているようなもの。
山本さんは「これまでの自動車の常識を覆すような加速力には、車以外の技術が使われているのではないか」と推測。
そしてイーロン・マスク氏はこの件についてヒントとなる発言をしていた。
テスラ イーロン・マスクCEO:この車には姿勢制御用のスラスターと、後部にメインスラスターがついている。つまりロケットのように飛べる。

■「なんとも悔しい」と専門家も唸る 「スラスター」技術
カギになっている「スラスター」という技術。
その詳細を探ろうと取材班が次に向かったのは、JAXAが手がけた宇宙機のスラスターノズルを製造した会社。さっそく社長に映像を見てもらった。
由紀精密 永松純社長:ガスが出ているのがスラスター。一言でいうとロケットエンジンのひとつ。宇宙空間で宇宙機をコントロールするための仕組み。
スラスターとは、ロケットや人工衛星などで使われる、ガスを噴射して機体の姿勢や向きを制御する技術のことだ。
今回使われているのは、圧縮した空気を勢いよく放出するもので、それによって車の加速や飛行を可能にしているという。
由紀精密 永松純社長:通常、宇宙機は真空かつ無重力で使うことが多い。地球は常に重力加速度がかかっているなので使用されるスラスターは相当、燃料の消費も激しいですし、パワーが必要。スラスターを使用してこれだけの制御を見せつけられて、なんとも悔しい気持ちがします。

■テスラジャパン社長に接触 今回の発表を知ったのは本社の配信で
専門家2人も驚いた、まさに最先端の自動車技術と宇宙技術を融合した今回の新型車。ではなぜ、こういった製品を世界に先駆けてテスラが実現できたのか?
「newsランナー」は一か八か、“テスラの事を日本で一番よく知る人物”にアプローチ。なんと、その人との接触に成功した!
テスラの日本法人「テスラジャパン」のトップを務める橋本理智社長だ。
音響機器メーカーのBose、レッドブル、ダイソンなど様々な企業で重役を務めた経験を持つ橋本社長。本題よりも前に、その屈強な見た目が気になった。
テスラジャパン橋本理智社長:トレーニングして出社というのを20年ぐらいルーティンとして続けている。朝は(卵の)白身10個と米300グラム。昼はおにぎり2個とプロテイン。夜ご飯はチキン250グラムと米300グラムぐらい。
そんな橋本社長が、今回の発表内容を知ったのは、実は私たちと同じテスラ本社の配信だったという。
テスラジャパン 橋本理智社長:従業員と一緒に見てたんですけども、歓喜、悲鳴に近い歓喜でしたね。イーロンは『次のロードスターを発表する際に空を飛ぶ』と言ったことがあります。
言ったことは必ず守る、コミットするというところの、会社に対する信念と、改めて信頼感を感じました。娘に『買って』と言われました。

■“空飛ぶ車”の実現には 航空宇宙メーカー「スペースX」の存在
そして最も聞きたかった「テスラがなぜ“空飛ぶ車”を実現できたのか」を尋ねると、返ってきたのは、同じくイーロン・マスク氏が率いる宇宙航空メーカー「スペースX」の存在。自動車会社だけでは成し得なかった、テスラ独自の開発体制だった。
テスラジャパン 橋本理智社長:車のメーカーは『テスラ』ですけども、『スペースX』という会社がございます。資材のエンジニアが、テスラとスペースXでは全く同一の人物です。
なので同じ人間が資材の調達をして、ロケットの技術を使って、圧倒的な車のメーカーにはできない安全性や品質にこだわってる。
そして最後に、現状では明言されていない日本での空飛ぶ機能の搭載について、期待を込めてこう話した。
テスラジャパン 橋本理智社長:10年ぐらい前までは、誰もが無理だと言っていた全自動運転が、実際にアメリカで走り出していて、しかも無人のタクシーが走り出しています。
そういったところから、未来を短縮して、現実のものにする力がテスラにはあると思っている。遅かれ早かれ何かしらの形で広めることができるかなと。
テスラが見せた新たな車の可能性。“空飛ぶ車”の未来は着実に近づいている。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月20日放送)


