フランスで起きた「近年最悪」ともいわれる大規模な暴動。
デモに紛れ込む黒ずくめの集団「ブラック・ブロック」の正体について、社会学が専門で、フランス情勢に詳しい神戸大学大学院・山下泰幸講師が解説しました。
「ブラック・ブロック」は明確な組織性はなく、デモに便乗し、破壊・略奪行為を行う集団です。
山下氏によると、今回の暴動の背景は「政治的な主張があるというより、将来が不安定な若者が、破壊的な暴力衝動を発散していること」だと指摘し、日本と共通する課題があるものの、状況は日本以上に深刻だと解説しました。
■謎の覆面集団「ブラック・ブロック」とは
暴動のきっかけを作ったのは覆面集団「ブラック・ブロック」。
明確な組織性はなく、デモに便乗して破壊・略奪行為を行う集団で、山下氏によると大半が若者だということです。
【山下泰幸氏】「基本的には政治的な主張があるというより、将来が不安定な若者が、破壊的な暴力衝動を発散するために参加している状況」
フランス国立統計経済研究所によると、若者の失業率は20%を超えているということです。
【山下泰幸氏】「大学を卒業していても仕事が見つからないというのも普通。先行きがかなり不透明。そういった若者が何か感情を表したいという時に、こういった行動に及んでしまう構造があるかと思います」
■フランスの若者が抱える不満は、日本の課題と共通する部分も
一方で、フランスの若者が抱える不満は、日本の課題と共通する部分もあります。
その課題とは、教員不足などによる教育環境の悪化、燃料費の高騰や物価高、格差の拡大です。
山下氏によると、今回のデモは、もともと高校生たちが学校を封鎖して自分たちの思いを政府に届けようとしたことが発端だったといいます。
【山下泰幸氏】「デモでは、多くの公務員も合流して、政府が歳出を削減した予算案を出しているのでそれに反対した。ガソリン代が日本以上に高騰しているので、生活がひっ迫している人たちが抗議の声を上げているという状況です。
フランスではこれまでも、デモをして社会運動にして、それで政府が譲歩するというような構造があった。
それによって社会が変わってきたところはあるので、日本で実際には教育現場で起きてることはかなり似ているんですけど、日本では(行動が変化に)結びつきづらいという社会の違いはある」
■フランスのデモ・暴動の歴史
フランスでは2018年には燃料高騰への不満から「黄色いベスト運動」が起き、2023年には年金改革への反対デモや、アルジェリア系少年の射殺への抗議が行われました。
今年に入って、サッカーのパリ・サンジェルマンがチャンピオンズリーグで優勝した際にも暴動が起きています。
【山下泰幸氏】「フランスは警察側からの暴力という問題もあって、多くの国際的な人権機関からフランス政府が非難・批判を受けています。
市民側と警察側がお互いに暴力を行使してそれがエスカレートしていくような構造もあります」
■暴動はいつ収束するのか
今回の暴動の収束の見通しについて、山下氏は「今はまだわからない」と述べ、半年後には大統領選挙も控えており、それぞれの政治家が立場の違いから、むしろ対立をあおっているような構造もみられるといいます。
【山下泰幸氏】「すでにイタリアやベルギー周辺の国の若者も立ち上がって抗議を行ってるという現状がありますので、まだ収束するかは分からない状況です」
■「格差はフランスの方が深刻化し、日本の“先”をいっている」
政策研究大学院大学教授の安田洋祐氏は、ことし起きたパリ・サンジェルマンの暴動が分かりやすい例だと指摘しました。
【安田洋祐氏】「もともと政治性もなくて人が集まっていただけなのに、いつの間にか暴動に発展する。それぐらい何らかのストレスとかフラストレーションがフランス社会にたまっていると思うんですよ」
安田氏は、「フランスのガソリン価格が1リットルあたりおよそ400円近くで、格差はフランスの方が深刻化している」と説明。
【安田洋祐氏】「日本との類似性はあるんですけれども、かなり極端な形で格差に関してはフランスの方が深刻化しているので、日本の先をいっている。
一方で、財政の持続可能性に懸念が生じている背景もあるので、フランス政府は非常に難しい舵取りを迫られているんじゃないかなという印象を持ちました」
(関西テレビ「newsランナー」 2026年10月20日放送)
