「大阪都構想」の説明に関し「大阪市を廃止」という表現を用いないことを求めた大阪市議会への陳情に、維新の議員秘書の関与が次々と発覚している「セルフ陳情」問題。
議会改革の専門家として、大阪府議会に参考人招致されたこともある、地方政治の専門家・拓殖大学の河村和徳教授に一連の問題をどう捉えているのか聞いた。
■「セルフ陳情」は「常識的にはやらない手段」
まず河村教授は「『秘書に陳情の権利がないのか』と問われたら『そんなことないですよ、どうぞやってください』と即答するが、『常識的にはやらない手段』だ」と評価を下す。
河村教授は、陳情や請願は本来、「与党のため」ではなく、むしろ「議会に議員を送り込めなかった野党のためにある制度」だと話す。
「(定数削減などで)議席がないから届かない民意があり、住民がたくさん署名を集めることによって『こんなに民意があるから議論の俎上に上げてほしい』とするプロセスが陳情・請願」(河村教授)
■最大の問題点は「ほかの民意を排除」していること
維新の議員秘書たちが署名した「セルフ陳情」が採択された9月25日の委員会では、「都構想」に関する陳情がほかに56件提出されていたが、どれも「都構想」に賛同する内容のものではなかった。
また採択されたものと真逆の「大阪市廃止」と明記することを求める陳情は6件あったが、これら含め56件の陳情はすべて不採択になっている。
河村教授は「ほかを不採択にするなら、『なぜダメなのか』、せめて採択されたもの以上に署名が集まった陳情には、理由を付けて答えていくことが求められる」と述べた上で、次のように指摘した。
「(“都構想”に)自信があれば、少数意見も聞いて、時間をかけてでも(野党と)盤石な関係を作り、『二度と後戻りできない形』の意思決定をとるはず。(維新の対応は)結論が決まっていて『結論から外れた意見は排除します』としているように映る」
■「セルフ陳情」は「民意だが民主主義ではない」
河村教授に「『セルフ陳情』は民意か、そうでないか」と尋ねると「『セルフ陳情』も含め提出されている時点で全てが民意だ」と話す。
ただし今回のプロセスは「民主主義ではない」と断じる。
「知り合いだけで盛り上がって陳情した構図で、市民に対して『広がりがないこと』をかえって可視化している。(議員や秘書の間で)政治参加に対する理解が非常に浅い」(河村教授)
その上で、こう断じた。
「政治学の教員をしている立場からすると、『民主主義の歴史を勉強していますか』と聞きたくなる。テストでやるとD評価」(河村教授)
ちなみに「D評価」は拓殖大では単位を落としたことを意味する。
■支持者からも批判の声
関西テレビが大阪市内で街頭インタビューを実施したところ、厳しい意見が相次いだ。
【大阪府内在住・40歳女性】「ちゃんと思いがあるのであれば水増ししなくても周りの意見はついてくると思う。ズルいことをしてしまうと、それだけ信用が下がる」
【大阪府内在住・30代男性】「誤解を生まないためには議員の秘書だと立場を明記するのがいいんでしょうね。経緯として後から発覚するのが一番まずい。党の理念を実現するのが政党だが、とはいえ経緯の説明が不透明になっているのがまずい」
維新の支持者からも批判的な声が聞こえてきた。
【維新支持・市内在住・20代女性】「過去2回(住民投票で)失敗してきているから今回は失敗できひんぞと”強行突破”している部分があるのかな。でもそこを丁寧にやっていかないと結局二の舞になるのでは。悪いことをしていないと思うなら正々堂々やってほしい」
【自宅に維新のポスターを貼っている市内在住70代女性】「なんかちょっとおかしいですね、そういうやりかた。市民感情からかけ離れている。(創設期の維新は好きだったが)今は違いますよね」
意見を聞いた人の中に、維新の対応を擁護する人は1人もいなかった。
■「まだ遅くない」と河村教授 維新がすべきこととは
河村教授はこの状況について、維新にアドバイスを送った。採択された陳情は取り下げることはできないが、「ほかの意見を聞く」という姿勢を示すことだという。
「だが、まだ遅くないと思う。陳情を受け入れてしまったものは仕方ないので、『ほかの意見を聞きますよ、議論しますよ』と時間を割けるかどうかが今、問われている」(河村教授)
維新の「悲願」である都構想への道筋で、思わぬ議論を巻き起こした「セルフ陳情」。
この問題を巡って維新がどう対応するのか、それこそが「都構想」の実現のカギを握っているのかもしれない。
