宇宙空間を飛ぶ巨大な探査機。
10月20日未明に、種子島宇宙センターから打ち上げ予定の「火星衛星探査機」です。
この秋、JAXAが挑む壮大なミッションの全貌に迫ります。
高さは約5メートル、重さは約4.5トン。
2026年8月、報道陣に公開された火星衛星探査機「MMX」です。
轟木康陽記者
「公開された火星衛星探査機です。こちらのカプセルが2031年度に地球に戻ってくる予定となっています」
火星の周りを回る直径わずか20キロほどの小さな衛星「フォボス」。
「MMX」は「フォボス」に着陸し、表面の砂や岩石を採取して、2031年度に地球に持ち帰るサンプルリターンに挑みます。
成功すれば世界初の快挙。
指揮を執るのはJAXAの川勝康弘プロジェクトマネージャです。
火星衛星探査機プロジェクトチーム・川勝康弘プロジェクトマネージャ
「火星の衛星は遠くから撮影される機会はあったけど、それ自身を主対象とした計画は立ち上げられていなかった。やっと始まるのでワクワクして待っている」
チームの中には霧島市出身の技術者も。
火星衛星探査機プロジェクトチーム 軌道・運用担当 池田人さん(霧島市出身)
「昔から鹿児島は打ち上げの映像やロケットのニュースもあったし、もともと興味があって(JAXAに入った)。(プロジェクトでは)探査機の軌道の検討をやっている。どういう道を通って火星に行くか、火星についた後は火星の周りをどうやって動くか、フォボスの周りをどうやって飛ぶか検討している」
ミッションの意義、そして、挑戦を支える探査機の秘密に迫ります。
ここからは取材にあたった轟木記者とお伝えします。
よろしくお願いします。
今回のミッションですが、なぜ火星ではなく、その周りを回る衛星「フォボス」を目指すのでしょうか。はい、大きな理由が火星にある「重力」です。
重力の影響で火星では探査機が離脱する際に大きなエネルギーが必要となります。
一方、フォボスの重力は火星の数百分の1程度で、より少ないエネルギーで離脱することができます。
ではフォボスのサンプルを持ち帰ることで、どのようなことがわかるのでしょうか。
主に2つのことがわかるとみられています。
まずはフォボスの起源です。
こちらに用意した火星とフォボスの模型を使って説明します。
フォボスの起源についてはこれまで2つの説が唱えられてきました。
1つ目が外から飛来した小惑星がこのように火星の重力によって捕まり、火星を周回するようになった「捕獲説」。
2つ目が、ある日火星に天体が衝突し、破片が飛び散ってできた「巨大衝突説」です。
持ち帰ったサンプルを分析することで、2つの説のどちらが正しいか分かるといいます。
「フォボス」がどうやってできたのか、謎が一つ解けることにつながるんですね。
続いてサンプルで分かることは、火星表面の環境についてです。
火星とフォボスの距離は約6000キロ。
地球と月の間の距離、約38万キロと比べるとだいぶ近い距離です。
そのため、火星に隕石が落ちた際、巻き上げられた火星の物質がフォボスにも届いているのではないかと考えられています。
そこでサンプルに含まれる火星由来の物質を解析すれば、火星にかつてどんな環境が広がっていたのかを知る手がかりになるといいます。
このように科学的に大きな意義を持つミッションですが、打ち上げまでには乗り越えなければならない技術的な課題もありました。
特に大きな壁が「着陸」でした。
火星衛星探査機プロジェクトチーム・川勝康弘プロジェクトマネージャ
「フォボスの場合(場所にもよるが)、地球の2000分の1ぐらいの重力しかないので、風船を落とした時に、跳ねて向きが色々変わってしまいますよね。あれに近い状態。どういうような状態で着陸ができるか、数値シミュレーションについてもすごい研究と工夫をした」
重力が小さいフォボスでは、離陸には有利な一方、着陸時には跳ね返りやすく転倒もしやすいという弱点を抱えています。
そこで探査機は着陸する脚を大きく広げて重心を低くし、着陸時に緩衝材を潰して衝撃を吸収。
転倒しにくい構造を実現しました。
こうした技術者たちの知恵や努力が結集してつくられた探査機。
実はこのプロジェクトにはアメリカのNASAなど4つの欧米の宇宙機関も協力していて、探査機に搭載する機器の提供などを行っています。
火星衛星探査機プロジェクトチーム・川勝康弘プロジェクトマネージャ
「はやぶさ2で『サンプルリターン』という技術を確立したことが、この種のミッションに対する世界で最も信頼できるパートナーだと思ってもらえていると思う」
「『挑戦』と『無謀』は紙一重だと思う。10年前の我々が『フォボスのサンプルリターンをやろうと思っているから一緒にやらないか』と言っても、多分、挑戦の域を超えている」
「(はやぶさが)サンプルの採取ということが実現できて、各国が認めてくれたのでは」
打ち上げが間近に迫る中、2人の技術者はー
火星衛星探査機プロジェクトチーム 軌道・運用担当 池田人さん(霧島市出身)
「地元から打ち上がるので、すごくうれしい。楽しみだけど、まずは打ち上がって、ちゃんと運用ができるかどうか少し心配。(探査機が)安全に行って帰ってくるように貢献したい」
火星衛星探査機プロジェクトチーム・川勝康弘プロジェクトマネージャ
「この10年一緒に走ってきたので今、子供を送り出す気持ち」
Q.MMXへのメッセージは
「頑張って楽しんでこいよ」
「取ってきたデータは惑星科学の研究に役立ってもらいたい。特にお子さんや若い方に見てもらって、我々の住んでいる地球以外に、こんな世界があるんだってことを見て喜んでもらえれば」
今回、取材を通して技術者1人1人の情熱、そして探査機の設計の細部にまでこだわり抜く姿勢が非常に印象的でした。
いよいよ探査機が打ち上がりますが、これはゴールではなく、サンプルリターンに向けた旅のスタートです。
鹿児島から始まる世界初の挑戦をぜひ見届けていただければと思います。
ここまで轟木記者とお伝えしました。
探査機を載せたH3ロケット10号機は、10月20日の午前4時41分3秒に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。
