別府駅前の夜空に、日没後に現れる「2本のまっすぐな光」。トキハ別府店と駅前のホテル付近から照射されるこの光景を、不思議に思う人も少なくない。一体これは何なのか?
「あれも一つのアートですよ」という地元の人の言葉を頼りに取材を進めると、光が街の記憶を静かに照らし続ける壮大な作品であることが判明した。
その正体と、光に込められた意味に迫る。
聞き込み調査で謎に迫る
まずは駅前での聞き込み調査からスタートである。
しかし、まだ外が明るいせいか謎の光の線を見たという人はなかなか見つからない。
調査を続けていると「あのホテルの線でしょ?知ってますよ」と、ついに有力情報を知る人たちが現れた。
「ホテルからこっちに線が出てるんですよ、いつも」と教えてくれた。
謎の光は、何のために発せられているのか?

道中では意外な出会いもあった。
なんと、取材を担当した私、野良レンジャー竹尾の母とSNS友達だという女性に遭遇。
女性がロケの様子の写真を送り「今、目の前にいますよ」と伝えると「あら、声かけてあげて」というライトな返信があった。

そんな母の友人も光の存在を知っていて「あそこの駐車場からビューっと見える」と、具体的に目撃情報を教えてくれた。
しかも、「こっちの方からも出 てるよ」と、光は1つではない可能性が浮上した。

ついに発見!夜空を走る2本の光
だいぶ夜も更けてきたその時…
「あれ?…出てます!」
ついに、噂の光の線を発見した。
情報のとおり、トキハ別府店の駐車場と、別府駅前のホテルから、2本のまばゆい光が夜空に向かってまっすぐに伸びている。
これは一体、何なのだろうか…

「別府だからじゃないですかね」「あれも一つのアートですよ」と笑う地元の方もいた。
アート…
そのキーワードを頼りに取材すると、「謎の真相は別府プロジェクトにあり」という情報を入手。
早速、その事務所へ向かうことにした。
光の正体=「街の歴史を照らすアート作品」
事務所で待っていてくれたのはBEPPU PROJECTの久保さんである。
謎の光について尋ねると「実は私どもがアーティストにお願いして作っていただいたアート作品の一つで、斎藤精一さんという方が作った”JIKU”という光のアートになります」とのことであった。

光の正体はアート作品。
作品名は「JIKU」というそうだ。
BEPPU PROJECTでは、アートやデザインなどを活用して別府の街の魅力を発信する活動を20年以上続けている。

「JIKU」に込められたメッセージ
久保さんに、作品がよく見えるというおすすめの鑑賞スポット「海門寺公園」へ案内してもらった。公園から見ると、2本の光の線が夜空に伸びる様子がくっきり見える。
作品を担当した斎藤精一さんは、Perfumeのライブ演出などを手掛けてきた「ライゾマティクス」を設立したアーティストである。
なぜ別府に光のアートを制作したのでしょうか。
ーー久保さん
「駅前通りの上空を2つの光が走っているということが重要。どの街にも、歴史的に大事だった道や交通の要所がありますが、都市開発が進むにつれて見えなくなりがち。この作品は、今は忘れられているかもしれないけれど、この街にとって大事な『軸線』をアートの形で照らし出し、みんなにもう一度認識してもらおうというコンセプトなんです」。

この光は単に目立つためではなく、別府という街が形作られてきた歴史の「軸」を未来に語り継ぐための光だという意味が込められていた。

別府のもう一つの顔「ALTERNATIVE-STATE」
「JIKU」は、BEPPU PROJECTなどが手がける「ALTERNATIVE-STATE(オルタナティブ・ステート)」という、別府市内に点在する8つの常設アート作品の一つである。
「オルタナティブ」は「別の」、「ステート」は「都市(府)」を意味する言葉だ。
「定番とは違うもう一つの選択」や「視点を変えると面白い状態が見えてくるかも」という思いが込められているそうだ。アートをきっかけに、別府の新しい一面を見つけてほしいという願いが込められているのである。

別府の夜空を彩る謎の光の線。
その正体は、街の記憶を静かに照らし続ける壮大なアート作品であった。
日没から午後10時まで鑑賞できるそうなので、別府を訪れた際はぜひとも夜空を見上げてみてほしい。
そして、光が示す「街の軸」に思いを馳せながら、他のアート作品を探して散策してみるのも面白いかもしれない。

