奈良県の山あいにある一軒の民家に、モモンガ、ウサギ、マーラ、ヘビ、そしてサソリまで、およそ50匹の動物たちが暮らしています。
いずれも、かつての飼い主に手放された動物たちです。
世話をするのは、堀本慎也さん。
堀本さんは、動物の専門家でもなければ、獣医でもありません。
それでも毎日欠かさず動物たちの食事を用意し、掃除をし、健康状態を観察し続けます。
「引き取った限りは、最後まで飼育する」という信念を胸に“小さな命”たちを守る堀本さんに密着しました。
■引き取るという特性上、前の人の飼い方に依存する 「毎日手探り」
堀本さんは毎日午前8時から動物たちの朝ごはんの支度を始めます。
冷蔵庫を開けると、中は野菜でぎっしり。
動物ごとに好みや食べられるものが異なるため、それぞれのエサを用意します。
【堀本慎也さん】「引き取るっていう特性上、前の人の飼い方にものすごく依存するので。同じイグアナでも、今いる子はこれ食べるけど、別の子だったら食べなかったりする。毎日手探りでやっていって」
掃除に関しても妥協しません。
敷いているおがくずは、汚れた箇所だけを部分的に取り除く施設もあるといいますが、それでは動物の臭いが残りやすい、とほぼすべてを毎日交換して清潔に保ちます。
■「売れない」「面倒みるのがしんどい」様々な事情で集まる動物たち
ここに集まる動物たちの事情は様々です。
白内障を患い、ほとんど目が見えていないフクロモモンガは、ブリーダー周りから引き取ったそうです。
【堀本慎也さん】「たぶん売れない子なんやろうなと思ってます」
マーラの「どんちゃん」は、大阪・堺に住む若い男性が飼っていましたが、「もう飼えない」ということで引き取りました。
手放した理由を聞くと…
【堀本慎也さん】「なんかしんどいらしいです。面倒みるのが。お前が飼うたんやろっていう話なんですけどね。何なんでしょうね」
■本業は“介護士” 「犬猫以外、専門でやってみよう」
夕方になると、堀本さんは民家のすぐ隣にある高齢者向けのグループホームに向かいました。
実は、介護士としての仕事が、堀本さんの“本業”です。
【堀本慎也さん】「僕はもともと認知症の病棟で15年間働いていて、人間の方の病院の人」
動物に関する専門知識を持っていたわけでも、資格があったわけでもなかったといいます。
それでも6年前、1匹の豚を引き取ったことをきっかけに保護活動を始め、一時期は100匹ほどを保護したことも。
コロナ禍に爬虫類飼育が流行し、その後に手放される動物が増えたことで、「犬猫以外、専門でやってみよう」と堀本さんは保護活動を本格化させました。
■幼少期の経験が、保護活動の原点に
堀本さんは自身の幼少期の経験が、この活動の原点だと話します。
【堀本慎也さん】「僕の育ちもあるんですけど、いろんな親戚の家を転々というか、面倒見られへんって言っていろんなところに行ったりしたんで。僕自身がやっぱりそういうのって幼少期のころですけど、不安やったっていう思いがいまだにやっぱり残ってるんで」
親の離婚などで親戚の家を転々とし、寂しい思いをした幼少期。
手放された動物たちの境遇に、自分の経験を重ね合わせているといいます。
【堀本慎也さん】「その子たちに同じ思いをさせたくないというのもありますし、気持ちを分かってあげられるのも僕かなとは思うんで。だからこの子たち、引き取った限りは終生飼育、最後まで飼育するっていう信念を持ってやってます」
■26年飼育したカメを手放す
この日、堀本さんのもとにカメの引き取りの依頼が。片道2時間かけて京都市内に向かいます。
依頼者は、結婚して家を出た息子が飼っていたカメを、引っ越しを機に手放すことにしたといいます。
【堀本慎也さん】「引き取り手の募集サイトがいっぱいあるんですけど、引き取り手が見つかってなくて、ずっと放置だったので行き場がないんだったらと声かけました」
依頼者の自宅に到着後、エサの種類や飼育環境などを詳しく聞き取ります。
26年ほど飼っていたカメについて「小さいカメやったらね、すぐ引き取り手がね…。こんなに大きくなったらね…。本当にありがたい」と安堵した様子で依頼者の女性は話し、堀本さんに引き渡しました。
連れて帰った後はカメの負担を考えて、この日は布をかぶせます。翌日、大きめの水槽に移し、今は元気に暮らしています。
■ヤギ1頭だけで1カ月“4万円” 介護士の給与で補填
子どもが生まれて間もない時期に保護活動を始めた堀本さんに対し、妻の夢月さんは当初、大反対だったと振り返ります。
動物たちの生活を支えることは、経済的にも決して楽ではありません。
【堀本慎也さん】「ヤギ1頭で1カ月のエサ代は4万円ぐらいかかってます。ほんまにびっくりしてます」
保護活動だけでは費用が賄えず、介護士の給与から不足分を補填している状況だといいます。
■触れ合える『動物園』 引き取った動物たちを一般公開
こうした資金難を解決するために取り組んでいるのが、引き取った動物たちを一般公開する「エール動物園」の運営です。
入場料は1人1000円で、収入は保護活動の資金に充てられます。
妻の夢月さんも朝から準備を手伝い、来場者は普段見ることのない動物たちとの触れ合いを楽しめます。
子どもたちからは「これってどこで捕まえたん?」という純粋な質問が飛び出すことも。
堀本さんは「ここにいる動物はみんな飼われとった子やからな」だと優しく説明します。
【堀本慎也さん】「来ていただいた方に『楽しい、いっぱい動物がおる』とかじゃなくて、おるってことはこんだけ動物が手放されているのが現実というのも受け止めてもらいたいです」
■「僕が動物を引き取らんでいい世界になってほしい」
今後の目標については…
【堀本慎也さん】「めちゃくちゃ大きい話になるんですけど、僕が動物を引き取らんでいい世界になれば本当にいいなと思うし、不幸な動物を出したくはないですね」
堀本さんの温かく大きな愛情で、きょうも小さな命が守られています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月23日放送)
