富山市の中学2年生が、極真空手の新種目で世界の頂点に立った。奥田中学校2年の中島聖陽選手(13)だ。先月、カザフスタンで開催された極真会館の世界大会で、11カ国から97人が参加した男子13歳の部に出場し、見事初優勝を飾った。取材当日、道場で迫力ある動きを見せる中島選手の姿に圧倒されながらも、その笑顔にはまだあどけなさが残る。強さの裏側には、父と二人三脚で積み重ねてきた膨大な経験と、家族の支えがあった。

右腕のワッペンが、すべての証

中島選手の右腕には、いくつものワッペンが縫い付けられている。「全国大会のワッペン。大会出場の権利をとった証。自分の好きなことで、楽しくて一番大切な存在」と、中島選手は誇らしげに語る。


所属する富山市の極真会館・小井道場には、小学生から大人まで200人が在籍している。世界約123か国で競技が行われ、直接打撃で知られる極真空手の道場として地域に知られた存在だ。その中でも、力強く切れのある動きでひと際目を引くのが中島選手である。

空手を始めたきっかけは、テレビで見た格闘技の試合だった。「テレビで格闘技の試合を見て、カッコいいと思って始めた。那須川天心選手が、憧れ。(那須川選手)は最初に空手を始めて強くなったので、僕も空手を始めて強くなっていこうかと」。小学4年生までサッカーに打ち込んでいた少年が、憧れの選手を追って空手の道へ踏み出した。
新種目「ハートポイント制」とは何か

今回の世界大会で中島選手が挑んだのは、「ハートポイント制」と呼ばれる空手の新種目だ。2022年頃から普及が始まったもので、今回が初めての世界大会開催となった。将来のアジア大会やオリンピックへの導入にも期待が高まっている注目の競技形式である。

指導する小井義和師範はその特徴をこう説明する。「(従来のルールでは)近づいて、ずっと打ち合いすることが、身体へのダメージ(になっていた)、その数を減らす。心臓部が急所だが、そこをあえてポイントにすることで守ったり、避けたりすることが生まれる」。
仕組みはシンプルだ。選手は胸を保護するセンサー付きのパッドを装着し、相手の突きが胸のセンサーに反応するとランプが点灯してポイントが入る。従来の動きに防御の要素が加わることで、駆け引きと多彩な技の応酬が生まれる。身体へのダメージを抑えながら、戦略性をより高めた競技形式といえる。
青森から四国まで 父と刻んだ2万キロ
世界大会の舞台で緊張に左右されず戦えた背景には、圧倒的な実戦経験がある。小井師範は「試合での実戦練習が多い。それはご両親の協力もあって、他の人たちよりも色々な大会に出ている数が多い。緊張に左右されずに戦えるスタイルにつながっている」と語る。

その実戦経験を積ませてきたのが、父・和希さんだ。多くの大会に遠征するため、和希さんの運転で北は青森から南は四国まで、毎週のように各地を転戦してきた。これまでに訪れた地域は20以上、走行距離は2万キロ以上にのぼる。
「たまに遠征とか、遠いから運転がつらいと思ったこともあるが、試合とか姿を見て、結果はどうあれ、頑張った姿とか、一生懸命やった姿を見られて、苦じゃなくなる」と和希さんは振り返る。
1日8時間、空手に費やす日々
中島選手の1日は空手中心に回っている。和希さんによると「朝1〜2時間走って、学校から帰ってきて1〜2時間(自主練習をして)、道場で3時間くらい、1日8時間くらいは空手に費やしている」という。13歳の中学生としては、驚異的な練習量だ。

部屋に案内してもらうと、趣味のストリート系の服やスニーカーが整然と並んでいた。ものを大切にする姿勢も、中島選手の強さを支える一面だという。

夕食はこの日、家族全員で焼肉へ。「試合終わりは来ている」と中島選手が言うと、両親は「勝てば」と笑いながら返した。好きな肉を聞けば「タン」と即答した。身長168cm、体重60kgの育ち盛りの13歳。階級を意識しながらも、世界で戦う体格づくりのため好きな肉を頬張る。「疲れた後に食べる焼肉は最高」と笑顔を見せる。
「世界大会も優勝していきたい」

カザフスタンの舞台で世界を制した中島選手が次に見据えるのは、直接打撃とハートポイントの両種目での世界大会制覇だ。「色々な大会とか全国大会でもっと優勝していきたい。世界大会も優勝していきたい」と力強く語る。
応援してくれる人たちへの感謝も忘れない。「応援をしてくれる人たちもいるし、父と母も応援してくれているので、頑張れる」。その言葉を受けた和希さんは「そう言ってくれると嬉しい。今まで二人三脚でやってきたという部分もある」と目を細めた。
富山から世界の舞台へ。2万キロを共に走り抜けた父と、日々8時間の鍛錬を重ねてきた中島聖陽選手の挑戦は続く。
(富山テレビ放送)

