富山市旅籠町にある老舗「吉村唐木店」で、ある変わり種の掛け軸が話題となっている。その名も『ウルトラマンシリーズ60周年記念掛け軸』。天神様や日本画が並ぶ店内で、ひと際目をひくウルトラマンとバルタン星人の姿は、初めて見る者に鮮烈な印象を与える。

ウルトラマンが水墨画に
掛け軸を制作したのは、ウルトラマンシリーズを手がける円谷プロと東京の掛け軸メーカーだ。原画を描いたのは日本画家の西嶋和文さんで、墨の濃淡で力強さを、墨のしぶきとぼかしで躍動感を表現した水墨画に仕上げている。


4代目店主の吉村崇さんはこう説明する。「闘いの場に臨むウルトラマンの緊張感と、バルタン星人の悠然と構える威圧感を表現している」。丈は190センチ。ウルトラマンとバルタン星人が一幅ずつ、受注生産の限定商品として販売されている。専用の桐箱にはシリアルナンバーと保証書がつき、価格は税込み8万8千円だ。

若い世代が店に足を運ぶように
大正時代から続く吉村唐木店は、今年で創業110年を迎える。店内には五月人形やひな人形が並び、伝統の技が随所に光る。しかし近年、和室や床の間が減る中で掛け軸の需要は落ち込んでいた。

そんな状況に変化をもたらしたのが、このウルトラマン掛け軸だ。吉村店主は言う。「掛け軸は中高年のお客様が多いが、40代以下や学生も興味を持って店に入ってくれる人も多く、まずは関心を持ってもらうことが第一歩なので、若年層への広がりを実感している」。インターネットや電話での問い合わせも相次ぎ、1960年代当時にテレビでウルトラマンを見ていた世代の親子連れや、海外からの観光客も訪れるという。
伝統工芸も「変化」で生き残る

掛け軸だけではない。同店では従来の伝統工芸品も、生活スタイルや住宅環境の変化に合わせて進化している。天神様はスペースをとらないコンパクトなものが登場し、ひな人形では「夜空に輝く天の川をデザインした黒いおひな様」が最近人気を集めているという。吉村店主は「すごくロマンチック」とその魅力を語る。

吉村店主はこう話す。「時代が変わり住宅環境の変化、お客様のニーズの変化、そうした変化に耳を傾けて対応しながら、大事な日本の伝統文化を次の世代に繋げていけるようにがんばっていきたい」。
職人の高齢化や床の間の減少など、伝統工芸を取り巻く環境は厳しい。しかしウルトラマン掛け軸のような試みは、掛け軸を「全く新しいアート」として再評価させる契機となりうる。洋室やリビングにも違和感なく飾れるそのインパクトは、伝統と現代をつなぐ一幅として、新たな価値を生み出しつつある。

(富山テレビ放送)

