「ローメンの鉄人」についてです。長野県伊那市で食堂を営む正木金内衛さんは、91歳の今も現役で厨房に立ち、伊那市のご当地グルメ「ローメン」を作り続けていています。健康の秘けつと仕事に注ぐ情熱を聞きました。
■「ソウルフード」県内外の客に人気
太い蒸し麺とマトンやキャベツを一緒に炒めます。
伊那のご当地グルメ「ローメン」です。
伊那市前原の住宅街にある1965年創業の食堂「萬楽」。
ローメンを求め、ランチタイムは県内外から客が訪れます。
静岡から:
「すごくおいしいです。味もあっさりしていて食べやすい」
市内から:
「ソウルフードですね、月に1回は食べたくなる。(萬楽は)下味が付いているので、ソースとかかけなくても、そのままですごくおいしい」
■91歳「生涯現役」の鉄人
厨房で鍋を振っているのは、店主の正木金内衛さん。
1935(昭和10)年生まれの91歳です。
着ているTシャツの胸には「生涯現役」の文字も―。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「これを見て、きょうも頑張らなきゃならんなという気持ちで頑張っています」
ローメンを作り続けて67年。
人気の味を守り続ける「ローメンの鉄人」です。
■「発祥の店」で修行して独立
正木さんが料理の世界に飛び込んだのは、24歳のころ。
先輩に誘われて「ローメン発祥の店」として知られる「萬里」で皿洗いの仕事をしていた時に、料理を教えてもらうようになりました。
30歳になった1965年、正木さんの師匠でローメンの生みの親である伊藤和弌さん(故人)にのれん分けを許されて独立。
当初は「萬里」の名前で、伊那自動車教習所の前に店を構えていましたが、1997年に市内の別の場所に移る際に「萬楽」に改名しました。
2020年から今の場所で営業を続けています。
■「命」と語るこだわりのスープ
文化庁の100年フードにも認定されているローメン。
提供する店ごとに、具材や味付けが異なるのも大きな特徴です。
香ばしく炒める「焼きそば風」と、スープで煮込んだ「スープ風」に大きく分かれますが、正木さんが作るのは「スープ風」です。
豚の頭やガラからとった豚骨ベースのスープを複数の野菜とともに煮込み、甘みとうま味を引き出しています。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「修業しているときに、この作り方教えてもらって、そのまま受け継いでる。(スープは)命です、一番大事です。お客さんが食べていただいて、スープを飲んで帰ったとき、一番うれしいです」
■B級グルメとして全国発信、名物に
人気を味を守る正木さんですが、過去には、こんな活動も。
「おいし伊那、ローメン!」
2011年には、ローメンを提供する店でつくる「伊那ローメンズクラブ」の会長として、B級グルメ日本一を決める大会に出場。ご当地グルメとしてのローメンの存在感を高め、全国に発信してきました。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「北は青森から南は九州まで。若い皆さんと一緒に、全国に鉄板を持って出かけました。伊那市の名物として、定着できたっていうのは自分の生きがいで、一生懸命やりたい」
創業当時から知る常連客は―。
55年来の常連客:
「楽しい人だよ。鉄人みたいな人じゃないの」
50年来の常連客:
「真面目な人ですよ、冗談も言うけど。ほとんど神様みたいな、多分90歳過ぎて作ってる人いないと思うんでね。体が続く限りは何とかやっていってほしい」
■畑仕事が日課 店の野菜も自分で
厨房に立つ正木さんをサポートしているのが、長女のあすみさん(61)と孫のはるかさん(30)です。
孫・はるかさん:
「元気の秘けつは、ずっと動いている。休みを知らない人で。歩いたりとか畑やったりしているから、休んでいるとこを見たことない」
毎朝の散歩と畑仕事が日課だという正木さん。
店で使う、キャベツ、ニンニクなどの野菜は自分で育てています。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「暇あるときには外で野菜作るのがね、健康のためになるかなっていうような気がして、それをお客さんに提供して、喜んでもらえりゃ、それをまた楽しみで、楽しくて」
■家族の支えで「生涯現役」を
笑顔で抱っこしているのは、初めてのひ孫になるいろはちゃん(7カ月)。
正木さんには新たな目標ができたそうです。
長女・あすみさん:
「第一の目標は、ひ孫が小学校にあがるまで、運動会が見たいからと言っていたので、胸に書いてある通り生涯現役で。私も腹をくくって手伝うと決めているので、やる以上はお手伝いをしたいと思っています」
萬楽・正木金内衛さん(91):
「家族の皆さんのおかげで、支えてくださるもんで、この年までできたんじゃないかと思う。本当に自分を支えてくれる家族に感謝です」
ローメン作りが生きがいとなっていますが、正木さんには多くの趣味もあります。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「これ『御嶽海』のつもりで彫ったんだよ。だけど(写真では)この後ろ姿がわからないんだよね」
彫刻刀で彫った「御嶽海」。
「彫刻」と「書道」が趣味で、店には多くの作品が飾られています。
Tシャツの「生涯現役」の文字も、自分で書いたそうです。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「趣味を持つと、それに没頭しちまって。いっぱい趣味があって、彫刻はやるし、こういう字も書くしね。そんな生活を自由奔放にやったから、自然に長生きができちゃったんじゃねえかと思う」
■厨房に立ち続けるのが一生の願い
91歳になり、耳が遠くなるなど年相応の衰えはありますが、ローメンにかける情熱は衰えていません。
萬楽・正木金内衛さん(91):
「振り返ってみると、もう91年も生きたかなあっていうような感じはありますけど、(他の店に)負けない味を作りたいと思うんでね。目標は、できるだけ自分の味がお客さんに喜んでもらえるまで、厨房に立ちたいと思っています。それが一生の願いです。明日だめになるかもしれんけど、それまで頑張りたいと思っています」
