福島県郡山市の障がい者福祉施設では、利用者によって様々な制作活動が行われている。そこで生み出された作品は、障がいを持つ人と社会をつなぐ懸け橋になっている。
■表現活動を支援
堀田和男さんは、かわいらしいイラストと共にその月の思い出をまとめた新聞を趣味で作っている。毎日、絵日記もつけている。
堀田さんが通っている郡山市の障がい者福祉施設「パッソ」は、社会福祉法人安積愛育園が運営し、「unico(ウーニコ)」というプロジェクトで障がいを持つ利用者の表現活動を支援している。
■花と葉を描く土屋さん
所属するアーティストは約70人。土屋康一さんも「unico」アーティストの1人だ。
施設の関係者は「その時に気になるものを描いていることが多い」「去年は、クマが多い時期にクマが来ないように願いを込めた絵を描いた」「色づかいがすごくきれいで、いつも素敵な絵を描いてくださる」と話した。
土屋さんの部屋は、窓も扉もカラフルな模様で埋め尽くされている。土屋さんの母はこの部屋について「10年くらいは経つ。明るくなった」と語る。
「花」と「葉っぱ」は、土屋さんの作品を象徴するモチーフだ。「自然が好きだから」と話す土屋さん。「絵を描くのは楽しいから好きです」と話した。
土屋さんの作品は、国内外で高く評価されてきた。トートバッグやTシャツなどコラボ商品も生まれ、土屋さんと社会がつながるきっかけにもなっている。
土屋さんの母は「もうそれが一番何より。今まで大変なこともあったけど、こういうのを見ているだけで忘れる。本当に親孝行してもらっている」と話す。
■足で描くことは個性 森さん
8月7日、unicoアーティストの作品を集めたイベントが郡山市で開催された。
公開制作を行ったのは、unicoアーティストの森陽香さん。脳性まひのある森さんは、足の指に筆を挟んで絵を描く。
「本来、手に麻痺とかが無ければ、みなさんみたいに手で描いていたと思う。足が身体で一番自由に使えるところなので」と森さんは話す。
長年かけてたどり着いた森さんだけのスタイルで、福島を知ってほしいという思いを込めて描き上げた。
「足で描くからこそ、みなさんに見ていただけるチャンスもあると思う。足で描くのも自分の1つの個性なのかなって、この頃思うようになってきた」と語った。
■アートが社会とのつながりを育む
会場には、土屋さんの姿もあった。訪れた人に作品を見てもらえる機会は、大きな刺激となっている。
障がいのある人にとって、アートはどのような意味を持つのか。
岡部兼芳さんは、安積愛育園が運営する福島県猪苗代町の「はじまりの美術館」の館長を務めている。
様々な企画展を開催しながら、unicoで生まれる作品の管理も行っている。福祉の現場と隣り合わせだからこそ、伝えたいアートの可能性があると岡部さんは言う。
「障がいのある方に触れる機会というか、知っていただくきっかけの一つというのはもちろんあると思う。そこだけに留まらない表現があると感じている。それは人と人をつないだり、自分の中の色んなイメージをふくらませたり、社会全体がお互いに思いやるような」
個性あふれるアートの数々、その制作活動は社会とのつながりを育みながら、障がいをもつ人たちの可能性を無限に広げている。
