洪水を受け止めた「地下神殿」…首都圏外郭放水路が“フル稼働”で台風19号から街を守っていた

カテゴリ:国内

  • 台風19号により全国各地の河川が氾濫、堤防が決壊
  • 埼玉県にある首都圏外郭放水路が洪水を防ぐ大きな役割を果たしていた
  • 今回、江戸川に50メートルプール約7673杯分の水を排出し洪水を防ぐ

世界最大級の地下放水路が洪水を防ぐ

12日から13日にかけ日本列島を襲った台風19号。全国各地の河川で氾濫、堤防の決壊が起こり、住宅街に甚大な被害をもたらした。国土交通省によると、台風19号により決壊した堤防の数は全国55の河川、79カ所にのぼったという。

そんな中、ある施設が洪水を防ぐ大きな役割を果たしていた。

その施設とは、埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路である。首都圏外郭放水路は地底50メートル、長さは春日部市上金崎から小渕までの約6.3キロを流れる、世界最大級の地下放水路だ。

提供:国土交通省江戸川河川事務所

中川、倉松川、大落古利根川、18号水路、幸松川といった中小河川が洪水となった時、洪水の一部をゆとりのある江戸川へと流すことができる。中川・綾瀬川の流域は、利根川や江戸川、荒川といった大きな川に囲まれているが、この地域は土地が低く水がたまりやすい地形となっているため、これまで何度も洪水被害を受けてきた。

また、川の勾配が緩やかで、水が海まで流れにくいという特徴があり、大雨が降ると水位がなかなか下がらない。さらに近年では、都市化が急速に進み、降った雨が地中にしみこみにくく、雨水が一気に川に流れ込んで洪水が発生しやすくなっている。

それが首都圏外郭放水路の完成によって、周辺地域で浸水する家屋の戸数や面積は大幅に減り、長年洪水に悩まされてきた流域の被害を大きく軽減した。

そして、台風19号が去った13日の首都圏外郭放水路の調圧水槽の様子がこちら。

13日の調圧水槽

床一面に水がたまっているのが確認できるが、まだまだ水を入れることが出来そうだ。

こちらの写真は台風19号が去った13日に投稿者のくもとり(@yama_sato3)さんが首都圏外郭放水路の見学会に参加した際に撮影したものである。



「洪水から守ってくれて感謝」や「今回は駄目かと思ったが耐えたのは驚き」などのコメントが寄せられ2万超のいいねが付いている。(10月16日現在)

構造は?「地下神殿」はどの部分?

首都圏外郭放水路は、各河川から洪水を取り入れる「流入施設」と「立坑」、洪水を流す地下河川の「トンネル」、そして地下空間で水の勢いを弱め、スムーズな流れを確保する「調圧水槽」、さらに地下から洪水を排水する「排水機場」などで構成されている。

提供:国土交通省江戸川河川事務所

河川の水位が上昇すると流入施設から水を取り入れ、立坑に水を取り込む。
立坑は、第1立坑から第5立坑まで全部で5本ある。各立坑の深さは約70メートル、内径約30メートルあり、スペースシャトルや自由の女神がすっぽり入る大きさだ。

13日の見学会の時点でも、第1立坑には約55メートルの水が溜まっていたという。

第1立坑は各立坑から送られてきた水を調圧水槽に送り込む役割を担っている。第3立坑と第5立坑は壁に沿って水が流れ落ちるドロップシャフトと呼ばれる方式を採用していて、これによって流入口の変形を防ぎ、60メートルの高さから水が落下することによる底盤への衝撃を和らげている。

13日の第1立抗

調圧水槽は地下水路のトンネルから流れてきた水の勢いを弱め、江戸川へスムーズに流すための施設で、水のくみ上げと排水を安定したポンプ運転で行うこと、ポンプを緊急停止させた時に発生する逆流を調節することが役割だ。内部は荘厳な雰囲気と、柱と空間の巨大さから「地下神殿」とも表現されている。

調圧水槽 提供:国土交通省江戸川河川事務所

そして排水機場は地下水路のトンネルを通って流れてきた水を、調圧水槽から巨大ポンプ・排水樋管を通して江戸川に排水すること、操作室で各流入施設の操作や集中管理を行い、水の流れを安全に制御する役割を担っている。

では台風19号では首都圏外郭放水路はどのような役割を果たしていたのだろうか。

50メートルプール約7673杯分を江戸川へ

国土交通省江戸川河川事務所 首都圏外郭放水路管理支所によると、12日午前11時30分に第2立坑から水を流入開始し、最後となった第3立坑も12日17時50分に流入を開始した。

首都圏外郭放水路には最大約65万立方メートルの水をためることができ、今回はその最大の量となる約65万立方メートルの水をためこんでいたという。これは東京ドーム約半分の水の量である。

今回の台風19号に限らず、出水によって施設に水が流入した際は最大65万立方メートルの水を溜め込んでポンプで排水するということだが、5つの川の水を同時に施設に取り込んだという点では2015年の鬼怒川決壊以来となるということで、まさにフル稼働の状態だったと言える。

第1立坑から調圧水槽への流入状況 提供:国土交通省江戸川河川事務所

そして、中川・綾瀬川流域の洪水を江戸川へ流した。江戸川へ流した水の量は1151万立方メートルで、50メートルプール約7673杯分となる。

最後まで水を流入していた第2立坑が流入を終了したのは16日午前1時10分。
首都圏外郭放水路が取り込んだ水の総量は1218万立方メートル(16日7時現在)で、物凄い量の水を受け入れていたことが分かる。地下神殿が街を洪水から守ってくれていたのだ。

まさに“縁の下”で支えてくれた首都圏外郭放水路。普段何もないときは稼働していないということだが、この施設に少しでも興味を持ってみた方は見学会に行ってみてはどうだろうか。

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