ローマ法王は、なぜ38年ぶりの被爆地訪問を決めたのか その背景と期待される世界への影響力【広島発】

カテゴリ:ワールド

  • 前回の訪問では、多くの人の心と行動に変化が
  • 今の世界情勢を法王は注視
  • 12億人のカトリック信者だけでなく、世界への影響は

2019年11月、ローマ法王フランシスコが被爆地を訪問する。
1981年のヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶりとなる法王訪問の影響について取材した。

口を閉ざしていた神父の「目を変えた言葉」

広島市中区にある世界平和記念聖堂。
この聖堂は、被爆後の広島で原爆犠牲者の慰霊と世界平和を祈って1954年に建設されたもので、カトリック教徒のみならず多くの人々が日々祈りを捧げに訪れる。

ここに特別な思いで法王フランシスコの広島訪問を待つ神父がいる。
深堀升治(ふかぼり・しょうじ)神父。
深堀神父は8歳のときに爆心地からおよそ3kmの南観音町の自宅近くで被爆した。

深堀神父;
私の弟と母が血まみれだった。それを見たときに神様を思い出したかと問われたら、(神様のことは)吹っ飛んでしまって、むしろ(弟と母を)今傷つけた人に対して、誰なのか。誰にやられたのか(という思い)」

教えに反する復讐心。
その思いを封じ込めるように、深堀神父は自身の被爆体験を口にすることはなかった。
しかし、深堀神父の考えを変えるきっかけがあった。

1981年 広島訪問した際のヨハネ・パウロ2世;(日本語で)
戦争は人間の仕業です。
戦争は人間の生命の破壊です。

1981年 ヨハネ・パウロ2世による、ローマ法王初めての広島訪問。

深堀神父;
『原爆というのは、戦争というのは人間の仕業なんだ。死なんだ。破壊なんだ』と言われたときに、そうなんだと。
だったら、「人間の仕業は後世に二度と起こらないように」ということを残すのが、私たちの使命なのではないかと、キリスト者の目が変わった

祈るだけでなく行動を。
ヨハネ・パウロ2世の言葉で救われた深堀神父が、この度の法王フランシスコの広島訪問に期待することとは…

深堀神父;
法王様の目というのは、私たち広島というローカルな人の目と、アンテナも全然違う。
そういう思いで、今度のフランシスコ法王のメッセージが何なのか。ただ期待するだけ。

作品に込めるメッセージ

ローマ法王の訪問は、カトリック教徒以外にも影響を与えた。
国内外で被爆体験を証言してきた、七宝作家の田中稔子(としこ)さんは、6歳の時に被爆した。
しかし田中さんも、若いころは自身の被爆体験を人には語らなかったという。

七宝作家 田中稔子さん;
“私は原爆にもあったことがない”という顔をして。原爆作家とか、そういう風に言われるのは死んだ人に対して冒涜だと思っていた。

田中さんにもきっかけが訪れる。
ヨハネ・パウロ2世の寄贈品として、田中さんの作品が選ばれたのだ。

七宝作家 田中稔子さん;
法王様が後押しをされたかもしれません。『メッセージを出すことが良いことなんだ』と。
それまでは隠していたことも、それをメッセージすることで、核兵器のない世界になるかもしれない。微々たる力ですけど、それを感じた。

それ以降は、作品にも原爆のメッセージ性が強いものが反映されることになった。
今では英語を独学で覚え、外国人にも被爆証言を行っている。

七宝作家 田中稔子さん;
法王は、『戦争は人間の仕業』とおっしゃるんですから、人間が何とかできるはず。
戦争もできるが、平和も作ることができる。
そういう面でも、少し世の中を変えていかないといけないなと。力のない老人だけどそういう風に強く思っています。被爆者として。

法王を近くで見てきた日本人が語る“法王の想い”

法王フランシスコを、間近で見続けてきた日本人がいる。
元バチカン公使の徳安茂(とくやす・しげる)さんは、フランシスコ法王の温かい人柄に触れてきた。

元バチカン公使 徳安茂さん;
法王フランシスコの人格は、巨大な感情の人。ハートの人。
常に弱者、これは上辺だけでなくホームレスを招いたりして。
よく彼のメッセージで、『まずお祈りしなさい。しかしそこに留まってはいけない』と言う。
『考えなさい。勉強しなさい。できたら行動に移しなさい』

ヨハネ・パウロ2世の訪問から38年。
法王フランシスコは、なぜこのタイミングで広島を訪れるのだろう?

元バチカン公使 徳安茂さん;
法王フランシスコは口癖のように、『人類は広島・長崎から何も学んでいない』と言う。

イランの核合意離脱や、アメリカとロシアのINF全廃条約失効などの動きに、法王フランシスコは反応していると徳安さんは見ている。

元バチカン公使 徳安茂さん;
核軍縮がどんどん後退している。
実際そういう客観的事実が最近あるにも関わらず、それを巻き返すだけの運動が全然ない。
ここはやはり法王としては、今来ないといけない。核問題について無関心のグローバル化を、ここで抑えたいということで決めたんだと私は思う。

世界12億人とも言われているカトリック教徒。
その法王フランシスコが、広島の地を訪れるということはどれほどの影響があるのか。

元バチカン公使 徳安茂さん;
間違いなく、瞬間風速的には世界レベルで大変注目される。
改めて核問題の深刻さ、特に今現在我々が置かれている深刻さを考え直す、良い契機になる。
今回の法王フランシスコの広島訪問を、どのように日本人が、特に広島・長崎の方ですけどね、どのように持続させて運動に結びつけるか。
やりかた次第では、オバマ大統領の広島訪問とは全然違った効果を出せると思う。

多くの人の思いを受けて、法王フランシスコは広島で何を発信するのか。
日本訪問は11月23日から4日間の日程で調整が進められていて、24日に被爆地である広島・長崎両市を訪問する予定になっている。

(テレビ新広島)

FNN.jpプライムオンラインでは、8月6日(火) 8:00頃から、
平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)の様子を以下のURLにて配信予定です。

https://www.fnn.jp/live/1

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