神戸市が「タワーマンション」建設禁止令…どこが問題なのか聞いてみた

カテゴリ:暮らし

  • 神戸市が新たなタワーマンション建設を2020年7月から規制
  • 人口増加に追いつかず子育て関連施設などが不足
  • 修繕積立金不足でタワーマンションがスラム化する?

ビルが立ち並ぶ大都会の中でもひときわ高くそびえる「タワーマンション」に、あなたは住んでみたいと思うだろうか?
低層住宅では絶対味わえない眺めの良さはもちろん、魅力的な共有施設やサービスを備えているなど、タワーマンションに憧れる理由はいろいろありそうだ。

ところが、兵庫県の県庁所在地で約150万人が住む神戸市は7月1日にタワーマンションを規制する条例を可決した。

出典:神戸市 (以下全て)

来年7月に施行されると、JR新神戸駅、三ノ宮駅、元町駅、神戸駅を含む292ヘクタールの範囲で、新たに建てる敷地面積1000㎡以上のビルは、住宅部分の容積率が400%までに制限される。
これは、ビルを建てる「敷地面積」に対し、建物の「延べ床面積」を4倍までに制限するもので、実質的にタワーマンションが規制されることになる。

※(図の水色部分がタワマン規制、オレンジ部分は一切の住宅建築を規制する)

タワーマンションが集中したワケ

神戸市の都心部は、阪神・淡路大震災以降、復興を経て再整備が進められた。
特に商業地域は、商業だけでなく行政・文化・観光など、様々な機能を集積させる目的で他のエリアより高い容積率が指定された。すると、高容積率を生かしたタワーマンションが数多く建設されることになった。

その結果、神戸市内にある高さ60メートル以上のマンションは平成30年6月時点で69棟となり人口が急増。
前述したJRの駅がある中央区には、そのうち24棟が集中している。

ところが、人口の増加に追いつかず、学校など子育て関連施設が不足
さらに災害時の避難場所や備蓄の確保などが問題視され、本来の目的である都市機能の集積も阻害されるという結果に陥った。
そこで、都市機能と居住機能のバランスのとれた街づくりを目的として、建築物の用途を制限することになったという。

タワーマンションの問題点は他にも

そして、タワーマンションは、修繕積立金の問題もこれまでに指摘されている。

長い年月にわたってマンションを快適に使うには、こまめなメンテナンスと10~15年などの周期で行われる修繕工事が欠かせないが、国土交通省が公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、20階以上のマンションにおける修繕積立金の適正額は、月々1㎡あたり206 円だという。
しかし、マンションの分譲事業者が、修繕積立金の当初月額を著しく低く設定することが一般的にみられ、修繕工事費が不足する事例もあるそうだ。

神戸市も例外ではないようで、公表された資料によると、兵庫県にある201 戸以上のマンションの平均修繕積立金は適正額の半分以下で他の地域に比べて低い。

また、2015年に神戸市中央区のタワーマンション19棟の3,870戸にアンケートを配布したところ、回答が得られたのは、わずか24%の928戸にとどまった。
神戸市が2018年に発足した「タワーマンションのあり方に関する研究会」は、この結果について「タワーマンション居住者のマンションの維持管理に対する関心が低いことが,このような結果として現れている」と考察。
さらに「この無関心層の広がりが様々な問題を引き起こすことになるとの懸念がある」と指摘している。

そして、住民付き合いに関するアンケートでは、マンション内・外いずれも「ほとんどない」が最も多かった。
同研究会はこれについて「マンション内あるいは地域のコミュニティとの隔絶が起きているのではないかとの状況が窺える」と報告書にまとめている。
報告書は他にも「災害への対応」「高層階住民の外出行動の減少」など、タワーマンションのあり方に関する様々な課題が検討されている。

神戸市がタワーマンション規制をしなかったら、どうなってしまっていたのか?
そして、タワーマンション自体は魅力的だと思われるが、長い目でみるとさまざまな課題があるようなので、「タワーマンションのあり方に関する研究会」の委員も務めた、近畿大学建築学部建築学科講師の佐野こずえさんに聞いてみた。

2050年の神戸市は…

――神戸市のタワーマンション規制をどう思う?

神戸市として、マスタープラン(基本的な方針)を明確に打ち出したことは評価できると思います。
市全体として、長期的にバランスよく職住を構成することを意識し、具体的に明示できているのではないでしょうか。

――神戸市がタワーマンションを規制しなかったら2050年にどうなっている?

30年ではまだ大きな影響はないかもしれませんが、商業施設は激減し、景観の変化から観光都市としての需要が下がり、周辺都市のベットタウン化する可能性があると思います。

修繕積立金不足でタワーマンションがスラム化の可能性

――「修繕積立金」が不足するとどうなるの?

修繕積立金は日常的なメンテナンスに使用される程度の少額に設定されている場合もあり、大規模修繕時に費用が足りず、一時分担金を徴収することもあります。
この時、所在が不明な場合や、所得が低くなってしまった場合などにより、一時負担金を徴収できない区分所有者が存在すると、大規模修繕が進まなくなります
大規模な修繕が行われないと、マンション自体の価値が下がり、空き家が増加することにより、スラム化(管理不全で荒廃した状態)を招く可能性が発生します。
また、タワーマンションの場合、複合的な間取りになっていることが多く、様々なライフスタイルの居住者が混在しているため、価値観も多様化しており、価値観の統一を図ることが困難であると考えられます。

――タワーマンションはなぜ「人付き合い」が希薄なの?

タワーマンションはセキュリティーもよく、居住者以外が敷地内に入ることは困難です。
周辺との関係性を考えて設計されていないことが多いため、周辺との関係性も構築しにくくなっています。
また、タワーマンションに限らず、マンション内の自治会が独立して存在し、周辺の既存の自治会活動に入らない人が多いからでもあります。

――タワーマンションは、なぜ「災害」に弱いと言われるの?

タワーマンションは、大規模地震にも対応した耐震を行っています。
しかし、電気・水道・ガスのインフラが復旧しないと生活自体がままなりません。
例えば、中・低層のマンションでしたら電気が復旧せずエレベーターがない状態でも生活は可能ですが、タワーマンションの場合エレベーターの復旧は不可欠です。
水道・ガスも同様に止まっている場合は、必要な物資を超高層階まで運ぶことは困難です。
一時的に避難するにしても居住人数が多いため、避難する場所にも困ります。そのため、災害に弱いともいわれています。

――タワーマンションでずっと安全に暮らすにはどうすればいい?

事前にしっかりとした長期管理計画を整え、常に社会の動きをリサーチしつつ、良好なコミュニティの形成を意識することだと思います。
人任せにせずに、自分自身が管理する共同住宅であると認識し、積極的に管理にかかわるべきことなのだと考えてほしいです。

日本のタワーマンションは過多

――他の街でタワーマンションが規制される可能性は?

各自治体がマスタープランをどのように策定するかによると思います。
ただ、大都市中心部に需要が偏っているので、規制をかける可能性がある自治体は多くはないと思います。

――日本にタワーマンションは多すぎる?

都市のインフラを考えると、タワーマンションは多いと思います。
都市部では空き家率は高くないのですが、空き家数は多く、数だけでみると十分な住居数はあると思います。

――タワマンを買うかか迷っている人へのアドバイスは?

タワーマンションのメリット・デメリットの両方を知ったうえで、将来的な展望を踏まえて購入を検討して欲しいです。

神戸市の場合は、タワーマンション自体に問題があったというより、都市機能と居住機能のバランスが崩れていたことが問題のようだった。

全国的にも、都市部では競うように建設されているイメージのあるタワーマンションだが、長い目でどんな街づくりを描いているのかも、購入を検討する際にしっかりチェックする必要がありそうだ。