――2020年度入学生がこのまま卒業すると、社会人になってから、何らかの影響が出てくる可能性はある?

まず、就職活動は友人のやり方を見習ったり、情報交換をしながら進めたりすることも多いので、孤立することで本人たちの不安が高まったり、活動に乗り遅れるような学生が多く出現することが考えられます。

就職してからも、同窓生とのやりとりが希薄な場合は、異なる企業や異業種のことを相互に学ぶといったことが少なくなる可能性があります。

学生の中にはオンラインの学びを強く好む学生もいて、就業してからのリアルなやり取りに苦手意識を持つ者が多いかもしれません。ただし、これらはいずれも可能性であり、リカバリーできるものでもあります。

また、2020年度入学生も多様であり、コロナ禍を乗り越えて成長している学生も多くいます。

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――2020年度入学生にどのような支援が必要?

大学側には、友人と切磋琢磨する機会を研究活動や就職活動の中で作ってほしいと思います。2年間に近い空白がある分、他の学年よりも、より手厚い配慮が必要になります。

研究活動では、卒業論文や卒業制作を行うタイミングでもあります。ゼミなどで交流する機会を、例年以上に増やしてほしいと思います。就職活動も、成長の大きな機会です。

孤立した活動にならないように、情報交換の機会や、悩みや不安を共有する機会を意識的に増やすなど、リカバリー策を考えてほしいと思います。

2020年度に入学した中学生・高校生、入社した社会人への影響は?

――2020年度に入学した中学生、高校生にも、同様の傾向はみられる?

中学生、高校生については、別の調査を行っていますが、「入学直後に部活動に入れなかった」といった同じような課題が出現しました。

また、休校中は生活習慣の乱れや、十分な学習ができないといった状況も見られました。入学直後の生徒には、とくに学習面での影響が、他の学年よりも大きかったと考えます。

しかし、休校期間は長い地域でも2か月にとどまったこと、その後は対面100%が原則であったことから、影響は限定的だったと考えます。我々の調査でも、学校再開後の生活は以前に戻り、影響はかなり限定的であったことが確認できています。

大学生は、感染拡大防止のために登校停止が長期にわたった影響が大きいと考えます。


――2020年度に入社した新社会人は?

新社会人も在宅ワークが中心であれば、人間関係のネットワークが作りにくいといった課題が、出る可能性はあります。

ただ、全面的な在宅ワークは多くの企業は一時的なものだったこと、現在、在宅ワークを継続している企業は限られること、企業側もコミュニケーションが減らないような対策をしていることから、影響は限定的ではないかと推察します。



ベネッセ教育総合研究所によると、「成長を実感していない」割合が顕著な2020年度に入学した大学生。彼らは現在、大学3年生。大学生活の残り1年半ほどでリカバリーできるよう、大学側には手厚い支援・サポートをぜひ行っていってほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。