新酒の金賞受賞数日本一の喜びにわく福島県だが、酒造りをめぐっては少し心配な話題も。「令和のコメ騒動」の影響が、日本酒業界にも押し寄せている。
■「令和のコメ騒動」の余波
田んぼの中に青々と輝くのは酒米の苗。
福島市の丹野友幸さんは毎年45トンほどの酒米を生産している。丹野さんは「食べる用のお米の価格が非常に去年は良かったわけですよね。それに比べて、酒造好適米は例年通りと言うか、なかなか再生産するには難しい金額のまま去年は終わってしまったので。そこで高い値段で取引されるお米を選んで作っていくというのは、米農家の経営的にはそういう選択肢が出てくるというのは当然」と話す。
■コメの値上がりで酒米の作付けが減る見込み
これまで主食用のコメよりも高い価格で取引されてきた酒米…しかし、主食用のコメはどんどん値上がりを続け、2025年4月の取引価格は過去最高を記録。
丹野さんは酒米の生産を維持しているが、福島県酒造協同組合によると、2025年の県内の酒米の作付け面積は、2024年よりも減ることが確実な見通しだ。
■生産量減で酒米が値上がり
会津坂下町の豊國酒造では、精米した酒米を年間約20トン使用。酒米の生産量が減ったことを受けて、最も多く使用している「夢の香」の価格は、この1年で1500円から2000円ほど値上がりしていて、関係者の間では、2026年は2倍ほどになってしまうのでは、という懸念もささやかれているという。
■酒蔵で酒米の取り合いを懸念
豊國酒造の高久功嗣専務は「秋に予想以下の収量になってしまった場合に、かなり大変なことになってしまうなと。それこそ、酒米を酒蔵で取り合うようなことがもしかしたら起こってしまうのではないかなと。一番怖いのは、酒米を作らなくなる農家さんが増えてしまうことだと思うんです。将来的に酒米を作ってくれるようになる農家さんを増やすアクションというのを、酒蔵から農家さんに持ちかけることは必要になってくると思う」と話す。
日本酒の価格高騰や酒米の「コメ不足」にも陥りかねない「令和のコメ騒動」。
福島の誇りを守るためにも早期の解決が望まれている。