ことしに入って、大阪府内で、いわゆる「ロマンス詐欺」の被害が急増している。
そんな中で被害を防止するため、高校生たちが詐欺の流れを再現するツールを開発した。

■「なんだか落ち着く」甘い言葉に乗せられて… 「ロマンス詐欺」被害の仮想体験
スマートフォンに表示されr田野は、イギリスに住んでいると名乗る男性からのメッセージ。
やり取りを続けるとビデオ通話がかかってきた。
イギリスに住んでいると名乗る男性(再現映像):普段あんまり言葉にしないけど、君と話すとなんだか落ち着くんだよね。
甘~い言葉に乗せられていると・・・。
イギリスに住んでいると名乗る男性:母の容態が悪化してすぐに手術が必要と言われました。100万円ほど必要なんです。
仮想体験した人:『好きや』言うてはるわ。
仮想体験ツールの音声:気づいたらあなたのことが気になってて…。
この日、大阪市内で行われたのは、SNSを介して恋愛感情を利用する「ロマンス詐欺」被害の仮想体験だ。
仮想体験した人:こんなことがあるんやと知っているけど、いざやってみると、その世界にぐっと一瞬で入り込んでしまうのかなと。

■警察官や専門家のアドバイスで高校生がツール開発
大阪府警が現在、啓発活動のために活用しているこちらのツール。実は、開発したのは高校生なのだ!
開発した高校生:ボタンと送るメッセージを変えて、わかりやすく…。
都島工業高校のコンピュータ研究部の生徒たちが、2カ月かけて開発に取り組んだ。こだわったのは、リアリティーの追求だ。
大阪府警 担当者:1万円引き出します、引き出せました。次、20万円とか30万円。気づかなくて、もう一回という人は、そこから100万、200万円というのがリアル。
被害の実態を知る警察官や専門家がアドバイスし、選択肢に応じて手口が変化するプログラムを構築。
「ひったくられた」「結婚式あげるために費用がいる」などと、様々な方法でお金を要求する。
体験ツールを作成した高校生:使っていだたける皆さまに、より分かりやすく伝えたい。
都島工業高校・電気電子工学科 杉本諭先生:恋愛経験がない子とかも多くて、新鮮な感じで、役立つアプリを作っている感じがいいなと。

■「だまされた男によく似てるわ」ロマンス詐欺被害者が体験
高校生のこうした取り組みの背景には、「ロマンス詐欺」の被害が大阪府内で急拡大している現実がある。
大阪府警によると、ことし1月から3月の被害件数は、なんと、前年と同じ時期の4倍以上に増加した。
取材班が訪ねたのは、実際にロマンス詐欺の被害に遭った60代の女性。
おととしSNSで知り合った、保険会社の役員で「ケビン」と名乗る男におよそ520万円、さらに先月、別の人物からおよそ75万円をだまし取られたという。
ロマンス詐欺の被害者(60代):一日何回もメールが来たり、それが毎日続くんですよ。そのうちどんどん、この人めっちゃいい人やんとか。ほんまにロマンス的な感じの優しい人であったりとか。
女性に、高校生たちが開発したツールを体験してもらった。
(仮想体験ツール:君と一緒にいるとつい素直になっちゃうんだよ…)
ロマンス詐欺の被害者(60代):だまされた男に似てるわ。
AIなどで顔や声まで偽装し、ビデオ通話で相手を信じ込ませる手口も、横行している。

■「体験をきっかけに被害を防止して」とツール開発の高校生
仮想体験ツールでビデオ通話をした後、ロマンス詐欺の被害に遭った女性は、「時間的にもばっちりやね、だいたい3分ぐらいでしょ。あー言う言う。『世界旅行に行こう』とか、『一緒になったら』とか。そのためにも『投資で稼ごう』と。あ、こういう手口はどっかで聞いたことあるなとか、詐欺の手口ってこんなんなんやって、ある程度の知識がわかったら、少し警戒心を持てたかもしれない」と感想を述べた。
知っているのと知らないのとでは大違い。
このツールは、大阪府警のホームページなどから利用できるということで、生徒たちは体験をきっかけに被害を防止してほしいと呼びかける。
都島工業高校コンピュータ研究部 朝田寛部長:手口を知ってから、こんなんあったんやと。引っかかる前に知っていただくというのに、一番使えるかなという感じがします。

■ロマンス詐欺は「もっぱら最近は暗号資産が悪用」
被害防止のツールを開発した高校生たちの取り組みについて、関西テレビの加藤さゆり報道デスクは「高校生にとっても成功体験になったのでは」と話す。
関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:ツール開発監修の専門家が、大阪府警の方と結び付けて、今回開発に至ったらしいんですけどね。高校生にとっても本当にいい成功体験にもなってるかもしれないし、ぜひこれを全国の例えば警察とかにも導入してもらえたら、役立つんじゃないかなと思いました。

詐欺の手口を事前に知っているのと知らないのとでは、だまされる恐れにも違いが出るようだ。
元兵庫県県警・刑事部長の棚瀬誠さんはロマンス詐欺の実態について「恋愛感情につけ込むので、警察や家族が注意しても被害者が逆上してしまうこともある」と話す。
竹上萌奈キャスター:客観的に見ていると、甘い言葉でちょっと気づけるんじゃないかなって思うんですけど、そんなことはないんですか?
棚瀬誠さん:私もそう思います。ただ犯人も手口が巧妙でして、ロマンス詐欺。“ロマンス”にあるように、恋愛感情につけ込んでくるんですね。そうすると私もともと警察官ですけれども、警察や家族から『だまされてるんじゃないの?』と言われても、本人からすると、『私の彼氏や彼女がだましているの?』と逆に逆上されてしまう。そこまでゆっくりと、いわばロマンスを『仕上げてきた』最後に、お金の話が出るって、こういう手口ですので最初からお金の話はなかなか出てこないんですね。
竹上萌奈キャスター:最近の傾向から、どのような注意点がありますか?
棚瀬誠さん:そもそも『お金をください』っていう段階で、詐欺だと気づいていただきたいわけなんですけれども、銀行送金だと、足がついてしまうので、もっぱら最近は暗号資産が悪用されています。
竹上萌奈キャスター:暗号資産だと足がつかないっていうことなんですね。やり取りをするのはいいけど、暗号資産を送ってなどときたら、やはり『これは詐欺なんじゃないか』と強く思ったほうがいいですか?
棚瀬誠さん:その前に、やはり『お金をください』というSNSでのやりとりは、詐欺だと思っていただきたいです。ただその上で、信じていてもなお、暗号資産が出てきたら、これ『ほんまもん』だと思ってほしいです。
太田昌克さん:このIT時代だから、こうやってどう我々が免疫力を付けていくかっていうこともすごい大事で、この高校生のツールというのは、私たちのIT時代における『免疫力アップ』ですね。
(関西テレビ「newsランナー」2025年5月19日放送)
