「約2000人以上の従業員が今も窮地に立たされて、つらい状態で日々過ごしています」

こう訴えるのは、混乱状態が続く脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の元従業員。

数カ月分の給与の未払い、全ての店舗での休業。こうした事態を受けて元従業員たちが、運営会社の“破産”を裁判所に申し立てる異例の対応に出た。

混乱は、どこへ向かっていくのか。

「ミュゼプラチナム」
「ミュゼプラチナム」
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■総額約15億円にのぼるという『給与の未払い』元従業員らが破産申し立て

全国に約170カ所の脱毛サロンを展開する「ミュゼプラチナム」。この業界大手企業をめぐり、裁判所で5月16日、ある申し立てが行われた。

代理人弁護士:大手脱毛サロン『ミュゼプラチナム』の債権者による破産手続き開始申し立てを実施させていただいた。

ミュゼプラチナムで働いていた従業員など10人が、16日午前、東京地方裁判所に破産手続きの開始を申し立て、資産の流出を防ぐため、裁判所が選任する破産管財人のもとで債務の調査を行う必要性が高いと訴えた。

最大の理由は、『給与の未払い』だ。

運営会社によると、未払いになっているのは従業員2300人余りの、ことし1月から4月に支給される給与で、総額は約15億円にのぼるということだ。

給与の未払いが総額約15億円にのぼるという
給与の未払いが総額約15億円にのぼるという

ミュゼプラチナム元従業員:給与の未払いが続いていて、精神的にも苦痛が長らく続く中で、通常の日常が過ごせないところと、お客様に対しても申し訳ない気持ちが強く、申し立てをさせていただきました。

元従業員「精神的にも苦痛が長らく続く…」
元従業員「精神的にも苦痛が長らく続く…」

■3月就任の運営会社社長「皆さんにも…原因がある」

なぜ、このような事態になったのか。

運営会社からの回答:弊社において重大な乗っ取り事案が発生いたしました。

ことし2月、当時、運営会社の会長を務めていた男性が突然、臨時の株主総会を開き、当時の社長や全役員を解任し、新しい社長を招き入れたという。

その後、争った裁判で旧経営陣の地位が認められ、3月31日付で、現在の高橋社長が就任。

しかし社長になるまでの乗っ取られた2カ月の間、運営資金の提供がなかったため、給与が払えない状況になったというこだ。

乗っ取りで給与が払えない状況になったという運営会社
乗っ取りで給与が払えない状況になったという運営会社

高橋社長が就任直後に開いた従業員への説明会では、会社都合の退職『退職勧奨』を告げた上で、次のように話した。

ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長(3月):皆さんにも、僕にも少なからず、ミュゼプラチナム全体で売り上げが上がらなかった原因があるんじゃないですか。給料って、公務員じゃないので、売り上げからしか払われないです。そこが何かミュゼの方々(従業員)は理解できてない。

「皆さんにも…原因がある」と言う運営会社社長
「皆さんにも…原因がある」と言う運営会社社長

■運営会社社長YouTubeで謝罪し給与支払い計画示す

従業員への責任転嫁ともとれる発言をしていたが、5月15日までに公式YouTubeチャンネルを開設。一連の問題について謝罪した。

ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長:お客様、関係者の皆様、従業員の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしてしまったことを深くおわび申し上げます。申し訳ありませんでした。

そして従業員に対し、未払いとなっている給与の支払い計画を示し、5月末から支給を始め、年内までに分割で全額支給していくと伝えた。

今後については…。
ミュゼプラチナム運営会社 高橋英樹社長:『逃げない』というのは単なる言葉ではありません。具体的な行動と結果で示していくことを、ここにお約束いたします。

「申し訳ありませんでした」謝罪した運営会社社長
「申し訳ありませんでした」謝罪した運営会社社長

■「信用できるものではない」破産申し立てに踏み切った元従業員たち

運営会社が給与の支払い計画を示しても、破産手続き開始の申し立てに踏み切った元従業員たち。

ミュゼプラチナム元従業員:今までも給与の遅滞があった際に、必ず『何日まで待ってください』と何度もあったので、今回の件(計画)があっても信用できるものではない。

代理人弁護士:かなりの負債がありますので、本当にできるんですかと。

そして元従業員は、給与が支払われていないだけでなく、なかば強制的に退職をさせられたことや、その手続きに不備があることなどを訴えた。

ミュゼプラチナム元従業員:なかば強制的に3月31日付で退職するように促されて、同意をしないと離職票を出せないという現状だったので。同意せざるを得ないという現状で、今は退職済みという形。

ミュゼプラチナム元従業員:離職票の発行などもだいぶ遅れている状態で、自宅にも届いていないので、自分がいつまで在籍していたのかすら不透明な状態で。

「自分がいつまで在籍していたかすら不透明」という元従業員
「自分がいつまで在籍していたかすら不透明」という元従業員

■9年勤務の女性「正直もう関わりたくない気持ち」

元従業員たちの訴えを受けて、16日午後4時半ごろ、大阪の店舗で9年間勤務していた女性が取材に応じた。

大阪の店舗で9年勤務していたAさん:正直もう(ミュゼに)関わりたくない気持ちもあるんですけど、お客さまも従業員もどっちも納得行く形で、お客さまは施術ができて、従業員はお給料払ってもらえて。破産することによって、そうなればうれしい。

(Q.支払い計画の振り込み日については?)
大阪の店舗で9年勤務していたAさん:ほとんどの人があてにしていないと思う。何回も『給料入る』って、今まで入っていないので、入ってからじゃないと信用できない。

運営会社は15日、関西テレビの取材に対し、「申し立てが行われるという報道が事実であるならば、真摯に受け止めて、引き続き事業再生に向けてまい進してまいります」とコメントしている。

9年勤務の女性「正直もう関わりたくない気持ち」
9年勤務の女性「正直もう関わりたくない気持ち」

■従業員の破産申し立てはハードルが高い

従業員にとっては生活に関わる大きな問題となっている。

また前払いでお金を払っている利用者の方たちも、大変な不安を感じているだろう。

関西テレビ 藤本景子アナウンサー:この状況で、支払った分を返してくれと言って、返されるのかというと、厳しい雰囲気が伝わってきます。仮に『来月、再開しますので来てください』と言われても、社長の従業員に対する発言の動画を見て、会社と従業員がこんな状態で、脱毛というセンシティブなことをやってもらうのを、どう捉えるのか不安もあります。

今回、従業員側が破産の申し立てをしたということだが、梅田パートナーズ法律事務所の西村雄大弁護士によると、「あまり例がないケース」だという。

会社の財産や負債に関する資料が必要で、裁判所に収める費用(予納金)も高く、申し立てのハードルそのものが高いということだ。

さらに会社側が反論することになると、決定までにかなり時間がかかることもあるということだ。

従業員側の破産申し立ては「ハードルが高い」と専門家
従業員側の破産申し立ては「ハードルが高い」と専門家

■「リスクが発生するビジネスの構造があったのか」と藤井教授

京都大学大学院 藤井聡教授:こういう事態に陥ったのは、一体どういうことがあったのか。どういうリスクの管理が問題だったのか。そしてリスクが発生してしまうような、もともとのビジネスの構造があったのか。制度設計のところでしっかり考えないと。

京都大学大学院 藤井聡教授:要するに前払いで多額の会費を払って、それを繰り返していくビジネススタイルは、どうしてもリスクがあります。消費者保護の観点からも、こういったことへの対策を、政府にもしっかりやってもらいたいと思います。

ミュゼプラチナム側としては6月から営業再開するとしているが、今後どうなるのか注目される。

「政府にもしっかり対策してもらいたい」と藤井教授
「政府にもしっかり対策してもらいたい」と藤井教授

(関西テレビ「newsランナー」 2025年5月16日放送)

関西テレビ
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