車を運転するとき目に入るのが至る所に設置されている”道路標識”。

読めない道路標識
読めない道路標識
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目的地や道路上の位置を示しますが、完全に消えている。

実はこのような”読めない標識”がある地域で急増している。

一体、何が起きているのか。

読めない道路標識
読めない道路標識

■自動車教習所では道路標識を見て運転することを推奨

取材班が訪れたのは自動車教習所。この日行われていたのは高齢者向けの講習会だ。

高齢者講習指導員:カーナビという便利なものがありますけど、カーナビばっかり見ていると、わき見運転になりますので。案内標識見て目的地に進むというのが一番おすすめする運行です。

指導員が話したのは目的地や道路上の位置を示す“道路標識”について。

カーナビが普及するいまの時代だが…

受講者(70代):標識を見ながら(運転)の方が多いですね。
受講者(70代):カーナビは一切利用しません。カーナビ頼るとカーナビばっかり見る癖がつくので、事故の原因になったりします。
受講者(60代):カーナビって近くというか近距離のところしか映ってないので、パッと見てあっちなんやなっていうのが標識があったら分かるので安心です。

受講者から口々に出たのは“道路標識”の重要性。

高齢者講習指導員
高齢者講習指導員

■風が吹いたら今にも剥がれ落ちそうな標識も

しかし今、関西のある地域で標識を巡る問題が…取材班が訪れたのは兵庫県姫路市。

世界遺産・姫路城がある観光地ですが、市内を車で走っていると―

”文字が消えた道路標識”があちこちに。

記者リポート:『白』…なんとか『橋南』と書いていますが、よく見ると手前側もベロベロに剥がれて反対側も真っ白で文字読めません。

この交差点では、4つの標識のうち3つが読めない状態。

風が吹いたら今にも剥がれ落ちそうだ。

読めない標識
読めない標識

■市内の老朽化した標識は見つけただけでも20個

この状況に地域住民は―。

近隣住民:たまたまやな。

(Q:こっちも見てください)
近隣住民:ほんまや、なんでやろ!

近隣住民:この頃みんなこんなんですよ。今多いねこれが。

市内の老朽化した交差点の標識は、この日取材班が見つけただけでも20枚!

観光客など多くの人が訪れる姫路で、何が起きているのか。

近隣住民
近隣住民

■標識は1枚20数万円

標識を設置した一般社団法人を訪ねると…

兵庫県道路標識標示業協会 角田敏実委員長:2006年のじぎく兵庫国体に向けて交差点名標識を整備しようと県内一斉に設置。同じようなタイミングで剥がれてきているのかな。

理由にあげたのは2006年に兵庫県で開催された国体。

県外から多くの人が訪れるため、道路標識を新たに作ったり張り替えたりした。

国体開催から20年ほどが経った今、老朽化の波が一気に押し寄せているのだ。

姫路土木事務所によると、姫路市の交差点の標識はおよそ1500枚。

3年前から毎年100枚前後を張り替えるようになったということだが、なぜ、すべて同時に新しくしないのか。

兵庫県姫路土木事務所 隅豊課長:今は一気に剥がれ落ちているので、更新できていないのが残っている状況。1枚20数万円。十字交差点だと4枚あるので100万円近いお金になり、すべて一気にというのは難しい。

兵庫県姫路土木事務所 隅豊課長
兵庫県姫路土木事務所 隅豊課長

■老朽化した標識は他の場所でも…

さらに取材を進めると老朽化した標識は他の場所でも…

記者リポート:兵庫県明石市の交差点です。文字がはがれて見えづらい状態になっています。

読めない標識
読めない標識

■和歌山県でも老朽化した標識が

さらに和歌山県串本町でも、文字は認識できるものの老朽化している。

横断歩道でも、上を見ると人の形はかろうじて認識できるが、消えかかっている。

読めない標識
読めない標識

■専門家は「全ての標識の状態を把握できていないのが実情」

全国に数多く設置されている道路標識。今後どのように管理していけばいいのか。

土木工学に詳しい東北大学大学院の久田真教授に話を聞いた。

東北大学大学院工学研究科久田真教授:塗装の剥がれは、誤った情報を伝えてしまうトラブルがあり得ます。もっと危険度の高いものとしてはポールが折れて、そこに通行人や車両があった場合には大きな事故に繋がってしまう。大体(全国で)1000万枚弱の道路標識が設置されている。

さらに、「自治体だけでなく住民がチェックする対策も必要では」と提言した。

東北大学大学院工学研究科久田真教授:全ての標識の状態を把握できていないのが実情。今後さらに老朽化が進む中、人口も減り、より深刻な問題になる。自治体だけでなく住民がチェック(通報)するなどの対策も必要では。

東北大学大学院工学研究科久田真教授
東北大学大学院工学研究科久田真教授

■道路標識は「街の人たちにとっても1つの象徴」

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、道路標識について、「たかが看板じゃないと思う」と重要性を述べた。

鈴木哲夫氏:外から入ってきた人がここだなって思うのもあるけど、街の人たちにとっても1つの象徴だと思うんですよ。そういう意味でもそれなりの価値があると思うので、(標識の費用が)20万円かかるのを安くできないのか。国もある程度補助していく(ことも大事)。たかが看板じゃないと思う。

(関西テレビ「newsランナー」2025年5月14日放送)

鈴木哲夫氏
鈴木哲夫氏
関西テレビ
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